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第五十四話【白蛇】


 へ~、ここが普天間宮。


 宜野湾市普天間にあり、すぐ裏には米軍普天間基地があり、奥の駐車場にはフェンスが存在する。

 移動している車中、蔡姉弟の兄、蔡唐楽さんから普天間宮について、色々と教えてもらった。


 普天間宮には金武宮と同じように奥宮と呼ばれる普天満宮洞穴があり、合祀されているが中でも有名なのは「グジー神」と呼ばれる女神である。

 の女神は航海安全、豊漁といった海にまつわる神とされ、仮初の現身うつしみにより人であった頃、衆目には姿を現さないが絶世の美女だと謳われた彼女を一目見ようと妹の夫の好奇心で顔を覗かれてしまい、この洞穴に消えたという言い伝えが残っている。


 神社の者の案内で琉球石灰岩でできた人工の地下通路をくぐり抜け、洞穴へと足を踏み入れた。


 それにしても小虎さん、車の中でもムスッとしていて蔡唐楽さんの話をちゃんと聞いてるのか疑問だった。


 自分と同い年だと聞いたが、とてもじゃないが同い年とは思えないぐらい見た目から考え方まで大人びていて夜の街とかひとりで歩いててもまず補導はされないと思う。職質はされるかもしれないけど......。


 自分がなんか気に触ることでもしたのか?

 それとも舜歌となんか言い合いしてたけど気を悪くしちゃったのかな?


 なんにせよ小虎さんからアクションがあるまではそっとしておこうと思う。


「おい、朔」

「ヒィィィッ!?」

「なんで悲鳴で返事するんだ? それより気をつけろッ」


 小虎に低い声で警告されてようやく異変に気がついた。


「囲まれてるぞ」


 ホントだ。

 数は自分で把握できるだけで十体……。

 悪霊ヤナカジが七体、上位悪霊シタナカジが三体。


「十一体いるな!?」


 え……あとの一体は自分はじめには視えないけど。


 動揺している間にも悪霊たちが鍾乳石の影から姿をみせ始める。

 

「朔くん」「朔ちゃん」


 寿姉と用高さんが、危険を察知して、自分の影から出てきて、自分の左右やや後方を補うように構え始めた。


「オレはヤツを倒す。残りを頼む」


 ヤツって、この中のどの悪霊を指しているのかが、わからない。ということは自分が視えてない悪霊!? を相手にするから後はヨロシクという意味。


 いやいや……。

 上位悪霊一体でも苦戦するのに三体と他悪霊も七体って完全に容量超過キャパオーバー

 

 この悪霊たちって元戦人(いくさびと)なのかな?

 上位悪霊の方は日本の戦国鎧武者の出で立ちに似ている。

 甲冑を身に纏い、立派な槍や大刀を手にしている。

 悪霊の方は、身体上部の大きな部分だけ皮でできた鎧で身を包んでいて、下級武士または足軽のような存在だったと思われる。


 対する自分はじめは木剣、寿姉が大鎌、用高さんにいたっては大きなフライパンが武器だ。


「じゃあな」


 小虎さんが、何を視ているのかは謎だが、奥の方に走っていき、この場には自分たちだけになってしまった。


 うわーッ、超怖いんだけど?

 蔡唐楽さんは駐車場で待機しているしこの場には自分たちだけしかいない。


 十分距離が縮まったところで、鎧武者の抜き身の大刀がなんの予備動作もなく、下から斬り上げられて、それを寿姉が大鎌で受け止めると他の九体が一斉に自分たちに襲い掛かる。


「“隔„」


 自分が木剣で、用高さんがフライパンで他の二体の上位悪霊の攻撃を受け止めたが、ガラ空きになった自分たちの懐に残りの七体の悪霊の弓矢やら槍が伸びてきたが、洞穴の入口側から消えた声に応え、みえない壁ができて、いっさいを遮った。


「なぜおひとりなんですか? 本部の者はどうしました?」


 洞穴の入口には、この宜野湾市普天間を守護する中部の林世沙りんせいささんと姉の林九明りんくみんさんがコチラに向かっていた。

 林世沙さんの”字術„か。助かった。


「”賢蛇(けんだ)„」


 入口側に最も近い位置にいた悪霊を林九明さんがしなやかな身体の発条バネを使い、鮮やかなハイキックを入れて吹き飛ばしている間に世沙さんが、彼女の守護霊を喚びだした。


 天井や床、至るところから数百、数千匹の白蛇が現れ、悪霊たちに巻き付いていく。


 これが中部の守護者、林家の守護霊。

 守護霊っててっきり、舜歌の守護霊「オジー」のように人型なのかと思ったら、違うんだ。そういえば強化合宿の時に同じ班にいた中部の術師、平安山百香へんざんももかさんも「獅子毛」と呼ばれる動物系の上位悪霊を使役していた。


 この白蛇の拘束で悪霊たちは身動きが取れなくなり、締め付けられ時間を掛ければ倒せそうだが、三体の上位悪霊は白蛇を手に持っている刀を振り回し、無理やり体の戒めを解こうと足掻いている。


「主よ、力を貸そう」


 遅いよ。と文句のひとつも言いたいところだけど、ヘソを曲げられても困るから黙って力を借りる。


 神と崇められていた自然霊、于児ユイヤルが女の子から妖刀に姿を変えると、自分の手にピタリと収まり、お世辞にも綺麗ではないだろう不格好なフォームで真横に振り抜く。


 でもそれで十分。

 妖刀で斬りつけられた上位悪霊は一太刀で、深い傷を負い、傷口から大量の黒い煙を噴き上げ、倒れ霧散していった。


「そうだ! 小虎さんがッ」


 林姉妹に奥に本部の助っ人がひとり奥に言ったことを告げ、妖刀を持ったまま奥に駆け出した。






 

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