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【☆3.7万PV】アダルトレジスタンス   作者: オレノマツ
第一章 レジスタンス編
21/160

File:018 ボス・ルシアン

PVが一日100件を超えてる…。

本当にありがとうございます。

 扉を開けた先は、まるで中世の王宮のようだった。

 赤絨毯に金の装飾。

 豪奢すぎて、現代に存在するはずのない光景。


 様々な宝石を埋め込まれた玉座に座る影が、足をぶらぶらと揺らしている。

 金髪のヨーロッパ系の若い少年だ。


「やあ、こんにちは。国会議事堂以来だね。

 前崎英二君」


 軽い挨拶。

 だが、その声色は、底が見えない。


「国会議事堂の偉そうなしゃべり方はどうした?

 子どもに“ボス”と呼ばれているそうだな。

 差し詰め子どもの王様か」


 前崎は薄く睨みながら応じた。


「あれは子供に指示するように話す言葉だよ。

 さらに言えば名前関してよく誤解されるんだけどね、私の本名が“ボス”なんだ。

 海外の血が混じってるからさ。

 もちろん“BOSS”という言葉ともシャレでかけてるけどね」


 にこりと笑い、椅子から降りてくる。

 気さくな仕草。

 だがその一歩ごとに、空気が研ぎ澄まされていく。


「ボス・ルシアンだ。よろしく」


 差し出された手。

 前崎は一切の躊躇なく、それを握った。


 ──感触は、あった。

 指先が相手の掌を捉え、体温すら感じる。

 ただのホログラムではありえない、“確かにそこにいる”と錯覚させるリアルな感触だった。


 だからこそ、前崎は迷わず次の動きに移る。


「──ほらよ」


 握った手を、そのまま引き寄せるように強く引っ張り、

 相手の懐に踏み込むと同時に、膝蹴りを叩き込む。

 

 だが──その瞬間だった。


 握っていたはずの手の感触が、すっと霧のように消えた。

 手応えが消えたと同時に、蹴り出した足も、虚空を裂くように空を切る。


「……やっぱりな」


 前崎は舌打ち混じりに吐き捨てた。


 蹴り抜けた直後——

 前崎は薄く笑い、わざとらしく肩をすくめた。


「ホログラムっていうのは、使用者の性格が出るのか?」


 さっきまで握っていた“温度”が、逆に不気味な余韻を残す。

 精巧さゆえに、その“違和感”が、じわじわと腹の底に沈んでいく。


 乾いた金属の音。

 背後では、ケンと護衛の二人が、無言で銃口を向けていた。

 

「前崎様。今動けば撃ちます」


「いいよ。ケン、気にしてないからね」


 ルシアンが軽く諫めると、ケンはリボルバーを下ろす。


「ひどいな。初対面でいきなり蹴るなんて」


「仮にも俺は大臣だ。

 客を招いてリモートで済ますのは失礼だろう?」


 前崎は銃口など意にも介さず、室内を見回す。


「随分豪華だな。

 貧困層のリーダーとは思えない部屋だな」


 黄金のシャンデリア。

 銀細工の柱。

 権威を見せつけるような空間。


「──全部、ホログラムだろ?」


 前崎の言葉に応じるように、ノイズが走る。


 バチバチと映像が崩れ、

 煌びやかな王宮は剥がれ落ち、無機質なコンクリートの檻が姿を現した。


「正解。よく気づいたね」


 ルシアンが微笑む。

 だが前崎は、薄く鼻を鳴らした。


「どうしてわかったか聞きたいか?」


「……興味はあるね。言ってごらん」


「簡単だ」


 前崎は顎で檻の外、ケンたちを示す。


「あいつら3人、最初から微動だにしない。

それも、お前の後衛にしては妙な間合いだった」


 ルシアンの目が細くなる。


「後衛の立ち位置ってのは、”前衛が抜かれた時にカバーする”のが基本だ。

 だが、あいつらは俺に何かさせる前から外にいた。

 つまり──

 最初から俺はこの中に入れられてるって前提で配置してたってことだ」


 前崎は鼻で笑い、続ける。


「それとな──」


 前崎はわざとらしく肩をすくめた。


「この建物、下り階段がやたら多かったな。

 無駄に遠回りさせやがって。

 ……でもな、お前みたいな性格の奴が、わざわざ茶番の舞台を作っておいて、最上階にいないなんて、普通はありえねぇんだよ」


 挑発気味に、肩をすくめる前崎。


「これ見よがしのホログラムを見せつけやがって。

 自己顕示欲の塊だと思われるぜ?」


 前崎は口元を歪めた。


「ま、わざわざ王様ごっこの舞台まで用意して、自分を偉く見せるセンスが子どもだから仕方ねぇか」


 ルシアンが薄く笑う。

 だが、ケンたちは最初から“檻の外”に立っていた。


「子どもで結構。

 ただ、“閉じ込められた気分”を少しでも和らげるための、せめてもの演出だったのだけどね。

 ……気づいてほしかったな、そういう配慮にも」

 

前崎は鼻で笑う。


「関係ねぇよ。

 お前らが安全策を取るにしても、来客を檻に入れるかよ」


「確かに提案はしたが、君の信用はゼロだ。

 ならば、物理的に信用を測るまでだよ」


「おもしれぇな。

 レインボーブリッジを落として、部下を人質にして、信用しろとは随分虫のいい話だ」


前崎は鼻で笑う。

ルシアンが指を一本立てる。


「君に求めるのは、3つだ。

 1つ。我々は“国家の主権を奪う”ことが目的だ。

 君はそれを守る側にいて、いずれ編成する側になる存在。

 対極だ。

 だが、君が我々の“理念”に賛同するなら──最優先で動いてもらう」


 その言葉の余韻を残したまま、ルシアンの笑みが静かに消える。

 前崎は肩を竦める。


「ずいぶん抽象的だな。……ま、従ってる“フリ”くらいはしてやるよ、ボス」


「具体的なこともある。実務だ」


 ルシアンは続ける。


「政府要人の首を一つ、君の手で獲ってきてもらう。

 リストは後で送るよ」


「……物騒な仕事だな。わかったよ」


「ありがとう。だが、もう一つ」


 ルシアンの目が細くなる。


「君はこれから、“完全監視”される。それが信用を得るための条件だ」


「……トイレと風呂ぐらい勘弁してくれねぇか?」


「却下だ」


「俺の人権とは……。まぁいいさ」


 前崎はため息混じりに呟いた。


「でも監視って、ケンが24時間ずっと張り付くってわけにもいかねぇだろ?

 ──まさか、本気でそれやる気か?」


「必要ない。“技術”で解決するよ。ということで契約成立だね。

 仲間になった証として──そのケガも治してあげよう」


 ルシアンの視線が前崎の手首から横に流れる。


「カオリ、頼む」


 足音が静かに響く。

 黒髪をきっちり束ねた細身の白衣の少女──カオリが現れる。

 その瞳だけが、鋭く冷え切っていた。

 明らかに前崎に対して敵意がある。


「左手出して」


 ぶっきらぼうにカオリはいう。

 前崎は黙って従い骨折と火傷で爛れた左手首を、檻の小さな開口部から差し出す。


 メスを取り出して躊躇なくゴム手袋で前崎の腕を掴む


「本当に……君がやるのか?」


 前崎は左手を出しながら、細めた目で少女を見た。

 カオリは黙ったまま淡々と作業を進めていく。

 その過程で刃物が前崎の目に映る。


「その年でメス持って出てくるのは、どうにも物騒だな。

 ……医師免許は?」


カオリが前崎を嫌そうな顔で見る。


「ボスとの“約束”だから。

 でも──あんたみたいな大人は、本当は触りたくもないのよ」


 そのままメスが閃く。

 組織が抉られ、骨が音を立てて正された。


「っ、……ぐっ……!」


 反射で逃れようとするも、ケンが強化外骨格を装備した腕で押さえ込む。


「よくこれで動いてたわね。

 骨ズレてるし、火傷で壊死しかけてる。

 そのまま死ねばよかったのに。

 ……ほんとムカつくわ」


 冷えた声。

 だが、動きは一分の隙もない。

 人工骨、ナノ繊維、マイクロデバイスが次々に埋め込まれていく。


「“監視”も兼ねてるから。

 盗聴、盗撮、GPS、心拍まで──

 あんたの“全部”がこれからこっちに筒抜けになるわよ」


 縫合が終わり、人工皮膚が張られ、包帯が巻かれる。


「その包帯は剥がさないで。

 剥がしたら、爆破信号が飛ぶから」


「……本当に、人権がねぇな」


「“敵”に配慮する必要なんてないでしょ」


 その瞬間、カオリの瞳に憎しみが滲む。


「……あんたらみたいな大人が、ここに立ち入るだけでも虫酸が走るわ。

 ジュウシロウを殺そうとしたくせに人権なんて主張しないでくれる?

 加害者が被害者ぶんな」


前崎は、そんなカオリを見て静かに笑った。


「……その程度でイラつくなら、国に銃口なんか向けんじゃねぇよ」


 鉄格子を蹴る。

 鈍い金属音が、冷えた空気を震わせる。


「いいか――――人様に銃を向けるってのは、

 “殺される覚悟”を持つってことだ。

 覚悟もねぇくせに、いっちょ前に被害者ぶってんじゃねーよ、バカが!」


 カオリの手が銃に伸びる。

 だが──


「ストップだ、カオリ」


 ルシアンが静かに制止する。


「……何よ、ボス」


「彼の言うことは、正しい。

 “国家に逆らう”以上、殺されるのも殺すのも当然だ。

 その覚悟がない者は、兵士として脆い。

 だから君を、私は戦場には連れていかない」


 沈黙。


 ケンがカオリの肩にそっと手を置く。


「ここは、一旦退きましょう。カオリ嬢」


「……ケン、あんたまで、私を止めるの?」


 怒りと悔しさが混ざり合った声。

 そのまま、カオリはケンの手を乱暴に振り払う。


 だが、ケンはそれ以上言わない。

 止めるでも、諫めるでもなく、ただ静かにカオリを見つめている。


 ──その無言が、カオリをさらに苛立たせた。


 歯噛みしながら、カオリは背を向ける。

 怒りを飲み込みきれず、その細い背中にまで滲ませたまま。


 理屈ではわかっている。

 ルシアンの言っていることは正しい。

 ──だが、納得などできるはずがない。


 ぶつけようのない苛立ちが、カオリの足音を無駄に強くする。

 硬質な床を打つヒールの音が、そのまま感情の残響となる。


 そして、出口に差し掛かると──

 カオリは振り返ることなく、怒りに任せてドアを乱暴に叩きつけた。


 金属が軋み、耳障りな閉扉音が、檻の中にまで響き渡る。


 ──静寂がその場を支配する。


「……随分、未熟な兵隊だな」


 前崎の言葉に、ルシアンは目を細めた。


「手首を見ればわかるだろう。

 あの子の技術は、一流だよ」


「麻酔なしってあたり、腕は一流でも性格はクソだな……」


 前崎は包帯を巻かれた腕を押さえながら、ぼそりと呟いた。

 だが乱暴に動かさなければいずれ治るだろう。

 傷は塞がっていた。


「それで?俺はこれからどうする?出してくれんのか?」


「そうだね……」

 

 ルシアンはしばらく何かを考えるように視線を泳がせた。

 そして、不意に表情を和らげる。


「ご飯でも食べないか?」

4000字ぐらいのほうがいいのかな…?

ちょっと迷っています。

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― 新着の感想 ―
Xの企画にご参加いただきありがとうございました。 アダルトレジスタンス、以前からとてもハードボイルドな作品だなと思いつつ、冒頭部分は拝読させていただいていました。 今回ここまで読ませていただいて、シュ…
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