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【2万PV突破!】アンフェール〜探偵にネジは存在しない〜  作者: ディスマン
アルデバランが墜ちるまで

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λ - シャウラ

ボカロ楽曲作りたいんでしばらく休載しまーす

 デ◯ボールで爆発したビルに急行すると、地上では既に警察が規制線を張っていた。野次馬たちやポップしたかのように現れる記者たちが、黒煙立ち上るビルや歩道に散らばる残骸を撮影している。

 この状態で中に行こうとすればマスコミに素顔を撮られてしまうと思った羽柴は、支倉の背後でコソコソとアンフェールのマスクをした。


「! おい、アンフェールが来たぞ!」


 一人が気付けば、雪崩式に情報と目線が伝播する。羽柴の周りを警察が取り囲んで道を作っていて、国際映画祭のレッドカーペットみたいだった。人の血とかでなくて非常に残念である。


「地面が血塗れだったら映画祭みたいだったのになぁ」

「お前マスコミの前でその発言やめろって」

「悪質だったら殺すだけさね。俺が殺すに値する理由とか取っ付けてな」

「権力手に入れた悪魔とか最悪だぜ・・・」


 何を今更、と鼻を鳴らしてマスコミと野次馬の中をモーセの如く歩いていく。まるで自分が事件を起こして連呼されているような構図だが、そんな記憶はない。ないったらない。

 そうぼんやり考えていると、斜め前に一歩躍り出た記者がいて、カメラをアンフェール達に向けて構えている。その口から出たのは、ジャーナリズムに溢れている一方で、常人の神経を逆撫でする言葉であった。


「アンフェールさん! これまでの事件は全て貴方の自作自演という噂がありますが、真相はどうなんですか!?」

「はぁ?そんな事実はない。警察が保証する!」


 デリカシーゼロの記者の質問に、ついカッとなった支倉が答えてしまう。支倉は、羽柴が安い挑発でキレるような人間でないことは知っていた。むしろそれを大義名分という名の言い訳に、ギャングも真っ青な仕打ちが待っているだろう。


「・・・・・・へっ」

「?」


 アンフェールがほくそ笑んだと思った瞬間、記者が覗いていたカメラは真っ暗になった。設備障害ではない、物理的に画面が暗くなったのだ。アンフェールは上体を地面スレスレまで下げ、その反動で足を振り上げカメラ越しに記者の顔面に蹴りを叩き込んだ。躰道では、卍蹴りと呼ばれる足技である。


「ぶへぁ!?」

「いきなり蹴ってごめーん、まことにすいまめーん!※©️ジョ◯マン」

「・・・©️マークでどうにかなると思うなよ」


 顔面にカメラの破片が刺さりながら気絶している記者を見下ろしたアンフェールは、彼の名刺入れから会社を特定すると、ボロボロになった彼の写真を撮ってイヴに送信した。出版社を脅す気満々である。


「そんなに癇に障ったか?」

「キレた風を装ってカメラごとぶっ壊した方が面白いかなって」

「理不尽すぎだろ!?」


 それ以降、倒れた記者を見ることなく現場のビルに入っていくアンフェール。その一部始終を、固まって呆然とする者もいれば、根性たくましくカメラに収める者もいて、写真と映像を撮った出版社は発行部数も記事のPV数も数百万を超えたのは余談である。




ー25階ー

 エレベーターは機能していて、扉が開いても焦げた臭いがするだけで、通路には影響が出ていないようだった。だが通路の突き当り手前の部屋が、弾けたポップコーンのように崩れているのが見える。床はスプリンクラーでビショビショに濡れていて気持ちが悪い。

 嫌な顔しながら爆心地である部屋を覗く。けれど、そこは空き部屋だったらしく人も物もなかった。それは爆散した破片を見れば一目瞭然で、壁材やガラス、天井裏の軽量鉄骨などしかなかったのである。

 さっきは人を巻き込んで爆破したのに、次は意味もなくただの部屋を吹き飛ばした。いや、無意味と考えるのは早計だろう。

 そう考える支倉の横をすり抜けて、土足でずけずけと現場に入っていくアンフェール。彼は外装の無くなってスッキリした窓際で、映画「ショーシャンクの空に」のように両腕を広げ、吹き抜けるビル風を感じ始めた。


「気持ちいね~。ロンドンオリンピック2012の放送テーマ流れそう」

「ソ◯ーとM◯AIから怒られるって」

「ま、そんな多方面から怒られる冗談は置いといて」

「自覚あんなら自制もできてくれ」


 ジト目で言われても、アンフェールはどこ吹く風だ。


「見ての通り、事故ではないのは分かるよね? 二件も続けて近場で爆発は考えにくいし、今回は人が死んでない」

「人を狙ってないのか?」

「だったらさっきので異物混入サプライズはしてねえよ」


 穴から地上を見下ろし、次にさっきいたレストランを見る。あそこでは多くの人が失敗した冷凍食品のように弾け飛んでいた。人を殺すこと自体が目的ではないのだろう。怨恨の線はない。だが、どこまで考えても"誰"まで到達はできない。

 そう考えていたアンフェールだったが、もう一つの疑問が彼を推理の空間に沈ませた。


「・・・なぜ、こんな近いビルをわざわざ?」


 アンフェールの懸念はそこだ。

 犯人は近くのビルを二棟も爆破した。だが、レストランとか空き部屋を吹き飛ばしている点から殺害目的ではない。警視庁に何かしら脅迫が来てもいない。つまり、このビルを吹き飛ばす―――要するに場所に意味があるのではないだろうか?

 そう考えると、土地やビルの所有権を狙った犯行だろうか? いや、なら爆破で人が死ねば後にテナントが入りにくくなり利益が下がる。そんな一個人や企業を狙ったものではない・・・。


「まさか、爆破を見せること自体が目的か?」

「そんな生粋の爆弾魔がいるのか?」

「それなら近場のビルを狙ってもいいだろうし、目立つだろ」

「んんんんんんん・・・」


 渋い顔で唸る支倉を、面白そうに眺めているアンフェール。暇になって、少し雲の少ない空を見上げると、たまたま白く欠けた月が見えた。「珍しいこともあるもんだなぁ」と呑気に思っていた時に、根拠は薄いが、とある犯人の心当たりが浮かんだ。物的証拠も状況証拠も無いが、可能性だけは掴んだ。


「・・・・・・誰か、東京の地図持ってねえ?」


 支倉はまだ理解が及んでいないが、アンフェールを信頼して部下に地図を持ってこさせた。煤だらけの床に広げられた地図を見て、アンフェールは他の警官に指示を出す。


「このビルはどこ?」

「えーっと・・・・・・ここです」

「ん。じゃ、さっきの三ツ星レストランは?」

「ここです」

「・・・・・・ふぅ~ん」


 興味なさげに返事をしたかと思えば、アンフェールはその後、狂ったように笑いだした。長年の宿敵、あるいは獲物が返ってきたような、そんな獰猛さを惜しみなく出した表情であった。


「支倉、前に教会回って防衛省に突撃した事件あったろ」

「あぁ、キリスト教会連続殺人事件と防衛大臣暗殺未遂事件だな。それが?」

「これは言葉も声もない()()からのヒントだ。南の夜空を見ることを強くお薦めするよ」


 そこまで言って、羽柴はビルから出ていこうとした。


「お、おい。どこ行くんだ?」

「帰る。今日で解決したらつまんねえもん。それに、もう今日は爆発しねえと思うぜ」


 無責任にも、羽柴は面白くなくなるという理由で今日の捜査を切り上げた。止めても無駄だし、強制的に引き留めようものなら十中八九部下が紐なしバンジーさせられる。

 廊下からは、上機嫌なアンフェールの憎たらしい笑い声が聞こえるだけだった。

重信さんの歌集読みましたよ。

誰が書こうとオモロいもんはオモロいんです。

文盲にはそれが分からんとです。

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