08
モルガナさんが以前この宿を訪れたのは、
今の女将さんの祖母さんが女将さんしていた頃。
つまりは、遥か大昔。
「いや、そこまで大昔ってほどじゃないし」
まあ確かに、赤ちゃんの頃に一度会ったきりの人とは、
面識があるとは言い難いかも。
「しっかりと覚えられていたけどね」
マジすか、赤ちゃんスゲェ!
「いやいや、記憶じゃなくて、宿帳の記録で」
どうやら、以前の宿泊の際にモルガナさんが何ごとかやらかした模様。
で、ブラックリストに記載されていた、と。
「失敬な」
「"導き手"として覚えてもらっていたってこと」
当時の女将さんや従業員さんたちに"導き"して、
経営相談やら恋愛相談やらのお悩み解決しまくったモルガナさん。
本人もあずかり知らぬところで、
この宿での永世VIP待遇となっていたようです。
何と言いますか、長命種族って、いろいろとお得だよね。
「一応、この待遇は家族全員ってことらしいので、私に感謝しながらゆったりくつろぐがよい」
もしかして、宿泊費とかの諸々全部が……
「うん、生涯特別待遇ってことで、完全無料」
……ウヒャッホーイ!
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ふぃー、温泉、最高……
何とこの宿、全室に温泉完備。
俺たちが泊まる離れにも、家族でゆったりくつろげる露天風呂が。
ってことで、まったりと温泉堪能中。
広さも風情も湯加減も、マジ申し分無し。
残念ながら乙女部隊は先に済ませちゃいましたけどね。
おひとりさまでのんびり贅沢時間、
それもまた良し……
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お風呂上がり、
お部屋のテーブルには、
すでに北方料理が全力満開スタンバイ状態。
あー、あのちっちゃな七輪みたいなコンロ、
こっちの世界にもちゃんとあるんだ。
もちろん魔導コンロですね。
『もー、早く!』
うわっ、チミコさんが飢えた獣のまなざし。
お待たせしちゃってごめんね。
それでは、
「いただきます!」×4