File:068 ケン奪還作戦開始
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前崎はいつも通り神経外骨格を着込む。
作戦行動前だ。
周囲には神経外骨格を着込んだアダルトレジスタンスのメンバーがいた。
いつもよりメンバーが少ない。
だがこれが今回の作戦だ。
不安は残るが仕方がない。
『最終チェックを始める』
ルシアンが普段とは全く違う雰囲気でしゃべり始める。
それだけ今回の作戦は綿密に練った。
『いくつか君たちにも訓練をしてもらったけど改めて確認するね』
ケンは今東京拘置所にいる。
原則として現行犯として捕まったテロリストは
① 逮捕 → 警察署留置場(最大48時間)
② 送検 → 勾留決定(さらに24時間以内)
③ 勾留期間(10日+10日延長=最大20日間)拘置所収容
④ 起訴後、裁判中拘置所収容(数か月〜年単位)
⑤ 刑が確定 → 刑務所送致 → 分類調査 → 刑務所で服役開始
が基本だ。
だからこそ裁判が終わるまで犯人とは言われず
あくまで「容疑者」として扱われる。
手順は基本的は上記の通りで間違いはないが④の期間には起こした罪によって大きく左右される。
例を挙げるとオウム真理教の松本智津夫こと麻原彰晃が刑務所に行くまでに
東京拘置所に 約9年間公判中の被告人として収容された。
普通は数カ月程度だ。
ケンも少年とはいえ、裁判が始まるまで拘置所にいるままだった。
恐らく法が変わったとは言え、彼が成人になるまで日にちを伸ばし、さらに罪を重くするつもりだろう。
重大事件を起こした際の未成年を裁く常套手段である。
ケンの肉体年齢は16歳。
2年の月日が流れる必要がある。
はっきり言って②と③の間の移送で襲いたかった。
むしろそこしか必要最低限の犠牲で済むタイミングはなかったと言える。
しかしこちら側の装備が整っていなかった。
装備のほとんどは壊れ、消耗し、消費し、
あの切り札のマルドゥークやエアまでも使ってしまった。
今はあの忌まわしきサクラテレビの事件から7週間経った。
その結果、ある程度装備も整ってきた。
8月も終わりとはいえ、まだ夏の暑さが猛威を振るっている時だ。
慎重にことを進めたい。
―—だが
「東京拘置所を襲撃する」
それがアダルトレジスタンスが出した答えだった。
「…東京拘置所」
前崎も行ったことがある。
外観は高層の円筒型(中央管理棟+放射状に伸びる収容棟)であり、
高層ビル型のため都市部の限られた敷地でも大収容力を誇る。
地上からは被収容者の姿が見えない徹底した設計をしている。
首都圏の重大事件の被告人、未決囚の多くがここに収容される。
最新の監視カメラ、電子錠、二重三重の入退管理は当たり前であり、
警察・公安との連携が密にとれる場所。
護送車用の地下駐車場、専用搬入口を備え、外部から被告人の出入りが見えない構造になっている。
東京地裁・高裁・簡裁が近く、重大事件の公判にはかなり立地が良い上、
護送ルートが短く、裁判出廷に適している。
大規模テロ・凶悪事件の被告人
など、歴史的重大事件の被告・死刑囚が多くここにいた/いる。
それがさらなる増築をした。
「AI監視塔」/「スマート房管理システム」
各房や共用エリア、護送ルート全体にAI顔認証+行動解析カメラが常設。
拘置所の中央管理棟にAI統合監視塔が増築され、全ての収容者・職員の動き、声、表情、脈拍、ストレス反応をリアルタイム監視。
異常検知はAIが即時通報、ロボット警備員が現場に向かい制圧をする。
「地下拡張型収容棟」
地上は景観・防災上の理由である程度以上拡張できないため、地下数十メートル規模の収容棟を増築。
地下房は災害・暴動・外部攻撃からの完全隔離空間として設計。
※これらは後述する光屈折技術ができる前に施行された。
特別監視対象(テロリスト・スパイ・サイバー犯罪の首謀者)は地下深層エリアに収容。
「遠隔裁判対応施設」
拘置所内に裁判所と直結する遠隔公判用専用ホールが増築。
護送リスクをゼロ化。被告人は裁判所の法廷に行かず、拘置所内から3Dホログラムで出廷。
裁判所・弁護人・検察官も一部は拘置所に入る形で審理が進む。
「ドローン搬送・物資供給システム」
敷地内物資供給は外部車両搬入ではなく、上空からのドローン投下・回収施設が設置。
輸送トラック襲撃や不正搬入を完全排除。
「超高層型新中央管理棟」
東京の土地不足と治安対策の強化に伴い、東京拘置所の中央管理棟はさらに高層化され、
30階建ての円筒型超高層棟として生まれ変わった。
この新中央管理棟には、収容棟、監視センター、医療フロア、そしてAI統合指令室が縦型に統合されている。
屋上にはヘリポート、ドローン発着場、緊急防衛設備が配置され、あらゆる緊急事態に即応できる体制が整っている。
「精神制御型矯正室」
高度な神経科学を応用し、脳波・ホルモン・精神状態を調整する「安定化房」や「自律神経調整房」が増築。
暴動・自傷・他害リスクを最小化。
「景観保護のための光屈折技術」
2055年、超高層棟が首都東京の景観に圧迫感を与えないため、
外壁には 光の屈折と拡散を10層以上にわたり制御する特殊パネル が採用された。
このパネル群は、建物の外観を空の色や周囲の建造物、季節ごとの光線に合わせて自動的に反射・屈折角を調整し、遠方からは空気に溶け込んだように見える。
都市景観に溶け込み、視認しづらくすることで「存在感を消す建築」として評価され、
景観条例を厳しく定める首都圏の都市設計基準にも適合している。
光屈折技術の層構造は:
第1〜3層:可視光の波長調整層(季節・天候に応じた反射制御)
第4〜6層:背景同化層(近隣建物・空の色彩パターン学習同化)
第7〜9層:散乱抑制層(都市の光害防止・夜間の反射光抑制)
第10層以降:AI制御偏光層(外光に合わせたリアルタイム屈折角変更)
この技術により、中央管理棟はまるで空の一部となったかのような外観を保ち、
その存在は地上からも高層ビル群からもほとんど視認できない。
それが東京拘置所だった。
もはや要塞だ。
近くに周囲を囲むマンションや住宅街の屋根の向こうに、佇むように静かに建築されており、
それに加え学校・公共施設、商業施設・スーパー、河川・高速道路もあることで
それを全く疑問に思うことなく生活している人間たちが一層不気味さを引き立てていた。
「襲撃ってどうするんだ?まさか正面から突破する気か?
あそこのセキュリティは世界でも群を抜いているぞ?」
前崎が当たり前のことをいう。
『そんなことはわかっている。
でも正面突破…実はそれ、ありかも知れないんだよね』
そう我々はテロリスト。
武力、補給物資、己を焦がすほどの思想さえあれば恐れるものなど何もありはしない。
東京拘置所上空にミサイルのようなものが突然現れる。
スレイプニル・ストライク 通称 SS
オーディンの愛馬である八本足の馬の名を関する兵器は
足と同じく8本の軌跡を描き、東京拘置所を襲撃した。
それは作戦前の最終確認が終わり、実行に移る合図だった。
『ケン奪還作戦開始!!』
ルシアンの掛け声と共にテロリストたちが襲撃を開始した。
2060年9/30(金)の午前11:00の出来事である。
東京拘置所を調べれば調べるほど歪な場所にあるが立地など考えられていると思わざるを得ない…!!
実際に見に行ってみたい…。
△1:襲撃日付を変更しました。