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剣の存在しない魔法世界で、私だけが「斬る」という概念を持っている~刀姫転生、世界法則を一太刀で否定する~  作者: さとう
第二章

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ハイドとマキナ

 王都に入ったばかりなのに、外に出て郊外の平原に来た。

 私とオウマ、アレイスターとトリス、そしてハイドとマキナ。

 ハイドは、私を見ている。


「話なら普通に聞いてあげるけど? 疑問があるなら、答えてもいい」

「それはそれでいいかもな。でも……お前、強いな。普通に戦ってみてぇ。お前もだろ?」

「まあ、そうね……」


 別に敵対する理由はないし、普通に話を聞いてあげてもいいし、困ってるなら手を貸してもいいし、ハイドが何を抱えているのか気にもなる。

 でも……それ以上に、敵意を向けられた以上、敵意で返したくなった。

 ハイドもまた、同じなのだろう。


「……安心しろよ。女のくせにとか、女だからとかで手加減するようなクズじゃねぇ。強者にはそれ相応の礼儀ってモンがある。わかるよな?」

「ええ。その通りね」


 金髪、碧眼。シャツの上にジャケット、ズボンにブーツ……拳にはグローブをはめている。肩が剥き出しのジャケット……腕の動きを阻害しないようにしてる。身体の鍛え方からして、格闘家。

 問題は、ハイドの後ろにいる金髪の女の子。

 腰まで伸びるロングヘア、シンプルな黄色いワンピース、歳は……ハイドが私と同じくらいで、この子は十歳くらいかしら。


「分析が趣味か? まあ、オレもお前のこと分析してるぜ。柔軟性ありそうな身体、腰の杖は……殴るモンじゃねぇな。肉の付き方から殴る蹴るって感じでもねぇ」

「よく見てるわね」

「ふん。で、そっちの……」


 視線だけアレイスターに向けるハイド。

 アレイスターは、銀血を凝固させて作ったテーブル、椅子に座ってトリスとお茶を飲んでいた。


「ああ、僕のことは気にしないでいいよ。最高の席で楽しませてもらうからさ」

「……なんだこいつ。おいお前、こいつなんだ?」

「……ただの馬鹿よ。気にしないでいいわ」

「まあ、わかったぜ」


 パン!! と、ハイドは拳を打ち付ける。


「さあ、やろうぜ」

「ええ……オウマ」


 オウマが黒いモヤとなり、私は変身する。

 ジッパー付きコート、黒く欠けた仮面、白い髪……『鬼斬姫』としての姿へ。


「マキナ、いいか?」

「……うん。ハイド、気を付けてね」

「ああ、わかってる」


 マキナ、彼女が黄金のモヤとなり、ハイドの身体にまとわりつく。

 そして、私と同じく姿が変わる。

 髪が白くなり、口元を覆うマスク、片目にはモノクルのような物が輝く。

 そして、両腕。


「……何、それ」

「言うと思うか?」


 腕に、黄金の巨大金属が装着されていた。

 人間の身体に、巨人の腕を移植したような。

 指先から肩までを、黄金の金属が覆う。アンバランスな姿だが、両足に装備された巨大ブーツが火を噴きバランスを取っている。

 異形。アレイスターや私も、神器を纏って姿が変わるけど……この変化には驚いた。


「ああ、やる前に……お前の名前、教えてくれ」

「……イチゴ。よろしく」


 二刀を抜き、交差するように構え……私は、胸のゾクゾクを解放するのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


「いくぜ、イチゴ!!」

「っ!!」


 ハイドは、足から火を噴いて突っ込んできた──……速い!!


「『機神(パンク)』!!」


 金属の拳、二の腕部分が開き、火を噴く。

 背筋がゾッとする……これは、受けたら死ぬ。


「『衝撃(ショック)』!!」


 拳が地面に激突した瞬間、爆発が起きた。

 

「うっ……!?」


 全力でバックステップしたけど、細かい礫が身体を叩く。

 バカげた一撃……なに、この力は。

 私は着地し、二刀を交差させる……逃げるのは、悪手!!


「『鳳凰印(ほうおういん)』!!」

「フン!!」


 硬い。

 左腕で刀を受けられた。折れはしないけど、これを斬るには……もっと集中しないと。

 

「なんだ今の? 細い棒を叩きつけたくらいで、オレの腕が壊せると思ってんのか?」

「叩きつけるんじゃない、『斬る』のよ」


 集中、そして──……抜刀!!


「『金鵄断(きんしだん)』!!」


 一刀による、下段から上段への居合斬り。

 左腕を切断するつもりだったけど、浅い傷跡しかつかなかった……硬い、こいつ。

 両腕、両足に黄金の鎧……ムカつくけど、今の私は両断は厳しいかも。くそ……全盛期の私なら、たぶん両断できるはずなんだけど。

 まだ、オウマを取り戻して一か月も経過していない。戦闘の勘もまだまだ取り戻していない……ちょっとまずいかもしれない。


「うおっ……なんだ、この傷?」

「斬っただけ。次は……切断する」

「ハッ、やってみろ」


 すると、ハイドが左腕を私に向けた。

 五指が開き、変形し、なんだろう……筒になった? 


「『機神(パンク)』!!」

「………?」


 おかしい、あの太い腕……殴るための拳じゃないの?

 こんな、距離を……どういう。


『イチゴ、やべえ!!』

「………ッ!!」


 これは、何かを、飛ばす──……。


「『灼熱砲(バスター)』!!」


 赤い光が、放たれた。

 まずい、死ぬ。


『──イチゴ!!』


 死んで……たまるか!!


 ◇◇◇◇◇◇


 がむしゃらに、剣を振った。

 全力で『斬る』……この赤い光を斬る。

 それだけ考え、オウマを振った。


「……え?」

「なっ」

「おお~」


 私は驚き、ハイドも驚愕し、アレイスターも驚いていた。

 赤い光が、消えた。

 剣を振ったら、消えた。


「……てめえ、何をしやがった」

「え、あ……」


 わからない。

 ただ、斬ろうとしただけ。そうしたら……消えた。

 すると、オウマが言う。


『やっと封印が完全に消えた。今のは、俺の能力……「万物両断」だ』

「能力? あなたの?」

『ああ。俺は、この世界全ての事象を両断することができる。今のは、「赤い光を斬る」ってオマエが思ったから、俺の能力で斬った。だが……「万物両断」は負担がデケェから多様すんなよ』

「……ぅ」


 足に力が入らない。

 そのまま崩れ落ちそうになった。でも……ハイドが私の腕を掴んで支えてくれた。

 すでに、変身は解けている。


「驚いたぜ。手加減したとは言え、オレの『斬神灼熱砲(パンク・バスター)』を消し飛ばすとはな。お前も動けないようだし、ここはオレの勝ちだ」

「……ふざけ、ないで。まだ……やれる」

「負けん気だけはお前の勝ちだな」


 すると、オウマが人型になり、私を支える。


「オマエの負けだな。おい、ここまでだ」

「だな」


 身体が、動かない。

 くそ……負けたく、ないのに。

 すると、私の傍に女の子……マキナが来た。


「……大丈夫?」

「…………」


 その言葉を聞き、私の身体から力が抜け……意識が消えるのだった。

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