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剣の存在しない魔法世界で、私だけが「斬る」という概念を持っている~刀姫転生、世界法則を一太刀で否定する~  作者: さとう
第二章

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デュミナス帝国のお姫様姉妹

 お姫様姉妹が目を覚ますと、何が起きたのか忘れていた。


「あれ、何が? え?」

「……人が、いたような」


 姉、妹……姉妹なだけあり、よく似てるわね。

 長く、薄い金髪でふくよかな姉。ショートヘアで身長も小さくスレンダーな妹……私にも姉がいたけど、姉はお父様似で、私はお母様似だったから似てないのよね。

 どうやら姉妹は、盗賊たちの首が飛ぶ瞬間を覚えていない……まあ、あんな光景、覚えているよりは忘れた方がいい。

 周囲を警戒していると、動ける兵士たちが馬車のチェックをし、お姫様姉妹は死んだ兵士たちに祈りを捧げていた。


「生命活動の停止した肉に祈りを捧げて、何の意味があるんだかねぇ」

「あなたには一生わからないでしょうね」


 アレイスターが近づいてきたので適当に言う。

 ちなみに、オウマは私の腰に、トリスは本に戻りアレイスターの腰にある本を入れるための専用ケースに入っている。

 すると、私が介抱した老齢の騎士が近づいてきた。


「旅人たち。警戒、感謝する」

「いえ……もう、大丈夫ですか?」

「ああ。ここからデュミナス帝国まで数日あるが……残された我々で、なんとか」

「だったら、この子雇わない? この子、冒険者で腕も立つんだよねぇ」


 アレイスターが、私の肩に手を乗せ、ニコニコしながら言う。

 その手を払いのける……私が言おうと思ってたのに。

 老齢の騎士は驚き、私を見た。


「それはありがたいが……構わないのか?」

「ええ。もともと、デュミナス帝国に向かう予定でした」

「……この時期となると、闘技大会かね」

「はい。腕試しをするつもりで」

「なるほど。では……正式に護衛依頼をしても構わないかね? ああ、すまない。私はデュミナス帝国魔法騎士団所属、護衛部隊隊長のローエンだ」

「イチゴです。こっちはアレイスター」

「どもども~、ああ、僕は研究者なんで、護衛はムリ。お姫様姉妹の話し相手とかならできますので」

「黙れ」


 睨んで黙らせると、「おお怖い」と数歩下がった。


「あと二人、近くにいます。念のため姿を見せず、周囲を警戒させつつ移動させますので」

「ありがたい話だが……挨拶くらいは」

「お気になさらず」

「……感謝する。当然だが、謝礼は期待してくれ」


 ローエンさんは頭を下げ、まだ祈りを捧げている姫様姉妹の元へ。

 アレイスターが言う。


「その二人って、オウマくんとトリスのことかい? 今は一緒にいるじゃないか」

「……この世界に、人の姿になれる武器ってある? 説明も面倒だし、周囲を警戒させているフリして、現れたり消えたりさせればいいでしょ。それに、警戒なら一緒にいてもできる」

「ま、そうだね」


 話をしていると、二人の少女が近づいてきた。

 

「あ、あの……あなた方が、私たちを助けてくれたのですね」

「感謝するわ!!」


 大人しめな姉、活発な妹、っていうのがすぐわかった。

 私は微笑み、胸に手を当てる。


「無事でよかったです」

「うんうん。そうだねぇ」

「あなた、何もしてないでしょ」

「失敬だなあ。馬車の修理、傷の手当は僕の仕事じゃないか。こう見えても、前の世界では医師でもあったんだからさ」


 ちょっと驚き……でも、こいつに診られる患者は気の毒。

 すると、姉妹が言う。


「ふふ。仲がよろしいんですのね。あ、申し遅れました。私はデュミナス帝国第一王女、シエスタと申します。こちらは妹のグレーテル」

「はじめまして!! あのあの、二人って恋人ですか?」

「そうだよ~」

「違います。あなた、下がってなさい」

 

 アレイスターを押しのける……こいつと恋人とか死んでもごめんだ。

 

「私はイチゴ。あっちの白いのはアレイスターです。これからの護衛は私にお任せください」

「あのあの、イチゴ……イチゴは冒険者なんだよね!! 強いんだよね!!」

「ええ、腕には自信があります」

「わああああ!! ねえねえ、お話聞かせて!!」

「こ、こらグレーテル。ご迷惑をおかけしてはいけません」

「むうう、姉様のケチ」


 仲良し姉妹、って感じね。

 救えてよかったと、心から思った。


 ◇◇◇◇◇◇

 

 準備を終え、馬車に乗って移動開始。

 私は外で警戒……と、思ったんだけど。


「イチゴ、イチゴってどんな冒険してきたの? その杖かっこいいね、得意な魔法は? わたし、水属性が得意なの!!」

「え、えっと……」


 ……グレーテル姫に懐かれてしまったのか、馬車の隣席に座り、腕を絡めてくる。

 可愛いんだけど……有事の際にちゃんと動けるかな。

 シエスタ姫も申し訳なさそうにしてる。ちなみにアレイスターを同じ馬車に入れたくなかったので御者席に座らせている。


「御者クン、これからしばらく僕の話し相手頼むよ~? 相方が冷たくてねぇ~」

「は、はい……」


 ちょっと御者に申し訳ないことしたかな……あとで謝ろう。


「ねえ、イチゴってさ、武闘大会に出るんだよね」

「ええ、そのつもりです」

「だったらさ!! わたしが運営にお願いして、優勝させてあげよっか?」

「……それは」

「グレーテル」


 すると、オドオドしていたシエスタ姫の目に力が入った。輝いてすら見えた。


「今の発言は、その方の戦士としての誇りを汚す言動です。恥を知りなさい」

「あ、あう……」


 驚いた……気弱かと思ってたけど、この子には芯がある。

 セイン様とは違う、王族としての気質ってやつかな。

 私はグレーテル姫の手を握り、微笑んで言う。


「グレーテル姫。お気持ち、感謝いたします。ですが……私は、自分の力で戦いたいのです」

「……ごめんなさい。姉様も、ごめんなさい」

「わかればいいの。イチゴ様、妹が申し訳ありませんでした」

「いえ、お気になさらないでください。私を思っての発言だと理解していますから」


 それから、いろいろな話をした。

 シエスタ姫は十七歳、グレーテル姫は十四歳で、デュミナス帝国の隣国で友好国であるフローレンス共和国での式典に参加した帰り道だということ、本来はこっちのルートで帰る予定ではなかったが、紅茶葉の名産地である村があったこと、本来のルートが崖崩れで通れなかったことから道を変更したこと、そのルートに奇襲を得意とする盗賊団のアジトがあり、運悪く奇襲を受けたこと……などだ。


「イチゴ様がいなければ、私たちは命を落としていたでしょう……改めて、感謝を」

「お礼はもう結構です。シエスタ姫」

「イチゴ、お父様に頼んで、いっぱい報酬を支払うからね!!」

「ふふ、期待しています」

「もう、グレーテルってば」


 なんだか、不思議だった。

 同性の友人なんていなかったけど……いたらこんな感じなのかな。シエスタ姫は友達で、グレーテル姫は妹って感じもするけど。

 

「ね、ね、イチゴ。王都に入ったら、お城に来ない? お泊りして、一緒に遊ぼうよ」

「えーっと、さすがにそれは……」

「え~」

「グレーテル。困らせないの。イチゴ様、宿泊はともかく、王城にご招待はします。謝礼もありますし……何か、望むことはありますか?」

「そうですね……ああ、優遇措置はともかく、武闘大会の参加資格などあれば」

「わかりました。運営委員会には伝えておきます。決して不正などないように、参加資格だけになりますが」

「構いません。ありがとうございます」


 やった、王都で武闘大会の参加方法とか調べないと、って思ってたし……お姫様のお墨付きなら、参加はできる。

 すると、グレーテル姫が言う。


「イチゴ。イチゴが強いのよくわかるけど~……ケガしないでね」

「大丈夫ですよ、私は強いので」

「うん。でも……今回の大会、ゲストで異端審問官も出るの。知ってるよね……『八極星(ベツレヘム)』」

「……?」


 すると、御者席の小窓が開き、アレイスターが顔を出した。


「天上人による異端審問組織『管理者(アドミニストレータ)』の異端審問官は、等級によって分かれれている。三級、二級、一級と、等級が上がるごとに強さも増す。そして……それらを統括する最上級の異端審問官が八人、神が直接創造した、原初の天上人が八人。それが『八極星(ベツレヘム)』さ。空に瞬く八つの星を司る超常の存在……う~ん、興味深いね」


 私は小窓を閉めた。

 そしてシエスタ姫に聞く。


「その、異端審問官が来る……ということですか?」

「は、はい。『八極星(ベツレヘム)』の一人、『木星(ジュピター)』を司るユピテル様は、人間のお祭りが大好きなお方でして……」

「……へえ」


 超常の存在という名前に、私は胸が高鳴っていることにようやく気付くのだった。

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