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ニーケの街に到着。
説明は難しいけど、伝統と若々しさが混在しながらも秩序ある街、かな。
ちょっとだけ、ジオーネっぽい雰囲気もあるかも。
「ニーケの街、っていうかアレノマ王国自体が、北方魔導諸国から集まって来た人たちによって興された国」
「エルサニアとクルゼスが共同管理して、各地のやり手商人たちが集まって栄えたジオーネと、成り立ちがちょっとだけ似ているね」
なるほど、でも明らかな違いもありますよね。
「そうだね、よそ者への待遇の違い、かな」
「全てを飲み込む貪欲さがジオーネの活気の源」
「だから、目新しいモノや文化を持ち込んでくれるよそ者はウェルカム」
「ニーケは、その辺は真逆」
「よそ者、っていうか旅人は、あくまでお客様」
「北方魔導諸国の玄関口として物資や人の往来は歓迎するけど、文化的侵略は絶対に許さないって感じ」
まあ、そういう違いがあるからこそ、旅が面白いわけで。
さて、本格的に街を散策する前に、まずは宿を決めちゃいましょうか。
モルガナさんオススメの宿、早速行ってみましょ。
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広大な敷地に佇む平屋の立派な建物。
なんと言いますか、これぞ老舗旅館って感じ。
予約無しで部屋を取れたことに感謝。
はて、フロントでモルガナさんと女将さんが、何やら話し込んでおります。
昔からの定宿だそうですし、何か特別サービスでもあるのかも。
「皆様、こちらへ」
女将さんに案内されたのは、
宿の奥の方にある、ちょっと離れっぽい独立したお部屋。
お忍びのお偉いさん御用達の、VIPルーム的な隠れ家だそうですよ。
「それでは、ごゆっくり」
施設についてのひと通りの説明と、
ニーケについての簡単な案内を済ませた女将さんが退室。
ふむ、俺よりかなり歳上ですが、実に素敵な方でしたね。
上手な年齢の重ねかたのお手本とでも言うのでしょうか。
その物腰を彩る、きりりとふわりの危なげないバランスの妙、
それでいて滲み出る、隠しきれないおちゃめ感も絶妙。
何と言いますか、生来の豊富な魅力エネルギーが溢れ出してくるのを、
老舗女将としてのプライドでキリッと押さえ込んでるって感じ。
子供の頃はやんちゃな元気っ子、
老舗旅館の跡取り娘としての教育で磨かれて立派な若女将に。
成長するにつれて老舗女将としての自覚も増して、
今ではすっかり名物ベテラン女将。
でも時々、隠しきれないやんちゃ成分が滲み出てくるのをお見逃しなく、
みたいな?
『妄想、乙!』
「まあ、やんちゃはともかく、元気な赤ちゃんだったよ」
赤ちゃん……