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探偵と助手、父と娘

仕事場が自宅って最高ですね。

そう考えるとネットタレントとか作家とかクリエイターはなんて理想的なんでしょうか。

好きなことして、生きていかせてくれ。

-午後18時 羽柴探偵事務所-


「うぃーっす」

「あ、羽柴さんお帰りなさい」

 事務所に戻ると、すでに戻ってきていた流歌が夕飯の支度をしてくれていた。今日は珍しく和食だが、羽柴の好きなミョウガの味噌汁・鯖の生姜煮・葉野菜のカラシサラダに白米だ。

 夕食を食べながら羽柴は事件の移動で溜まった疲労のことを考えていた。今日は移動があったから足が疲れた。食べたらさっさと風呂に入って寝てしまおう。




「いやそうじゃないですよ。・・・・・・羽柴さん、女子大は楽しかったですか?」


 羽柴が味噌汁のミョウガを口に運んだ時、対面に座る流歌からようやくツッコミが入った。人の気持ちを気にしない羽柴が見てもわかるくらい、頬を膨らませて不貞腐れている。

「何よ。いいだろ別に。俺結婚してねえし彼女もいねえんだから浮気とか不貞とかにならんだろ?」

「娘がいる時点で不貞ですよ」

「お、イッポン!」

「・・・はぁ」

 あれだけ頑張って支倉と死体遺棄のトリックを解いたのに・・・。なんだか報われない努力に気分が沈んだ流歌だが、急に羽柴が箸を置いた。

「あ、そうだ」


 席を立った羽柴は流歌の隣まで歩いていき、一度立ち止まると、


「?」






ぽんっ


右手を流歌の頭に置いて撫で出した。

「・・・!?」

「よしよし、よくやったね」


 しかも耳元で努力を褒めてくれる。普段は絶対にしないような優しい仕草に、流歌は困惑と同時に不覚にもドキッとした。

「期待に応えられて偉いぞ」

 ASMRのような心地よさによって夢の世界に誘われそうになる。意識を委ねてしまいそうな誘惑が迫ってきた。


「・・・・・・・・・・・・ハッ!」


 気づいたら、羽柴の優しい愛撫を堪能してしまっていた。我に返った流歌は、シュッと羽柴の手から素早く離れた。

「あら?・・・っかしいな。勉強した感じだと、父親ってこんな風に撫でたりすんじゃねーの?」

「・・・いえ、父というより彼氏感の方が強かったです」

「マジィ?」

 羽柴の気まぐれによる、唐突なサービスにまだドキドキしている流歌。頭を冷やすこと10分、席に戻った2人は改めて今日の時間の推理を始めた。


 初めは、珍しく羽柴から始まった。

「三浦の大学行ってみたが、学内では問題児って感じじゃなかったぞ。友達も普通にいたし。そんで、喉の傷がキレイみたいな話したじゃん?」

「はい。・・・・・・医学部の先生に聞きに行ったんですね」

「正解。また撫でたろか?」

「不整脈になりそうなので遠慮しておきます」

 流歌のこの言葉は洒落ではない。次にさっきと同等以上のスキンシップを喰らえば、高血圧どころの騒ぎじゃなくなる。これからはリハビリが必要だなと、羽柴は心で悪どく笑った。

「あらら。ま、いいか。三浦はゼミの担任の水越っつー医学教授と親しかった。で、実際会ってみたら女子大生たちが噂してた通りの奴でよ。頭はいいわ、顔もいいわ、対人能力も高い。人の思い描く完璧な医学者って印象だった。

まあ、()()そんな感じさ」

「裏は違うんですか?」

「ああ。て言っても性格とか人に見せる顔が違うんじゃない。奴の異常なところは、美意識だ」

「美意識?」

 美意識が異常とはどういうことだろう。美醜が逆転しているのか、ホラーに美を感じるのか。

「アイツに帰り際に、不意打ちで好きな色を聞いてみた。したら、古い赤が好きだとよ。古い赤が指す意味知ってる?」

「いえ・・・」

 流歌はその色に聞き覚えはなかった。古い赤とは、何かの隠語なのだろうか?


「古い赤ってのはな、血だ」

「血・・・?」

「この"古い"は最古という解釈で、旧石器時代の洞窟壁画に使われた代赭石(だいしゃいし)が歴史上一番古い赤だ。フランスのラスコー洞窟や、スペインのアルタミラ洞窟壁画の赤がこれで、血液の象徴的存在として使った説がある。ありゃ分かっててこんな遠回しなこと言いやがったな。クククッ」

「正爾さん、もしかしてその水越教授が犯人だと思ってます?」

「そう言いてえけどな~・・・。でも根拠が弱えんだよな」

 現在の容疑者候補として、水越が筆頭なのは羽柴の中で決まっていた。だが、例え流血に美しさを見出すフェチ野郎だとしても、それと犯人かは関係あるとは言えない。他に怪しい点でもあれば良いが、彼の研究室と彼自身から読み取れはしなかった。

 羽柴が突破口を考えている時、流歌は慧聖女子大について検索していた。


「・・・へぇ、可愛らしい生徒が多いですね?」

「おいおい嫉妬か?する相手間違ってんぞ」

「若い娘達に固まれてチヤホヤされてたんですよね?」

「何で知ってるの?」

「あ、当たりましたか」

「女の勘かい!」

 女の勘相手には、羽柴もなす術がないようだ。もしかしたら、俺の後を継いだら勘の強さで解決数抜かれるんじゃないだろうかと、そこそこ本気で思わさせられた。

 そんな羽柴をよそに、大学を調べていた流歌の指が止まる。

「・・・?」

「どしたぁ?」

「大学のお知らせなんですけど、大学周囲で3件も行方不明者が出てますね。7ヶ月くらい前から」



 その瞬間、羽柴の中に渦巻く混沌が揺ら揺らと秩序を持ち始め、やがて真っ白な世界を作り上げた。

「・・・・・・あーはいはい。なるほどねぇ」

「正爾さん、分かりましたね?」

「まあな」と流歌に返答する羽柴は、ニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべた。

「私に推理を聞かせてくれますか。死体遺棄のトリックと引き換えに」

「取引成立だな。ついでに今回の作戦もバラしてやるよ」

「だが」と羽柴は付け加えた。まだ何かあるのだろうか。流歌は言葉の続きを待った。

「決行は明日の真っ昼間にやる」

「え?私行けないじゃないですか」

 明日は月曜日で、流歌は学校に行かなければならなかった。残念がる流歌を羽柴が説得する。

「俺1人で行った方が安全だ。なんせ決戦場はちょっと狭いからよ。あ、あと・・・」




「テレビの緊急生放送が明日の昼あっから、友人どもとお楽しみにな?」

結婚願望はないんですが、子供を育てるのが夢なんですよ。

子供に哲学とか居合術の英才教育を施して、強くて自分の思想をしっかり持っている子にしたいんです。

そのままゆくゆくは、テレビに出るかネットで活動して、世間に影響を与えるインフルエンサーとして世の中を操作して欲しいですね。

フィクサー大歓迎!

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