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剣の存在しない魔法世界で、私だけが「斬る」という概念を持っている~刀姫転生、世界法則を一太刀で否定する~  作者: さとう
第二章

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旅路

「…………」

「ふふふ」

「…………チッ」

「…………」


 私、アレイスター、オウマ、トリスの四人で、国境を越えた先にあるデュミナス帝国へ向かっていた。

 今は森の中。国境から伸びる街道を通っているんだけど……けっこう薄暗い。しかも、会話もないし。

 マルセリア王国でけっこうドンパチしたし、私が家出したタイミングから何かあると思ったけど、国境はすんなり超えることができた。

 そして現在、デュミナス帝国領内に入り、王都を目指している。

 道中、魔獣なども現れる。


「……オウマ」

「おう」


 変身し、両手に刀を持ち構えると、藪から小鬼が飛び出してきた。

 数は五匹。

 私は、魔力により身体強化をして一閃。

 一瞬で五匹の首を刎ねると、小鬼はそのまま倒れた。

 アレイスターは拍手をする。


「すごいねぇ、全く見えなかったよ」

「……あなた、デュミナス帝国に入ってから一度も戦ってないわね」

「そりゃ、僕は研究者だしね。戦いは狩人のきみに任せるよ」


 変身を解き、アレイスターを睨むけど……全く気にせずニコニコしてる。

 ここ数日、こいつ(もうこいつ呼ばわりすることにした)と一緒にいるけど、何もかもが胡散臭い。

 まずこいつ、寝ない。

 それと、トイレにも行かないし、戦いもしないし、暇があれば『聖典ピカトリクス』に何かを書いては満足してウンウンしている。

 アレイスターは、ニコニコしながら言う。


「そういえば、きみの『六天魔王』くん、どんな能力を?」

「……能力?」

「さすがに冗談だよね?」


 アレイスターは、ニコニコしながら首を傾げる。

 そして、人型になったオウマが言う。


「俺の固有能力は、封印されたままだ。まあ、弱まってる感じはあるし、イチゴ次第で使えるようにはなるだろ」

「興味深い。ああ、ちなみにトリスの固有能力は『論理実現(ろんりじつげん)』という。彼女に書いた論理が正しければ、ノーリスクで自在に行使できるというものだ」

「でも、ご主人様はぜんぜん使ってくれませんね。わたしのこと、メモ帳扱いしてるし」

「ははは。きみのページはなくならないし、メモ帳として最高なんだよ」

「ふふ、うれしい」


 ……何を見せられているんだろ。

 それより、固有能力。


「ねえオウマ。あなた、固有能力のこと前の世界でも言わなかったわね」

「オマエ、強すぎんだよ。ぶっちゃけ必要なかった」

「……まあ、今度は使うわ」


 それからしばらく森を進み、ようやく街道に出た。

 

「ふう……太陽がまぶしいわね」

「そうだねぇ。うんうん、そろそろティータイムにしないかい?」

「…………」

「おお怖い。そんな目で見ないで……おやぁ?」


 アレイスターが何かを見つけた。

 視線の先を追うと……そこにあったのは、街道から外れた先にある壊れた馬車。

 人も何人か倒れており、ただ事ではない感じがした。


「盗賊かねぇ。デュミナス帝国は治安が悪いって話を聞くけど、まさかこんな街道の往来で盗人が出るとは。おお、怖い怖い」

「ご主人様。わたしが守るからご安心くだしさいね」

「おおお、トリスは優しくてかわいいねぇ」

「ンんん~、もっと撫でてくださぁい」

 

 ……馬鹿は放っておこう。

 私はオウマに目配せし、オウマもややめんどくさそうだったが頷いた。

 そして、馬車に向かって走り出し、倒れている人……魔法騎士を起こす。

 数は十人以上、半分以上は死んでいる。

 周囲には壊れた杖や、壊された馬車、荒らされた物資などが転がっている。街道の外れにある森に、何かを引きずったような跡もあった。


「しっかりしなさい。何があったの?」

「ぅ、あ……ひ、め、様……が」

「ひめさま。姫様? お姫様なの?」

「たの、む……」


 森を指差し、そのまま気を失った。

 私は立ち上がると、オウマがモヤとなって私を包み変身する。


「あれ、行くのかい?」

「……ええ」

「きみ、殺人鬼じゃないの? なんで救うようなことするんだい?」

「……勘違いしているようだから教えてあげる。私は、救いを求められたら手を差し述べるし、お願いされたら理不尽じゃない限り聞くわ。殺すのは結果的にそうなってるだけ。その過程を楽しんでいるだけ」

「ふ~ん。殺すのに、救うんだ。矛盾してるねぇ……その矛盾、いつかきみを殺すよ?」

「かもね。でも、あなたが死ぬ方が先かも。それより……どうせ手を出すつもりがないんでしょ? だったら怪我人の手当てくらいはしなさい」

「え~?」


 嫌そうな声を出すアレイスターを無視し、私は森に突っ込んだ。

 そして……ところどころに、破れた衣類が散らばっているのが見えた。

 高価そうなドレス……もったいないわね。


「へへ、お姫様……運がなかったなぁ」

「くけけ、かわいいねぇ。怯えちゃって」


 ……ゲスが五匹、いた。

 服を破かれた女の子が二人、一人は私と同い年くらいで、もう一人は少し年上かな。

 下着姿で怯えているのが見える。


「わ、私が相手をします。どうか、妹には手を……」

「馬鹿か。命令できる立場か? ぁうん」


 私は無言で、馬鹿そうな男の心臓に背後から刀を突き刺した。


「な……なんだて」


 声を出してるヒマなんてあるのかな? 

 私は男の首を切断し、杖を出そうとしていた男の両手首を切断。手首がなくなった痛みで絶叫したので、そのまま喉を突き刺して始末した。


「あと三人」


 ようやく、盗賊たちが戦闘態勢に。

 一人は指揮棒型の杖、もう一人はナックルを装備し、もう一人はロングタイプの杖を装備。

 私に向かって魔力による衝撃波を放とうとするが、魔法発動より早く接近し、三人まとめて首を切断した。

 飛び散る血。首の断面から噴き出す血。

 

「大丈夫?」

「──……」

「………ぁ」


 あ、気絶しちゃった。

 まあ……これだけ血が噴き出したり、転がる頭があれば、女の子には耐えられないか。

 私は変身を解き、オウマに言う。


「運んで」

「へいへい。服、どうする?」

「そうね……まあ、臭いの我慢してもらいましょうか」


 私は、死体のマントを二枚剥ぎ取り、二人の身体にかけてやった。

 街道に戻ると、アレイスターがいた。


「や、おかえり~」

「…………」


 こいつ……銀色のテーブルに椅子を二脚用意して、トリスと紅茶飲んでる。

 

「そんな顔しないでくれよ。手当は終わったよ。ついでに、馬車の修理もした」

「え?」


 なんと、壊れた馬車が修理されていた。

 折れた車軸とか壊れた部分が銀色になってる……ああ、『銀血』で修理したのね。

 けが人は包帯が巻かれて綺麗に並べられているし、死体は手を組ませて並べてある。


「驚いた。死体を『研究素材だ』なんて言って、好き勝手するかと思ったのに」

「残念。死体の研究はもう終わってるんだよねぇ。賢者の石とか必要なら死体も使うけど、欲しいの?」


 意味がわからないので無視。アレイスターは立ち上がり私の傍へ。

 オウマは、草の上に女の子二人を並べ、欠伸をしてアレイスターの座っていた椅子に座り、テーブルにあったクッキーをボリボリ食べ始めた。


「そこの不細工野蛮、誰が座ることを許可したの? それと、わたしの手作りクッキーを食べる許可を出した覚えもないんだけど……」

「あぁぁん? んなもん許可いらねぇだろ。つーかこれオマエの手作りかよ。ぺっぺ!! もっと甘口にしやがれってんだブスが」

「あ? へし折るぞこの野郎」

「やってみろ、その乳もぎ取ってやろうか」


 ……もうあの二人は無視。

 アレイスターは、女の子の顔をマジマジ見る。


「この子たち、デュミナス帝国の王族で間違いないねぇ」

「王女様、ね……謝礼、もらえるかしら」

「おや、お金ないのかい?」

「ないわ。旅道具で全部使っちゃったし、家に寄るヒマもなかったからね」

「貸してあげようか? 僕、お金持ちだよ?」

「あなたから借りるなんて死んでも嫌」


 アレイスターは「残念」と肩をすくめる。

 すると、騎士たちが起き始めた。

 私は水のボトルを出し、起きた騎士の一人に差しだす。


「大丈夫ですか?」

「……きみは」

「彼女たちは無事です。私が助けたので」

「──姫様!!」

 

 騎士は怪我を無視して立ち上がり、ひどく顔をしかめ胸を抑えた。


「慌てないで。大丈夫です、彼女たちに怪我はありません」

「……きみは」

「マルセリア王国からの旅人です。偶然、壊れた馬車を見つけまして。そちらの騎士の方が『姫様を頼む』と森を指差したので……盗賊を奇襲し、二人を助けました」

「……そうなのか。ありがとう……ありがとう!!」

 

 老齢の騎士は私の手を握り、感謝する。

 感謝されるのなんて、久しぶり……ちょっと照れるかも。


「ところで、謝礼の話だけど」

「あ、ああ。もちろん」

「……こいつは無視していいです。あなた、黙ってなさい」

「はいはーい」

「……とりあえず、彼女たちが目覚めるまで、ここは私が護衛をします。動ける人たちの介抱を」

「わかった。旅人たち……感謝する」


 私は、アレイスターに言う。


「あなたも手を貸しなさい」

「えー?」

「…………」

「わかったよ。そんな冷たい目で見ないでくれ……ゾクゾクする」


 アレイスター……こいつやっぱり変人だわ。

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