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宴もたけなわ、
従業員さんたちのてきぱきお給仕っぷり、流石の老舗旅館です。
女将さん自らの甲斐甲斐しいお世話にも甘えまくりのシジマ家一同、
それぞれにやりたい放題の好き放題。
ツェリアさんは、北方料理に夢中。
一品一品、確かめるように味わいながら、
時々、女将さんに質問したり感想を述べたり。
嬉しそうで何よりです。
チミコさんも、北方料理に夢中。
例の縮小魔導具『うめしそ』の使い方を従業員のお嬢さんにレクチャーしたら、
後はもう、野獣の如く食べまくり。
……ほう、あの従業員さん、お若いのになかなかのやり手ですよ。
チミコさんの凄まじいハイペースにも余裕を持って対応、
オススメ料理の解説や、お気に入り料理のおかわりを先んじて用意する心配り。
流石は老舗旅館の従業員さん、あの若さでもタダモノではないのです。
モルガナさんは、マイペースで楽しんでおられる模様。
お料理をお上品に食されたり、女将さんと談笑したり。
でもアレって見る人が見れば、
所作の美しさなどから良いとこのお嬢さんってバレちゃうよね。
そういえばモルガナさんって、
出自などの個人情報を完全ガードするため、
年中無休の『隠厳』ローブ姿が通常モード。
それゆえ、あの怪しげなローブ姿自体が、
謎の"導き手"のトレードマークになっちゃってるわけで。
このお宿で"導き手"と即バレしたのも、
昔からあの格好が全然変わっていなかったからですし。
つまり、モルガナさんとしての個人情報に周囲の目を向けさせないため、
あえてあのローブ姿で目立つようにしてるってことなのかも。
俺も、いくら地味顔の平凡野郎とはいえ、あまり旅先で悪目立ちし過ぎると、
この地味顔そのものがアイコンとなって、
どこへ行っても指名手配ちっくに特定されまくるかも……
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チミコさんが食い倒れ状態になったので、そろそろお開きの時間。
今日はいつも以上に頑張っていたようですが……
あらら、めっちゃ良い笑顔でひっくり返ってますね。
確かに、評判の煮込み料理はもちろん美味しかったのですが、
どのお料理も、味付け・盛り付け・おもてなしの全てが絶品。
これぞまさしく老舗の味わい、でした。
でも、これで北方料理を味わい尽くした、
などという思い込みは流石に早計。
何故なら今日の絶品北方料理の数々は、
このお宿ならではのブーストが効いてる状態ゆえの高評価。
明日からのニーケの街の食べ歩きで、
北方料理の更なる懐の深さを是非とも確認せねばなるまい、なのです。