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いつの間にか、俺の隣にはジュリヲさんが。
やはり、ハンパ無い『転送』使いでしたね。
誰も戦闘モードにならないのは、あっけに取られているわけではなく、
ジュリヲさんから敵意も悪意も全く感じられないから、かな。
「まずは、『偽装』を解除しますね」
目の前に居るのに存在があやふやだったジュリヲさんが、
徐々に変化していきます。
ピントが合うような、ベールが剥がれるような……
……えーと、普通の男の子ですね、俺よりちょい歳下くらいの。
「シジマさんのご家族の皆さんとは、初めまして、ですね」
「『ゼロノウン』リーダーの、ジュリヲです」
「出来れば、僕の告白を聞いてほしいです」
慌ててスッ飛んできたミュンシェラさんも交えて、
みんなでお話しを伺いました。
以下は、ジュリヲさんの告白、の要約。
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戦争当時のエルサニア王国は、今と違って優しい国ではなかった。
せっかく召喚した勇者候補でも、
即戦力にならないようならすぐに切り捨てるほどに。
ジュリヲさんの固有スキルは『ブランク』
確かに『鑑定』だけで見れば、"何も無い"固有スキルに見えたのかも。
当時の召喚担当者は、スキル無しのハズレを召喚してしまったと勘違いして、
召喚したその日のうちに、ジュリヲさんをお城から放逐したそうです。
"低職処分"でしたっけ、わずかばかりのお金と生活雑貨だけ渡して、
勇者不適合と判定された人たちを追い出す制度。
何も知らない異世界に突然放り出されたジュリヲさんを救ったのは、
役立たず判定の元となった固有スキル『ブランク』でした。
『ブランク』:スキルなどの"能力"、記憶や知識などの"情報"を任意で奪い、
ノーリスクで自在に使いこなすことが出来る。
奪われた本人への返却だけではなく、第三者への譲渡も可能。
争いごとが嫌いなジュリヲさん、
覚悟を決めて、この異世界でひっそり暮らそうとしていたのに、
悪意を持って接触してくる連中との揉めごとが後を立たず、
やむを得ず奪った強力なスキルや表裏問わずの様々な情報も増える一方。
いつしか、同じような境遇の脱落召喚者たちから頼られるようになって、
肩を寄せ合った集まりは、やがて秘された集落となり、
エルサニアに仕返ししようぜっていう気運も徐々に高まっていき、
いつの間にか組織のリーダーに祭り上げられ、言われるがままに組織を拡大。
ただ、組織がデカくなればなるほど、その全てには目が行き届かなくなる。
元々荒事は好きではないジュリヲさんと武闘派な幹部連中との溝も深まり、
打倒エルサニアで集まった集落のみんなは、
武闘派の意見にばかり耳を傾けるようになって。
結局、リーダー更迭騒動の果て、組織の全員を『ブランク』する羽目に。
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「確かに最初は、召喚されたことへの不満を持った召喚者を募ってエルサニア王国に報復するつもりでした」
「アレノマ王国の人里離れた場所に結界を張った集落を用意して同志のみんなと暮らしていましたが、組織が大きくなるにつれて、むやみに過激な行動に出る者や自暴自棄になって無関係な人たちにまで害を及ぼす者が増えて」
「リーダーとしての僕が指導力不足だったのは理解していますが、エルサニアへの実力行使を焦った人たちが組織を乗っ取ろうとして、結局は集落のみんなもその過激な意見しか聞かなくなって」
「組織と縁を切ってひとりで逃げようかとも考えたのですが、このままだとエルサニアとの全面抗争で取り返しがつかなくなるかもって、やむなく僕の能力で全員の無力化を……」
無力化、ですか。
「僕の固有スキルは『ブランク』」
「『ブランク』自体は空っぽですが、相手の能力や記憶・感情を吸い取ることが出来ます」
「今は、組織のみんなの危ない能力や危険思想を奪っている状態なので、集落の方はとても穏やかです」
……それで、ジュリヲさんの望みは?
「これまで組織としてやらかしてきたことの罪は、全て僕が背負います」
「それで、これから組織のみんなが穏やかに暮らせるよう、エルサニアと交渉したいのです」
「これだけの事をしでかしておいて、虫の良い話しだとは思いますが……」
これは既に、シジマ家の手を離れた案件、かな。
エルサニア王国と組織のリーダーのジュリヲさんとで、
時間をかけて解決すべきですよね。
ただ、アレノマ王国に勝手に集落を作っちゃったようですし、
そっちも早く何とかしないと。




