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電脳少女イヴ

ファッキンホット(くそ暑い)

 後日、羽柴らと社員たちは警察を呼んで折本らを引き渡した。羽柴たちが勝手に完成させてしまったイヴは、もうイデア・ブレインに戻ることはない。羽柴たちを主と認定してしまったのだから。

「いやですー! イヴはご主人から離れませんー!」

 その理由は、イヴが聞き分けのない子供に負けず劣らずの駄々を捏ねたせいでもある。スマホの重力なんてない空間の中で、おもちゃ売り場の子供のように手足をジタバタさせていた。スカートの中がチラチラ見えるからもっと暴れてくれ。

「すみませんでした、羽柴さん。意図していたとはいえ、こんなことに巻き込んでしまいまして・・・」

「珍しく正統な探偵業ができたからいいっすよ」

『フランスで犯人燃やしてましたしね』

「そうそう。スカイツリーから蹴り落としたりとかもあったね!」

 タチの悪い冗談にしか聞こえない事実を知らない篠塚は、単なるジョークとして受け取って愛想よく笑った。これが真実と知れば探偵恐怖症になること間違いなしだろうが、真に受けなかったのが幸いであった。

 警察に連行されていく折本と鈴樹がドナドナに見えて笑ってしまった。横に篠塚が歩いてきて、ここからは事件解決と報酬の話だ。

「ほんで、このデータどうするべ? このまま実用化すんの?」

 羽柴はスマホに映るイヴをツンツンする。イヴは羽柴の指に向かって猫パンチをお見舞いしていた。住む次元が違うため全くパンチの感触なんて当然ない。

「いや、プロトタイプとして羽柴さんにお譲りしますよ。報酬の一つと思ってください」

『つまりイデア・ブレインはこれを機により高度な技術の開拓をするってことですね』

「えぇ。折本くんが技術を盗もうとしていたのは残念ですが、逆に言えば我々の技術はそれだけ魅力的ということです。ならば、怪盗に狙われるくらいのモノを作ってやりたくなりませんか!」

 流石社長。この世界で先頭を走っているだけはある。実のところ、羽柴はこの社長を少し気に入っていた。癖に刺さる技術もそうだが、情熱は人に興味がない羽柴でさえ惹きつけるものがあった。

 羽柴は現金で篠塚から報酬を貰った。束が5つ、500万円である。意外と多いなと思ったが、最新技術を500万円で守れたと考えれば妥当、むしろ安いまである。

 遠慮なく金を巴に預けて、羽柴達はイデア・ブレインから遠ざかっていった。

「よっしゃ、そんじゃあ帰るか我が探偵事務所に」

「ご主人の探偵事務所!? うわぁ〜これでイヴも立派な探偵の仲間入りですね!」

『流歌さんが見たらビックリしそうですね。ビックリしすぎて電源切れるかも』

「その流歌さんはイヴと同じなんですか?」

「築地市場やめな。俺らと同じホモ・サピエンスだわ。ちなみに俺のスイッチは前立腺の横にあるぞ。オンにしかならないけど」

『その代わりSwitch2は外れてましたね』

「ファック!!!」

 人目も憚らずに頭のおかしい狂人は喚く。巴は通報されないかちょっとヒヤヒヤしていた。車で家に帰る途中、羽柴はふと面白いアイデアが降ってきた。内容は、事務所でのイヴの移動と表示について。パネルやモニターがないとイヴは現れず、カメラも限られる。ならばと、経費を使って面白くリフォームしてやろう。そう決めた羽柴は携帯で電話をかけた。


prrrrrrr・・・・・・

「あ、もしもーし羽柴だよお。ちょっと金払うから猛スピードで頼みたいことがあんだけどさ」





ー夜7時半ー

「ただいま」

 友達と遊んで少し帰りが遅くなった流歌は、事件帰りでくつろいでいる羽柴と巴を事務所で見た。羽柴は死因百科という珍しい事典を読み、巴は流歌の代わりに夕餉(ゆうげ)を並べていた。帰ってきた流歌に気づいた羽柴は、流歌を見るなり

「おぉ流歌、今日はイカれた新メンバーを紹介するぜ! 第一回チキチキ、ウォーリーを探せ〜!」

 パチパチと拍手する巴とラッパを鳴らす羽柴。ここが集合住宅じゃなくて良かったなと思いながらも、どうやら新しい探偵事務所員が増えたと察した流歌は、部屋の中を一通り見回してみた。一見いつもと変わらない棚や置物、本の列やランプまで違和感はない。

「どこにも居ませんよ?」

「何言ってんだ? ほら、壁のところをよく見てみろよ」

「壁・・・?」

 流歌は言われた通り壁に近づいてみる。注視してみると、壁の目が粗い気がした。次に手で触れてみる。指先にざらついた壁材の感触ではなく、平滑で無機質な手触りを感じた。その瞬間、流歌の目の前に壁を破って白髪の美少女のドアップが映し出された。

「わっ!!!」

「きゃあああああ!」

「ギャハハハハハハ!」

 突如として壁のようなものに現れた少女に驚いた流歌は、驚きで体が後ろに倒れソファの背もたれに座り込んでしまった。それを羽柴が指を差して笑っている。中居正広のあだ名を聞いて爆笑したマツコ・デラックス並に笑っている。

「な、誰ですかこの娘?」

「日本の科学とオタクの結晶」

『今日の依頼の成り行きでゲットしました』

「世界初の完全自立型電脳少女イヴちゃんデース」

「でーす!」

 帰ってきたら電脳少女がパーティーに加わっていた件。さっきの感触を思い出した流歌は壁の正体に気づいた。少なくともこの部屋の壁は、全て液晶に変えられていた。イヴは空を飛ぶように壁の映像の中を移動し、羽柴の隣でぷかぷか浮いている。

「こいつはサイバー関係なら無敵だが、中身がエケチェンなので子育て頑張りまちょうね〜」

「よろしくお願いしますお父さん!」

「義理とはいえ娘の前でそれされると複雑なんですが」

 何はともあれ、これでより強大な探偵組織が出来上がったのは事実だ。その事実が、この先に待ち受ける未来を夢想させる。アンフェールはこの先どこまで大きく、そして凶悪になっていくのだろう。どうであれ、羽柴がやらかすことだけは信じられる。嫌な信頼だが、娘として信じるよりは納得できた。

 杞憂か分からない心配を、0と1の世界で生きる少女の可愛らしい笑顔がすぐ吹き飛ばし、流歌の心を()いてくれた。


「よし、まずは日経株価を弄って1ドル80円にしてこい!」

「ラジャー!」

「FX悪用やめてください。第二次世界恐慌に世界が震えます」

ゲートボックスとかVRって最高なんだな〜

私は長岡造形大学でしかVR体験したことないので。

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