ハイドとマキナ
王都に入ったばかりなのに、外に出て郊外の平原に来た。
私とオウマ、アレイスターとトリス、そしてハイドとマキナ。
ハイドは、私を見ている。
「話なら普通に聞いてあげるけど? 疑問があるなら、答えてもいい」
「それはそれでいいかもな。でも……お前、強いな。普通に戦ってみてぇ。お前もだろ?」
「まあ、そうね……」
別に敵対する理由はないし、普通に話を聞いてあげてもいいし、困ってるなら手を貸してもいいし、ハイドが何を抱えているのか気にもなる。
でも……それ以上に、敵意を向けられた以上、敵意で返したくなった。
ハイドもまた、同じなのだろう。
「……安心しろよ。女のくせにとか、女だからとかで手加減するようなクズじゃねぇ。強者にはそれ相応の礼儀ってモンがある。わかるよな?」
「ええ。その通りね」
金髪、碧眼。シャツの上にジャケット、ズボンにブーツ……拳にはグローブをはめている。肩が剥き出しのジャケット……腕の動きを阻害しないようにしてる。身体の鍛え方からして、格闘家。
問題は、ハイドの後ろにいる金髪の女の子。
腰まで伸びるロングヘア、シンプルな黄色いワンピース、歳は……ハイドが私と同じくらいで、この子は十歳くらいかしら。
「分析が趣味か? まあ、オレもお前のこと分析してるぜ。柔軟性ありそうな身体、腰の杖は……殴るモンじゃねぇな。肉の付き方から殴る蹴るって感じでもねぇ」
「よく見てるわね」
「ふん。で、そっちの……」
視線だけアレイスターに向けるハイド。
アレイスターは、銀血を凝固させて作ったテーブル、椅子に座ってトリスとお茶を飲んでいた。
「ああ、僕のことは気にしないでいいよ。最高の席で楽しませてもらうからさ」
「……なんだこいつ。おいお前、こいつなんだ?」
「……ただの馬鹿よ。気にしないでいいわ」
「まあ、わかったぜ」
パン!! と、ハイドは拳を打ち付ける。
「さあ、やろうぜ」
「ええ……オウマ」
オウマが黒いモヤとなり、私は変身する。
ジッパー付きコート、黒く欠けた仮面、白い髪……『鬼斬姫』としての姿へ。
「マキナ、いいか?」
「……うん。ハイド、気を付けてね」
「ああ、わかってる」
マキナ、彼女が黄金のモヤとなり、ハイドの身体にまとわりつく。
そして、私と同じく姿が変わる。
髪が白くなり、口元を覆うマスク、片目にはモノクルのような物が輝く。
そして、両腕。
「……何、それ」
「言うと思うか?」
腕に、黄金の巨大金属が装着されていた。
人間の身体に、巨人の腕を移植したような。
指先から肩までを、黄金の金属が覆う。アンバランスな姿だが、両足に装備された巨大ブーツが火を噴きバランスを取っている。
異形。アレイスターや私も、神器を纏って姿が変わるけど……この変化には驚いた。
「ああ、やる前に……お前の名前、教えてくれ」
「……イチゴ。よろしく」
二刀を抜き、交差するように構え……私は、胸のゾクゾクを解放するのだった。
◇◇◇◇◇◇
「いくぜ、イチゴ!!」
「っ!!」
ハイドは、足から火を噴いて突っ込んできた──……速い!!
「『機神』!!」
金属の拳、二の腕部分が開き、火を噴く。
背筋がゾッとする……これは、受けたら死ぬ。
「『衝撃』!!」
拳が地面に激突した瞬間、爆発が起きた。
「うっ……!?」
全力でバックステップしたけど、細かい礫が身体を叩く。
バカげた一撃……なに、この力は。
私は着地し、二刀を交差させる……逃げるのは、悪手!!
「『鳳凰印』!!」
「フン!!」
硬い。
左腕で刀を受けられた。折れはしないけど、これを斬るには……もっと集中しないと。
「なんだ今の? 細い棒を叩きつけたくらいで、オレの腕が壊せると思ってんのか?」
「叩きつけるんじゃない、『斬る』のよ」
集中、そして──……抜刀!!
「『金鵄断』!!」
一刀による、下段から上段への居合斬り。
左腕を切断するつもりだったけど、浅い傷跡しかつかなかった……硬い、こいつ。
両腕、両足に黄金の鎧……ムカつくけど、今の私は両断は厳しいかも。くそ……全盛期の私なら、たぶん両断できるはずなんだけど。
まだ、オウマを取り戻して一か月も経過していない。戦闘の勘もまだまだ取り戻していない……ちょっとまずいかもしれない。
「うおっ……なんだ、この傷?」
「斬っただけ。次は……切断する」
「ハッ、やってみろ」
すると、ハイドが左腕を私に向けた。
五指が開き、変形し、なんだろう……筒になった?
「『機神』!!」
「………?」
おかしい、あの太い腕……殴るための拳じゃないの?
こんな、距離を……どういう。
『イチゴ、やべえ!!』
「………ッ!!」
これは、何かを、飛ばす──……。
「『灼熱砲』!!」
赤い光が、放たれた。
まずい、死ぬ。
『──イチゴ!!』
死んで……たまるか!!
◇◇◇◇◇◇
がむしゃらに、剣を振った。
全力で『斬る』……この赤い光を斬る。
それだけ考え、オウマを振った。
「……え?」
「なっ」
「おお~」
私は驚き、ハイドも驚愕し、アレイスターも驚いていた。
赤い光が、消えた。
剣を振ったら、消えた。
「……てめえ、何をしやがった」
「え、あ……」
わからない。
ただ、斬ろうとしただけ。そうしたら……消えた。
すると、オウマが言う。
『やっと封印が完全に消えた。今のは、俺の能力……「万物両断」だ』
「能力? あなたの?」
『ああ。俺は、この世界全ての事象を両断することができる。今のは、「赤い光を斬る」ってオマエが思ったから、俺の能力で斬った。だが……「万物両断」は負担がデケェから多様すんなよ』
「……ぅ」
足に力が入らない。
そのまま崩れ落ちそうになった。でも……ハイドが私の腕を掴んで支えてくれた。
すでに、変身は解けている。
「驚いたぜ。手加減したとは言え、オレの『斬神灼熱砲』を消し飛ばすとはな。お前も動けないようだし、ここはオレの勝ちだ」
「……ふざけ、ないで。まだ……やれる」
「負けん気だけはお前の勝ちだな」
すると、オウマが人型になり、私を支える。
「オマエの負けだな。おい、ここまでだ」
「だな」
身体が、動かない。
くそ……負けたく、ないのに。
すると、私の傍に女の子……マキナが来た。
「……大丈夫?」
「…………」
その言葉を聞き、私の身体から力が抜け……意識が消えるのだった。




