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File:014 羽田空港占拠

いつもありがとうございます。

コメントなどログインしなくても残せるようになりましたので是非。

前崎、高宮、黒岩、東雲の4人は、羽田空港へ向かっていた。


山本と一ノ瀬は後発だ。連携用の追加装備を整えるため、先に合流できないとのことだった。


「前回から1ヵ月半か。そろそろ来るとは思っていたが……」

前崎がハンドルを握りながら低く呟く。


「正直、自分はメディアか外資系企業が先だと思ってました」

黒岩が答える。


「私も。羽田は、狙われるにしても3番目だと思ってました」

東雲も続ける。


羽田が標的になると予想していた者は、正直少なかった。


だが、警視庁は流れを掴んでいた。

海外資本の企業やメディアが、もはや国家の治安維持を信用せず、自衛のために武装する時代に入ったことを。


それは一部の特殊な企業に限らない。

外資系の金融、巨大メディア、物流、IT、観光業……

あらゆる業種が、自社資産を自前で守るために武装化していく。


武器の流通も変質していた。

「非殺傷」を名目に掲げる兵器が、堂々と市場に並ぶ。

催涙弾、スタンガン、ゴム弾、フェイクガス。

確かに“殺すための武器”ではない。

だが――


"事故れば普通に死ぬ"

これは、現場の人間なら誰でも知っている事実だ。


側頭部にゴム弾が当たれば、人は死ぬ。

スタンガンのショックで心臓が止まることもある。

“偶然”や“想定外”の事故で、

いくらでも“人を殺せる”。


それでも、法の上では“非殺傷”と記される。

だから、止められない。

だから、誰でも買える。


かつて国家が独占していた武力は、

いつの間にか商品となり、“金さえあれば誰でも手にできる”時代になっていた。


さらに今は、AIに尋ねれば銃の設計図すら手に入る。

材料さえ揃えば、個人でも簡単に武器が作れる。

「手に入る」「作れる」「誰でも」

その当たり前が、すでに日本にも浸透していた。


だからこそ、アダルトレジスタンスが攻めてくることも、いずれ起こるとわかっていた。

だが、まさか羽田とは思わなかった。


「武器の持ち込みなんて、ザルですよ」

黒岩が苦々しく吐き捨てる。


羽田空港は国の玄関口でありながら、

経営難を理由に、私設軍隊も傭兵も雇えない。

警備を担うのは、警察のみ。

その警察も、手が回らないのが現実だった。


――つまり、羽田は“穴”だった。


シンフォニア陥落後、次に狙われるのは関西国際空港と誰もが思っていた。

関空は海上空港ゆえに封鎖が容易で、経済的影響も大きい本命だった。


しかし、奴らが狙ったのは“羽田”だった。


「……わかってやってるな」

前崎は確信していた。


羽田は、国際空港でありながら、

外資系が支配する空港とは違い、

公共インフラの延長として扱われている。

自前の私設軍隊もなく、傭兵を雇う資金もない。


つまり、守る力が無いのだ。


「穴を突くなら、羽田が一番美味い」

前崎はそう断じた。


警視庁としても羽田の脆弱さは認識していた。

だが、シンフォニア、国会議事堂と続いた後では、羽田は“3番手”であり、

警備の優先順位は自然と下がっていた。


そこを、奴らは突いた。

あえて“穴”を狙い、“恥”を晒させ、“次”を予想させない。


これは単なるテロではない。

日本への、明確な“宣戦布告”だった。


「……理由を確認しよう」

黒岩がAIに指示を出し、警察専用通信経由で最新のドローン映像が表示される。


『11時頃、未成年武装集団“アダルトレジスタンス”が、羽田発国際便P2000を占拠。

犯人側からの要求は確認されておらず、膠着状態が続いています』

AI音声が淡々と読み上げる。


「羽田でやるなら、人質を取るのが最も効率的です」


東雲が冷静に分析する。


だが、その時。

映し出された映像に、前崎の目が細まった。


「……こいつ、俺が殺したはずだが」


画面に映るのは、ジュウシロウと呼ばれていた少年だった。

前崎が顔面を確かに踏み抜き命を奪ったはず。

その死んだはずの少年が、無傷で立っている。


「治療痕もない……ホログラム転送のおかげか?」


前崎の脳裏に、その技術が浮かぶ。


(妙に子どもにこだわる組織……いったい、何者だ?)


「まもなく、レインボーブリッジに入ります」


黒岩が警察手帳を提示し、警備員がコーンをどける。


レインボーブリッジはすでに閉鎖済みだった。

一般車両は排除され、緊急車両専用レーンだけが開放されている。


「すごいな、もう閉鎖が終わってる」


黒岩が感心する。


「渋滞の心配はなさそうですね」


高宮も頷く。


だが、その時。

東雲がぽつりと呟いた。


「……おかしいですね」


「どうした、東雲ちゃん」


高宮が訊く。


「事件発覚から、まだ10分。

いくら早くても、レインボーブリッジを完全封鎖するには20分はかかるはずです。

そんな早く閉鎖できるものです?」


東雲の表情は冷静だが、その奥に違和感が滲んでいた。


「できるさ。東京湾岸署なら10〜15分で封鎖実績がある」


黒岩が反論する。


「それなら、なぜパトカーがなかったんです?」


東雲の言葉に、全員が黙る。


「通った時、立っていたのは警備員だけだった。本来なら、物理的な封鎖はパトカーで行うはず…」


前崎の声に緊張が走る。


「高宮、パトランプ回せ!」

「了解!」

「黒岩、アクセル飛ばせ!」

「行きます!」

マッスルカーのエンジンが唸る。


急な加速で後ろに重力が引かれる。


「……杞憂であってくれればいいが」


前崎の呟きが、車内に沈む。


まだ芝浦側入口まで遠い。


だが――


ドンッ! ドンッ!


重低音が響き、橋が揺れた。


「爆破音……!?」


東雲が息を呑む。


視界がゆっくりと上昇していく。

違う、橋が“崩れている”。


「……橋が……!!」

黒岩が叫ぶ。


シンフォニアで連絡橋を破壊した連中が、今度は、レインボーブリッジを落としにきた。


(なぜ“俺たちだけ”を狙う……?)


前崎の思考が渦巻く。


だが、爆炎と崩落は容赦なく迫ってくる。

レジスタンスの牙が、

今、突き立とうとしていた。

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