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血も滴るハングドマン

章の名前は最初に決まってるんですけど、その

後のこういった話ごとのタイトル考える時に苦戦します。読みやすいように、一話でまとめてたやつをブロックごとに分けるんで。

どんどん気狂いというか理不尽というか自由すぎというか。

そんな男に育てていきたいです。

-日本橋-


 タクシーに乗って、依頼された場所に到着した羽柴と流歌。橋上の歩道には既に警察がアウトラインを張っており、ドラマでよく見る青いビニールシートでブラインドされている区画が見えた。

 茨城県でふらっと寄った時とは比べ物にならない規模の野次馬が群がり、その中を出迎えで待っていた警官らに先導されながら現場へすり抜けていく。

 探偵は不特定多数の人間に顔が割れて身バレしてしまうと、自身や身内の危険性が高まってしまう。事件や謎解きをメインにしている探偵なら、なおさら逆恨みされやすい。

 故に、ここまでの人数が見ているとなると不味いと判断した警察側の配慮で、二人はコートやフードで顔を隠して入場してもらった。

 流歌はまだ高校生なので配慮は素直に受け入れ深く顔を隠しているが、羽柴だけは全く別のことを考えていた。

 唐突に、流歌にしか聞こえない声でボソッと呟く。


「顔隠してるってなんか良いな〜。昔もこんな感じで仮面被ってやってたわ」


 顔を隠す隠匿(いんとく)性に、ミステリアスな気分を感じてウキウキしていただけだった。

 そもそも、羽柴は逆恨みや逮捕した元容疑者による報復などに対してウェルカムだった。

 防衛目的で人を殴り倒せるチャンスが自分から転がり込んでくるのだから。

 だから、羽柴にとってはどちらに転んでも良かったのだ。全ての事件の犯人が邪悪なわけではない。中には、犯罪してもおかしくない事情があったり結果的に殺人を犯してしまうケースも少なからずあった。

 それでも羽柴には関係ないことだ。

 いつも通りに、犯人の心を嬉々として折ろうとするが、大抵は知人の刑事らや流歌に止められたりすることが多いのだ。

 いつ背中から刺されてもおかしくない探偵の筆頭である羽柴には一回痛い目にあってほしいと、今まで関わってきた警察関係者の中には思っている人も少なからずいる。

 流歌は、つくづく狂った人だと過去の思い出と共に脳内で反芻(はんすう)した。





「よう羽柴親子。朝からイチャイチャしやがって」

「朝の一杯で十分茶化してもらったよ。腹がタプタプになっからおかわりはいらねえ」

「正爾さんとイチャイチャとか外で言わないでください。すごく恥ずかしいです」

「お前もストレートに言うのな・・・」


 ブルーシートの入口で、羽柴探偵事務所と腐れ縁の警部である支倉昌信が、ポケットに手を突っ込んで待っていた。相変わらず草臥(くたび)れたコートがお似合いの警部である。これでも敏腕なんだから馬鹿にできない。

 因みに、この人には妻と大学生の娘がいるのだが、娘はいい歳してそんなにお父さんを毛嫌いしていない。世の娘ならとっくに父親をウザがったりするはずなのに、だ。

 自分もいつかそうなるのかとちょっと憂鬱になりかけるが、そんな日はきっと来ないことだろう。日本一恐ろしくイカれた父親に反抗できる娘なんてこの世に誰1人としていないのだから。


「まあ話はこれくらいにして、ちょっと見てくれ」

 現場内に招かれて行くと、そこには回収された男性の遺体が横たわっていた。

 年齢は30代前半の会社員なのかスーツ姿で、片方の足首にはロープが巻かれていた。

 頭に血痕が見えたので、鈍器か何かで殴打されたのだろう。血が流れて悪くない顔に赤が映えている。

 そして、指先が川に浸かっていたのだろう。長時間濡れてふやけてしまっていた。


「被害者は、土井(どい)孝文(たかふみ)33歳。この日本橋付近にある中小ベンチャー企業の社長で、主に観光業を営んでいた。

死因は後頭部に陥没(かんぼつ)があったから、脳挫傷とされている。死亡推定時刻は昨日の午後9時〜9時30分頃。

さっき会社にも問い合わせてみたんだが、社長は昨日も普通に出社していることが確認されていた」


 支倉が動かない肉と化した被害者の詳細を述べる。変死体だったのか、死後硬直が全身に回っているせいで滑稽なポーズになっている。

 羽柴は人目も(はばか)らず死体を指差して笑い出した。流歌も想像してしまったのか、顔を逸らしているが肩が震えていた。


「ウォッホン!!・・・いいか?」


 埒が開かないと支倉は、露骨な咳をしてシリアルとなっていた空気を引き締めた。

 羽柴も少し笑いながら、しゃがんで死体と向き直った。


「ヒーッハハッ、し、失礼。ベンチャーの社長か〜良いご身分なことで。会社ってどこにあんの?」

「住所を見るに、ここからすぐ近くにあるシラサキビルの12階にあるな」

「ふーん・・・・・・足のロープはアレかな? 片足だけで逆さ吊りにされてたとか?」

「そうだ。この橋の下を通る観光クルーズ業の船頭が今朝、航路の下見中に宙吊りになっている被害者を発見し通報した」

「(ロープの)長さは?」

「そうだなぁ・・・欄干(らんかん)の1番下と結ばれていたから、大体1mくらいだな」


 羽柴は遺体の顔を見て納得した。だから、死体の顔が少し赤かったのか。今は横にしているから顔の赤みはそれほどではないが、第一発見者が見た時は顔が破裂するんじゃないかと思うくらい血が昇っていたことだろう。

 羽柴は、惜しいことをしたと思った。長年事件を解決して愉悦と金のためにやってきたが、頭が破裂した人間はまだ見たことがなかったのだ。

 なんならそのまま破裂した死体が見てみたかった。

 それにしても、橋に片足だけ逆さ吊りとは、なんともまあ怪奇的な事件である。土井が何故殺されたのかには心底興味ないが、犯人の為人(ひととなり)には興味が出てきた。

 どんなクソ野郎が敵なのかワクワクしてくる。できれば快楽殺人者であって欲しいと、手を合わせて遺体ではなく天に祈り始めた。

 こんなイカれた姿を外の人たちに見せなくてよかったと、横目で見ていた支倉は小さく息を吐いた。


 片足で逆さ吊り。歴史上でも、そのような姿で晒し者にされる事件は少なからず存在する。しかし、現代の人間にとってはこの遺体の(さら)し方はまさしく、あのカードの絵柄を彷彿(ほうふつ)とさせる姿だった。


「まるで『ハングドマン』だな」

「ハングドマン? 何だそれ」


 羽柴がポツリと呟いた一言に、支倉が食いついた。ハングドマンという聞き馴染みのない言葉を説明したのは、羽柴ではなく流歌の方であった。


「タロット占いで使われるカードの一つに描かれた、逆さまに吊るされた男性のことですよ。正位置だと修行、忍耐、奉仕、努力、試練。逆位置は諦め、徒労、投げやり、自暴自棄、欲望に負ける、とかの意味があったはずです」

「お前詳しいな」

「クラスで女子が占いのことを話していました」


 なんてことだ、恐るべしJKネットワーク。

 ホームレスの情報網に引けを取らないかもしれない。

 今度使ってみようかと考えている羽柴だが、冷静に想像してもらいたい。

 うら若き女子高生の噂話に混じっていく27歳男性。間違いなく通報案件になる。

 本人は全く気にしない脳みそだが、少なくとも義娘の流歌が全力で止めに入ることだろう。

 ともかく、この場で調べるべきものは粗方(あらかた)出尽くした。

 被害者がベンチャー企業の社長で、現場も会社も日本橋。クルーズの従業員が発見した、ハングドマンを模した死体。

 少なくともキーワードはその企業とクルーズ、そしてハングドマンそのものといったところだろう。キーワードが丁度3つならば、ここは3方向に分かれるべきだ。遺体の致命傷とかその辺りは、警察の方で解剖してもらった方が早い。

 50万円のためにも今日中に事件を解決すると、探偵にあるまじき動機で闘志を燃やした羽柴であった。


「じゃあ俺は会社の方に。支倉はクルーズ、流歌はハングドマンの資料集めよろしく〜」

「は? お前は分かるが、何でクルーズとハングドマンなんだ?」

「クルーズの方に行って使用痕跡や夜中の目撃情報。ハングドマンに関してはタロット以外での意味とかを調べてこい。んで終わったらウチに集合。

分かったね? ハイいってらっしゃーい!」


 拍手を2回打ち、2人に別地点での調査を促す。支倉は日本橋を通るクルーズの船着場へ、流歌はタロットの占い館へと向かった。2人が行く姿を見届けた羽柴は、だるそうな足取りで土井の会社へと歩いて行った。

こんなに天上天下唯我独尊なんだね羽柴って。

キーボードを打ち込みながら、ずっとアバランチの綾野剛がチラついてました。


かっこよすぎだろ綾野剛(?)

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