表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【☆5.4万PV】アダルトレジスタンス   作者: オレノマツ
第一章 レジスタンス編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/238

File:026 新装備

「──以上が注文だ。対応できるか?」


 前崎は抑揚のない声で言った。

 依頼者に目的を聞くような愚は侵さない。

 過去や目的を聞いたところで仕方がないしトラブルの元になるからだ。

 だがことを起こすには仕掛けるには大げさ過ぎる装備だ。

 

 公安をクビになって銃を乱射して周りを巻き込んで自殺するなどの「無敵の人」の思考の方がまだ納得できる。


 オスカーは工具箱の脇に肘をつき、しばらく無言のまま前崎を見た。


「……明後日までにメンテ済ませりゃ、実用レベルにはなる。

 だがな、公安。

 お前、それ……戦争でも始めるつもりか?」


「……あながち間違いでもないな」


 その一言で、オスカーの顔つきが変わった。

 油に汚れた指を拭いながら、少しだけ声を低くする。


「で、支払いは?

 無職の公安崩れが現金持ってるようには見えん。

 電子マネーは足がつくし、ウチも税務署とは折り合いが悪い。

 現金以外お断りって札、まだ入り口に貼ってたよな?」


 前崎は無言で内ポケットから一枚のカードを取り出す。

 オスカーが思わず体を起こす。それは――


「……スイスか。プライベートバンクの黒カード。

 あんた、マジかよ」


「この口座から引き出せ。

 パスワードと端末ID、それとログ消去済みのアクセスキーはここにある」


 手渡されたメモには、細かいコードが几帳面に手書きされていた。

 オスカーが思わず口笛を吹く。


「お前、スイスの引き出しまで段取り済みってか……ずいぶん用意がいいじゃねえか。

 ここまでやって……本気で死ぬ気なんじゃないのか?」


「死ぬ気じゃない。やりきる気だ。

 ただ、持ってても腐る金なら、使って腐らせた方がマシってだけだ」


 前崎はそう言いながら、分厚い通帳を一冊放った。

 オスカーはそれを片手でキャッチし、何気なく開く――が、眉が跳ね上がる。


 ページをめくるたび、額面の桁が変わる。


「……いいのかよ、これ。注文の倍どころじゃない。

 お前、この金があれば兵器工場一個買えるぞ?」


「気にするな。

 使わない金など持っていた所で無駄だ。

 まあお前の腕に期待していると思ってくれ」


「……ほう?」


「俺は人を信用しない。

 信用するのは俺の利益と相手の利益が均等に成立してる時だけだ」


 前崎の目は微塵も揺れない。

 それは使命感ではなく、既に覚悟を終えた者の眼差しだった。


 オスカーは通帳を閉じ、ゆっくりと立ち上がる。

 天井の蛍光灯がうなる工房に、わずかなため息が響いた。


「……合理的すぎて気持ち悪いな。

 ま、仕事は受けるよ。ダミーだがホテル機能はある。

 地下の201、空いてる。

 そこに3日分の備品と電源を通しておく。

 ……過労死寸前の元公安は、まず寝ろ」


「感謝する」


 短く礼を述べ、前崎は奥の暗い通路へと歩き出す。

 背筋は伸びていた。

 迷いも、疲労も、後悔も見えない。

 ただその背中に何を背負っているのかはオスカーにはわからなかった。


 そして、前崎は最後の休憩として、地下の仮設ホテルで3日間の潜伏生活を始めることになる。


 ――オスカーは律儀だった。

 翌日の昼には、スイス口座からの全額出金が確認されたという。


 報告はない。

 ただ、昼食に出されたのがやたら豪勢なラム肉ステーキでやら天然マグロの刺身だった。

 しかもラム肉の香辛料が手に入りにくい中東系だったことで、前崎は察した。


「価値が等価じゃないと、気持ちが悪い」


 オスカーはそう呟いて、調理用の手袋を外した。

 その目は、物の価値と命の重さを天秤にかける商人の魂があった。


 そして、三日後。

 地下201号室の扉が開く。


 前崎は無言で立ち上がり、装備ラックの前に向かった。


 ──装備品一覧

 《S&W M.T-R05》五連装リボルバー(サイレンサー内蔵)

  公安特殊部隊仕様と元は同じもの。

  型落ちだが、静音性と携帯性に優れる愛用品。

  撃発圧を低下させる“指圧センサー式トリガー”を搭載。


 《AKM-ZK Custom》強化型アサルトライフル(冷却ユニット搭載)

  ロシア製AKベースに、アメリカの民間軍事工房が独自改修。

  命中率と反動制御を極限まで高めた“暴発しない狂犬”。

  弾倉はカーボン製マガジン×3本を携行。

 

 《RAZOR-K02》高周波ナイフ ×2本(腰部スリット装着)

  刃圧変化機構付き、神経系装甲にも通用する出力を持つ。

  片方は切断特化、もう一方は刺突特化にチューニング済。


 《NEX-FEET/4G-CORE》統合型神経外骨格ユニット(上半身)

 NEX社第四世代の主幹神経制御エクソユニット。

 脊椎と肩甲骨を軸に装着され、上肢の反応速度・筋出力・照準安定を強化。

 独立アクチュエーターにより、重量武装の取り回しや射撃姿勢制御を補助。

 《STEALTH》および《LOWER》ユニットと完全連携し、“瞬発強襲構成”への移行が可能。


 《NEX-FEET/4G-LOWER》神経外骨格型下半身ユニット

 臀部~大腿部にかけて装着する下半身補助骨格。

 走行時の体幹安定、急停止、滑走回避などに対応。

 入力ラグは0.02秒以下で、戦闘中でも違和感なく神経伝達を補正。

 歩法・跳躍・制動の「動作記録」機能を備え、反復操作の最適化も可能。


 《NEX-FEET/4G-STEALTH》神経外骨格型ブーツユニット(脚部)

 第四世代の隠密型エクソブーツ。静音駆動+脚力強化を実現。

 5メートル級の跳躍、無音ダッシュ、着地時の衝撃分散機能を持つ。

 ソールは環境適応式で、使用者の歩幅・重心に応じて変形し、痕跡を残しにくい。

 《CORE》《LOWER》との統合により、全身神経外骨格化が完了する。

 

 小物類(収納ポーチ内)

  ・EMPマイクロカプセル ×3(通信遮断用)

  ・自己血液応急パック ×2(簡易輸血+凝固剤)

  ・音響撹乱ブザー《Cicada-1》 ×1(遠隔陽動用)

  ・変声フィルター内蔵型マスク(声帯の識別回避用)

  ・閃光音爆弾<小>×4


 この装備を装着するのに10分もかからなかった。

 想像通りかつ理想通りの装備。

 だが今回の装備は法に縛られることはない。


 神経外骨格が接続されるたびに、微かな神経信号が脊髄を這う。

 まるで別の生き物が身体に組み込まれたかのような、あの独特の感覚――

 これには恍惚すら覚える。

 休息により体の状態は完璧に近い。


 出入り口には、オスカーが立っていた。

 照明が薄暗いせいで、肩のムカデのタトゥーだけが奇妙に浮かび上がって見える。


「……また来いよ、公安」


 その声は、まるで旅立つ兵士にかける祝詞のようだった。

 前崎は装備の隙間から淡く笑い、短く返す。


「次は、摘発に来るかもしれないけどな」


 オスカーが口元を歪めた。

 冗談とも脅しともとれないその言葉に、彼はあえて答えず、黙って見送った。


 前崎はゆっくりと地上へ上がっていった。

 秋葉原の夜は、まだ人工光に満ちていた。

 だが、その空気には確かに戦場の匂いが混じっていた。


 彼は夜に溶け、標的へと向かう。

 誰もそれを止められない。

 なぜなら、もうとっくに「公安の人間」ではないのだから。

説明書的なものに需要があると嬉しい…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ