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組織の名称は『ゼロノウン』
エルサニア王国から脱走した召喚者たちによる、
反エルサニア系武闘派組織。
その構成員は、戦争で勇者として活躍させるために呼ばれた召喚者たち。
召喚時に特別な固有スキルを授かっただけではなく、
戦闘訓練をがっつり受けていたり、実際の戦場経験者だったり、
つまりは、相当なツワモノ揃い。
巡回司法省としては『ゼロノウン』をかなり危険視している模様。
召喚者特有の何でもありな固有スキルと、あっちの世界の様々な知識。
それを犯罪に使われたら厄介どころではないのです。
でも……組織の構成員は召喚されたことを恨んでいる連中ばかりだそうだけど、
ジュリヲさんに限っては、そんな危ない人には見えなかったけどな。
あの隠蔽能力のせいで、俺には何も認識出来なかっただけかもしれませんが。
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ミュンシェラさんの態度は、終始真剣そのもの。
「あの組織とは何度か対峙しましたが、かなり危険な連中です」
「活動開始当初は、在野召喚者の勧誘や拉致」
「組織の構成が固まってからは、実力を押し測るかのような散発的なテロ活動」
「最近は、その力を蓄えるかのごとく活動を控えています」
「こうして外部の人間に接触してきたのは久しぶりですし、そもそも極めて珍しいのですが……」
俺、がっつり目を付けられちゃったってことですかね。
これってもしかして、俺が冒険者として『アンノウン』クラス認定されたのが、
世間に周知されたからかも……
「シジマさんはタリシュネイアに現れた時から、すでに各方面の注目の的でした」
「その後の放浪生活での行動が特異性を決定付けたようですが」
「ルーリシェラさんたちの広報活動が無ければ、収拾がつかない事態となっていたと思います」
「『アンノウン』クラスという肩書きが、かなりの抑止力となっているのですよ」
……ありがとうございます。
ルーリシェラさんたちにも、よろしくお伝えください。
それで今後についてですが、俺のポジションは、
"『ゼロノウン』の連中を誘き出すためのおとり"、で合ってます?
「……巡回司法省は、全力でシジマさんご家族をお守りします」
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ミュンシェラさんと別れたシジマ家一同ですが、
何だか空気が重いです。
「迷ってるの?」
……鋭いですね、モルガナさん。
モヤモヤが、どうしても晴れません。
もし俺が正規ルートの召喚者だったら、
今頃この世界でどんな暮らししてたんだろう、とか。
『ゼロノウン』はかなりヤバい犯罪組織だってのは聞いたけど、
ジュリヲさんが根っからの悪人とはどうしても思えない、とか。
「シジマさんの"直感"が、私たち家族を結びつけてくれたのですよ」
「私は、何があろうと信じます」
……ありがとうございます、ツェリアさん。
『いつも通り、全力でヤッちゃうのみっ』
『もちろん、ナニをヤるのかはシジマさんに丸投げ!』
全力は結構ですが、さっきみたいに突貫するのは絶対禁止。
あの状況で"お胸シェルター"しないなんて、チミコさんらしくないですよ。
「野盗や魔物とは違って、今回は組織として訓練された召喚者たちが相手」
「正直、今のままでは戦力不足だと思う」
「シジマさんの本当の強さは未知数だけど、そもそも荒事とかは苦手でしょ」
「私も、逃げ隠れするのは大得意だけど、それ以外ではあまり当てにならないし」
「やっぱり"助っ人"を、お願いするべき」
助っ人ですか……
モルガナさん経由ということは、ロイさんのお仲間ですよね。
いつもこんな風に迷惑掛けてばかりで、何だか申し訳ないです……
「実は前々から、シジマ家の旅に是非同行させてほしいっていう連絡が来ていた」
「それも、最強の助っ人になりそうな人からの」
……おっと。




