第四十二話【黒面(後半)】
「よし、さっそく向こうに行って力をみせてくれッ!」
「主、そなたが行くのじゃ」
「へ?」
于児にGOサインを出すと、何を言ってるの? という顔をされた。
え、違うの?
でも、すぐにわかった。
于児が女の子の姿を崩し、刀に変わる。
妖刀……、言葉でしか聞いたことないが、妖刀とはおそらくこの目の前に浮かんでいる刀のようなものを指すのだろう。
柄を握ると黒い粒の様なものが腕に巻き付いてきて、傍からみると腕と剣が一心同体になったようにみえる。
仙木剣は左手に持ち替えたので、両手で剣を握っている形となる。。
黒い魔物の拳が飛んできたので、シュっと妖刀を振るうと目の前で何の感触も無く、魔物の腕を斬り飛ばした。
一度、仙木剣の方で牽制を入れて、妖刀で袈裟切りで倒した。
すぐに音無さんの方に向かおうとすると、「私は大丈夫だから」とこちらを見ていないのに音無さんが自分に伝えてきた。
なので、すぐに向きを変え、身体中、すり傷を負っている順宋さんのところに向かい、先ほど同じく一刀のもと、斬り捨てた。
状況が好転した。
寿姉と用高さんは大丈夫そうなので、前の方で防戦一方の舜歌のところに駆け出す。
すでにマロちゃんが三体片付けていて、残りの三体を倒すのを手伝う。
うしろで気合の入った声が聞こえたので、少し下がって振り返る。
音無さん。
黒い魔物二体を相手に自分の力だけで戦っている。
才能は一級品。
それでもなお、自分の殻を破ろうとしている。
なぜ、こうも必死になれるの?
音無さんって別に祓魔の仕事を続ける訳ではないんでしょ?
あの月城一夜のような危ない人に襲われても大丈夫なように自衛のために腕を磨いてるんだよね。
「アァァァッ!」
鋭く切れるような声を発して、空間を歪ませ黒い魔物の腕、肩と順、最後に頭部に吹き飛ばして、黒い影を一体倒した。
しかし、一瞬膝が折れ、黒い魔物の拳が音無さんの顔面を襲おうとする。
「──〝透火〟」
透明な炎が黒い魔物の体の内部から発火し、その熱気で空気がゆらゆらと揺らめいている。
スゴイ、本当にひとりで黒い魔物を倒した。
見ると用高さんと寿姉も相対していた魔物を倒した。
「朔~ッ後ろばかり見てると危ないよ~」
一体がいつの間にか自分の傍まできて拳を振り上げていたが、マロちゃんの風の刃で事無きを得る。
残りの一体を自分が于児の妖刀で斬り捨てると、残りはあの黒面のみ。
あれからずっと劉さんがアカハチで攻撃を加え続けているが、果たしてどれほどの効果があるのか……。
「虎牢、朔に向かって投げて」
「……ふうっ仕方ない、ホラっやるよ」
ホラっ、じゃないよ。なんで自分に向かって化け物を投げるのぉぉぉぉ?
舜歌に下の名前で呼び捨てにされた劉さんは溜息をついて、アカハチを操作し黒面の頭をガシっと鷲掴みして、自分に向かって放り投げた。
「朔~ッ強化かけるよ~、“膂力強化”」
舜歌が符札に文字を書き、自分の背中に貼り付けた。
……溢れるほどの力が漲ってくる。
今なら、大きな岩でも斬れそうな気がする。
投げ飛ばされ、こちらに落ちてくる黒面に妖刀を上段に構えて、待ち受ける。
「……斬りぃぃッ!!」
アカハチで何度、拳を叩きつけてもグニャグニャと衝撃を逃がしていた体に初めてダメージが入る。
真っ二つに斬れた。
でも油断はできない。
いやー、シリアスな展開なのに、テンパってしまい、技名みたいのを言えたら良かったけど思いつかなくて「……斬りぃぃッ」って言っちゃった。めちゃハズイ///ってこんなすごくムダなことに意識を割いてたらダメだろ自分っ!
二つに斬ることはできたが、これほどの上位の魔物。これで済むとは思えない。
今まさに手に持っている妖刀は戦った時、斬っても斬ってもケロリと元の姿に復元していた。
そんな予想を立てていたが、さらに斜め上を行かれた。
二つになった黒面はお面こそ半分に割れているが、体はゾワゾワと生えてきて二体に分裂した形をとる。
「朔の姉ちゃん、用高、仮面を狙って」
舜歌の指示に頷き、寿姉は更に真横に大鎌で斬り、用高さんは大型フライパンで思い切り叩き、ノックバックして自分のところに頭が伸びてきたところを妖刀をもう一度、振り下ろした。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
黒面は大きな断末魔を上げ、特大の浄痕を残し、爆発するように拡散してゆっくり上空へと黒い粒子が昇っていく。
「それで、アンタ達はどうするの?」
舜歌が隙をみせずに残りの二体に明るく問いかける。
だが、今の黒面との戦いで正直全員、疲労の極致にあり、舜歌以外はまともに戦うことも困難だろう。
「ワレワレハ……ニンゲント……争ソウツモリハナイ」
「出テイケ……ト言ワレレバ……出テイク」
白面の魔物がゆっくりと答え、赤面の魔物もそれに続く。
「そうなんだ~。よかった♪」
「アンタ達はここにいられない。でも出ていくのも結構大変だよね?」
「タシカニ……ソウダガ?」
「じゃあ、従魔契約しよっか、私たちと。そしたらココから出られるし、道に迷わないよ?」
「……イイダロウ」
舜歌は交渉して同意を得ると、今度は劉さんを説得する。
「だって虎牢、仲間にしようね、あっ“仲魔„か、なんちゃって」
「舜歌ちゃん、相手は八重山でも持て余す化け物だけど、いいのかい?」
「いいよ~、もし裏切ったらオジーがシバくから」
「ふぅ~~っ、わかったよ舜歌ちゃん君には敵わないよ……ござるっ」
劉さん、因縁の相手だけあってか、少し粘るが舜歌に説得される形で話がついた。
って最後になぜ「ござる」をつけた自分のキャラを思い出した?
舜歌は今度は自分達のところに顔を向けた。
「それじゃあ、小春~ッおいで~」
──え?




