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File:094 低能への罠

やっとやっと……新居にネットが開通しました。

これで小説に集中できます。

やったぜ!

一ノ瀬の判断は早かった。


自分たちが戦闘の射線に入ると気づいた瞬間、迷わず坂上とは別ルートにいたチームへ合流ルートを切り替えた。


あの人外共の戦闘に参加したところでできることなど何もない。

別に行動してSGの破壊が優先だ。


可能であれば兵隊たちのバックアップ施設を破壊したいが、坂上は連戦しているのか進みが悪い。


だからこそ、雨宮に合流した。


そこを統率していたのは坂上と同じ“殲滅班”出身の雨宮。

背後には高宮と黒岩の姿がある。


事情はテレパシー・カフスで共有済みだったため、彼らは慌てることなく迎え入れた。


「……思ったより外周も内部も化け物みたいに広いな。正直、手に負えねぇ」


雨宮が呟く。一ノ瀬が小さく頷いた。


「その通りです。ですが――」


「我々はこのまま内部へ突入する。挟撃は避けたい。

 後方支援と“背中の確保”。頼んだぞ、一ノ瀬。」


「了解。」


メンバーを入れ替え、前崎班たちで後方の支援をすることに切り替えた。

自衛隊員はあと他5名だけ残ってもらった。


元々公安がこの手の類は受け持つ予定だったが、アレイスターとルシアンが接敵したことで計画が狂った。


雨宮たちがビルの影へ消えた直後、一ノ瀬はすぐに展開を開始した。

山本ら技術班がSGのエアデータを逆解析して設計した小型観測ドローン。

本来は試験段階だったが、今は迷っている暇などない。


ちなみにだが山本は最初の転送場所にて簡易キャンプを作っていた。


十数機のドローンが各方向へ散開し、すぐに戦場マッピングを開始する。


「これで全体が俯瞰できる。ここからが――」


その時だった。


視界の端に見覚えのあるシルエットが映る。


「……前崎さん?」


拘束されたまま歩かされる前崎。

そして、その後ろに付き添う少年――エルマー。


前崎に生気はなく、ヨタヨタと歩いていた。


「あんた、一ノ瀬だろ?」


「……そうだ。君は?」


「エルマー。」


リストで見た名前。

NASAに単独ハッキングを仕掛けた少年。

そしてアダルトレジスタンスの戦略中枢……として見られていた。


「何のつもりだ。投降か?」


周囲の隊員が一斉に銃を向ける。

だがエルマーは小さく肩を竦めただけだった。


「うん。降参。だから撃たないで?」


ざわ…と空気が揺らぐ。


「……理由を聞こうか?」


「勝ち目ないじゃん。

 前崎の命を条件に僕の保護をお願いしたい。」


一ノ瀬は一拍だけ躊躇したが、すぐに判断を下した。


「わかった。では手を挙げて、うつ伏せになれ。

 10秒以内にやらなかったら即射殺する。

 カウントダウンを始める。

 10…」


「ちょ……ちょっと待って!こう?」


エルマーは言いながら――土下座


からのクラウチングスタートを行い人間とは思えない速度で一ノ瀬たちに迫る。


「……ッ!」


油断していたわけではないが、警戒が一瞬緩んでしまった。


高宮だけが反応した。

銃声。脳幹を正確に撃ち抜く。


だが吹き飛んだのは血肉ではなく、

無数のコードと黒い潤滑油にまみれたフェイクボディだった。


直後——


ドォンッ!!


エルマー人形が炸裂。

付近の床と壁を巻き込み、大量の破片と火花が吹き上がる。


それは一ノ瀬たちの視界を確実に奪う。


「クッソ!前崎さんは……!?」


煙越しのシルエット。

それを目の端で捉える。

それは何かを構えていた。

見覚えのあるもの。

いや、それはそもそも前崎などではない。


PCだ。

背丈が前崎に似ているだけで目は機械のように冷たいままだ。


たたらを踏んだ一ノ瀬たちに機関銃の雨が降り注がれる。


「ふざけやがって!」


一ノ瀬が電磁バリアを展開する。

そんな時にPCの首に一筋の光が見える。

それは比喩ではなくそのままの意味だ。


「フンッ!!」


PCの背後にはいつの間にか東雲がいた。

不動の使っていたファストトラックを使って。


居合切りで抜刀した動作すら見せずに切って落とした。


PCの首がゴトリと落ちる。


「東雲!助かった!」


爆風に煽られながら一ノ瀬が叫んだ。


周囲を見れば吹き飛ばされたドローンのうち数機が機能を失っていた。


(やつらの狙いはこのドローンの展開阻止か)


「一ノ瀬!一時の方向!」


高宮の声に一ノ瀬がその方向に向けて目を向ける。


煙のその向こう。


高層ビルの外壁に、奇妙な“影”が張りついていた。

節足動物を思わせる8本の鋼鉄脚。

中心には球状のコックピット――そしてその中に、無表情のエルマーが座っている。

だがその無表情は怒りを滲ませていた。


まるで巨大な毒蜘蛛が壁に這い上がってきたかのような光景だった。


それこそが、アダルトレジスタンス特殊兵装タランチュラ

高層構造物の“外壁”を移動しながら狙撃・制圧射撃を行うためだけに設計された、完全なビル用戦闘プラットフォームである。


装備してある多銃身ガトリング砲から明らかな死の匂いがする。


「低能共が。おとなしく騙されろよ。

 死んでおけばよかったのに。」


「遠距離制圧兵器……!?まだそんなものが!!」


驚愕に目を見開いた一ノ瀬の言葉に、エルマーはゆっくりと頬をゆがめて笑った。


「まあね。

 ここに来て“平面だけ”を想定するほうが悪いと思わない?」


鋼鉄脚がギギッ…と壁に深く食い込み、機体が更に上へ這い上がっていく。

そしてエルマーは、タランチュラ前面のハッチを開け――

胸元に固定された多銃身ガトリング砲へ両手を添えた。


「じゃ、始めようか。」


次の瞬間――


ダダダダダダダダダ!!!


壁面を這うタランチュラから、真下の一ノ瀬隊へ向けて容赦のない銃撃が降り注いだ。

高所からの俯瞰射撃。

散開しようとする隊員を追尾して弾道が曲がる。


「くっ! 全員防御散開! 指向性バリア展開!」


しかし展開した電磁バリアは、触れた瞬間にジュッと音を立てて融け落ちた。


「何!?」


「それ、君たちの仲間の前崎から奪わせてもらった対電磁バリア弾丸だよ。

 君たちの主力防御、ここじゃただの紙。

 君たちの文明レベルでは量産体制すらできないだろう?」


上空のエルマーは一切動じず、

むしろ楽しげにガトリング砲を左右に振りながら射線を散らしてくる。


2万発。

それがこのタランチュラがリロードなしで撃てるガトリングから放たれる銃弾の数である。


ジュウシロウが使っていたミニガンはこれを改良したものである。


すでに雨宮へと続くビルの入り口は崩落していた。


このままだと押し潰される。

そう判断した一ノ瀬は、すぐに別の建物内部へと部隊を誘導した。


見た目は明らかにボロいが仕方ない。

狙いが定まらないだけまだマシかもしれない。


「全員、中に入れッ!!」


一斉に飛び込んだ建物の表札には、

白い装飾文字でこう刻まれていた。


『音楽ホール』


エルマーの狙い通りに誘導された一ノ瀬達は2人の待つ劇場へと誘われた。

ちなみにですがこれで100話目です!

よくここまで書けたと思っています。


これからも頑張ります。

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