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File:070 自衛隊

Xでの反応いつもありがとうございます。

地下組こと前崎、シュウ、ジュウシロウは職員の一人を捕まえ、

強制的に道案内をさせた。


今も職員の口には銃口が突っ込まれている。


どうやらケンは一番最下層にいるらしい。

尋問につき、その場所に収監されているとのことだった。


シュウが無鍔刀で扉を豆腐のように切っていき、セキュリティとは何なのかを問いたくなるほど強引な突破をする。


が、前崎含め襲撃する側だ。

バレる前提で動くのであればセキュリティは基本的に案外脆い。


今は地下10階。

全部で29階あるらしい。


やっとエレベーターのドアを見つけた。


前崎が神経外骨格の出力を瞬間的にバックスピンキックを行う。


エレベーターのドアがひしゃげ、ワイヤーが見えた。


「いくぞ!続け!」


そうしてワイヤーを伝り、地下奥深くまで向かっていった。


闇の中を三人が下りていく。


だがおかしい。

東京拘置所は29階までのはずだ。


それより明らかに深い。

また内側から渡っているとはいえ、工事の際に内側で何階か理解するためにわかりやすい場所に何階であるかは書いてある。


29階はさっき通り過ぎた。


そこからエレベーターの扉は一切ない。


だがようやく地面が見えた。


「40階…?」


何かある。


恐らく最下層と思われる扉を蹴りでこじ開け、試しに連れてきた職員をそのまま投げ飛ばす。


それとは別方向に勢いのまま転がる。


待ち伏せに対する対策である。


だが誰もいない。

当たりを見渡す。


そこは巨大な空間だった。

地下は地下だがあまりにも大きすぎる。

まるで野球のスタジアムだ。


「……ここは?」


明らかに東京拘置所には相応しくない場所。

なぜこんな場所が存在するのか。


そんな疑問すら思い浮かぶ瞬間だった。

突如、頭のアラートが鳴る。


前崎は知っている。

こういう命の危険を感じる警報には身を委ねた方がいいと。


それを知っていたのは前崎の脳ではなく体だった。

前崎は意図せず体を低くした。


すると背後からナイフのようなものが音もなく振られる。


(ーーーー光学迷彩!?複数!?)


無意識に躱せた。

運が良かったとしか言えない。


慌てて距離を取るが別方向から銃撃を受ける。

それを受けてシュウが神経外骨格ファストトラックでその銃を撃った先に刀を振るう。


直線距離であれば最速の攻撃だ。


一人の銃は切断できたが肉体の切断には至らなかった。


シュウの背後に気配。


ジュウシロウがカバーに回り相手の攻撃を受け止める。

光学迷彩とは言え、目を凝らせば景色の揺らぎでわかる。


おそらくナイフによる攻撃だった。


「やるな…この奇襲で終わらせるつもりだったのだが」


光学迷彩を解いた5人の男がいた。


いずれも見覚えがある顔だ。

胸には第一空挺団に特殊作戦群(SOG)のバッチ。


「久しぶりだな。前崎」


そういった男の顔に前崎は見覚えがあった。

あの時から老けているが間違いない。


「……坂上か!?それに篠塚に縣、穂刈、雨宮まで!?」


「流石だ。元官僚だけあって記憶力はいいな。

 直接会ったのは10年近く前だったか?」


「お前…何しに来た?」


「そんなの決まっているだろう?」


坂上が芝居がかった動作で説明する。


「お前らぶっ殺すためだよ」


その言葉と同時に自衛隊員たちが一斉に武器を構える。


「そろそろ第一空挺団が上から降ってくる頃だ。

 全くこんな場所を戦場にしやがって…」


降ってくる?

自衛隊をずっと出動待機させていたのか?

この襲撃は予想できるものだったがそれでもこんな迅速に対応ができる?

そしてなぜこいつらが待ち構えている?


「ありえない……。完璧な奇襲だぞ。

 対応が早すぎる。

 なんでここにそもそもいるんだ?」


「簡単だ。

 ここにいるだけで給料がもらえる簡単なお仕事を貰っただけだ。

 適度にトレーニングできてよかったぞ?」


「ハッ!無駄な税金の使い道だな。

 で、ケンをどこへやった?」


「さあな。あとどうでもいいが、税金は一切使われていないぞ」


「…どういうことだ?」


「さあな。知る必要はないだろう?

 お仲間の居場所もな」


明らかにこれまで出会ってきた人種と違うものに対してシュウとジュウシロウの神経が焼けるような緊張感を放つ。


殺気が肌を焼くというのが何の比喩でもないことを実感する。


「…知り合いか?」


シュウが前崎に思わず聞く。


「あぁ。自衛隊訓練時代で遊んだ仲だ」


前崎も構える。


「日本最強の部隊の人間たちだ。

 はっきり言う。お前らでは勝ち目がない」


「ッ!…通りで」


肌を焼く殺気に間違いはなかったとジュウシロウが警戒を高める。


「…あんたも5人相手だったら無理でしょ?」


「…刺し違えて3人といった所だ」


前崎が厳しい顔をする。


「3人か舐めんじゃねぇ。1人で十分だ。

 と言いたいが確実に制圧するように言われている。

 きっちり合理的に人数をかけて殺してやる」


「自衛隊がいうことじゃねぇよ」


ゆえに決める。

テレパシーカフスを用いて伝える。


『ジュウシロウ。お前は他の階を探してケンを探せ。

 ここはシュウと俺で食い止める』


『大丈夫なのですか?』


『特に相性が悪いのはお前だ。

 削られて終わる。

 奴らは身体能力、反射神経、スタミナでもバケモンだ。

 それよりもケン見つけてそのまま逃げろ』


『…わかりました』


『シュウ』


『…なんだ?』


『ヤバくなったら逃げることだけ考えろ』


その言葉に少しイラっとしたが前崎の声色に煽りや馬鹿にした言い方はなかった。

むしろかつてないほどの緊張感が声から伝わる。

確実に相手との戦力差を考えて出した結論だ。


だからこそシュウは感情的にならず落ち着いて聞いていた。


『…わかった』


『ジュウシロウ…行け!』


始まりと同時に閃光音爆弾を前崎が投げる。


かつての2人には苦い思い出。

今回は事前に知っていたので迷いなく動けた。


だが、ジュウシロウが背後を向けた瞬間に5人が襲い掛かった。


誰一人として閃光音爆弾にひるんですらいない。

その時点で兵士としての練度が違いすぎる。


「…ッツ!!」


はえぇぇ!


シュウは随一の高速の神経外骨格を使っているにも関わらず、瞬間的に距離を詰められたことに驚いた。

そして何より驚いたのは…


前崎に1人、シュウに4人で襲い掛かったことだ。

前崎に向かったのは先ほど話していた坂上という男だ。


かつての前崎の言葉が頭を過ぎる。


『国会議事堂で、お前を一撃で潰した理由——

 それはな、一番簡単に殺せそうだったからだ』


この4人は速攻でシュウを殺して前崎の加勢をするつもりだ。

それの意味することは現状シュウが一番処理しやすいと思われている。


「ナメやがって!」


シュウは神経外骨格の出力を上げ、刀を振り回し彼らから距離を取る。


7週間におよぶトレーニングにより、不動の戦い方は体に染みこんだはずだった。


しかし東西南北すべての方向を囲まれる。

彼らの狙いがわかった。


「短期の消耗戦…!」


集中力を散らすことで判断力を奪い、そこに致命の一撃を与える。


前崎はシュウが片付くまで一人で止めるだけでいい。

中でもあの坂上と呼ばれた男は前崎かそれ以上の実力がある。

そのぐらいの迫力を感じた。


徹底した合理的潰し方。

確実な勝ち方。


現状、俺がこの4人を相手にする必要がある。

もちろん前崎が勝つことを期待して逃げに徹することもありだ。


だがーーー


「お荷物になるつもりはない!」


そういってキャンディのようなものを5粒ほど投げる。


それは徐々に膨らんでいく。

念のため自衛隊の男たちは距離を取る。


形を成したそれは…Sack face(麻袋面)


かつてメディアを崩壊させるときに陽動と封鎖に役立てたものだった。


それが5体。


「これで対等か?」


Sack face(麻袋面)が手の鎌を振り回しながら突撃する。

シュウのターンだ。



「なんだありゃあ!あんなのも持ってんのかよ!

 やるな!前崎!

 それにあのガキ、不動みたいな戦い方をしてんな!

 学習したのか!?」


Sack faceを見て至近距離でナイフを振り回しながら坂上が笑顔で語る。


「…!!」


強い!言葉を発する余裕すらない!

かつて手を合わせた時の面影など微塵も感じさせない洗練された動きだ。


だがナイフの使い方はそこまで俺と変わらないと見た。


そこに勝機を見出す。

技術が同等であれば神経外骨格の出力と駆け引きで勝率を上げる。


不動の時のような不覚はもう二度ととらない。


ナイフをもう一本引き抜き、持っていたナイフで胴体を意識させた後に

引き抜いたナイフで刺突を行う。


引き抜いたナイフは刺突専用。

ブレード出力を瞬間的に引き上げ、エネルギー刃を針のように尖らせる。

それは槍と化し、像の腹であろうと一瞬でぶち抜ける代物だった。


さらに刺された人間は出血が止まらなくなり死ぬという、前崎の持っている武器の中でも苦痛を与えながら殺すということに関しては最凶の武器だった。


それを躊躇なく起動する。


かつての友人だろうが関係ない。

確実に仕留める。


そのままの軌道であれば確実に脳天を貫通できるはずだった。

初見で見切ることは不可能。


だが超人的な反射神経で坂上はその攻撃を舐めるように紙一重で躱す。


「あぶねぇあぶねぇ」


ひらひらとナイフを振り回し坂上が距離をとる。


(バカな!?構えてから刃が届くまで0.2秒もないんだぞ!?)


表には出さなかったが心の中では驚愕していた。


「さすが超人の前崎様だな。文武両道にもほどがあるぞ?」


「…バカはあきらめないから困る。

 ちなみにいうが見逃してくれるわけにはいかねぇか?」


「無理だね。俺たちがお前らの後始末として瓦礫処理をどれだけやったと思ってやがる!

 少しは憂さ晴らしさせろ!」


テメェの職場の問題だろうが!と叫びたくなったがやはり日本最強の部隊の人間だ。


技術はほぼ互角でも体力や身体能力といった基礎能力が桁違いだ。


息切れ一つせず、再び攻め手に坂上が回る。


ここが訓練場だったらどれだけよかったか。


お互いの記憶に2人の出会った時のことがフラッシュバックしつつ、戦いはさらに苛烈と化した。

SOG隊員の中には第一空挺団出身者が多く、彼らが空挺徽章を着用していることが多いそうです。

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