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 チミコさんが、かつてないほどの勢いで突撃した路地裏には、


 冒険者服姿の小柄な女性がひとり。


 そして案の定、見事に捕縛されたチミコさん……



『痛恨のミス!』



 いや、当然の成り行きというか自業自得というか。




 ---




「巡回司法省特務司法官のミュンシェラです」

「シジマさんご家族を陰ながら護衛する任務だったのですが……」


 あー、申し訳ないです。


 うちの子が我慢出来なかったようで。



「私の隠密、不充分でしたか」


 いえ、見事でしたよ。


 ただ、最近いろいろありまして、


 うちの家族はその手の行為にはかなり過敏になっているのです。


 約1名、めっちゃ無神経でしたが。



『終わり良ければ全てヨシッ!』


 ちょっとチミコさんっ、


 まだ何も終わってませんよ。


 ミュンシェラさんに"ごめんなさい"してないよね。



『ヨシッ、腕を上げたな!』



 ……そのままお持ち帰りされて、巡回司法省で鍛え直してもらってきなさい。




 ---




 近くにあった小さなお茶屋さんで、


 今回の件についての話し合い。



 ミュンシェラさんは特務司法官。


 巡回司法省外勤の旦那さんと、ご夫婦で旅をしながら各地で司法官活動。


 今回たまたまニーケの近くに居たことで、この件の担当に。




「シジマさんと接触したジュリヲと名乗った召喚者は、強力な記憶阻害能力を行使していたのですね」


 そうですね、面と向かっていた時は全く違和感無かったのですが、


 後から人相とか聞かれても全く分からないって感じです。


 偽名の可能性もありますが、召喚元のエルサニアに問い合わせてみては。



「すでに照会中ですが、エルサニア公式の召喚者名簿は残念ながら当てにならないと思います」

「実は以前から、公式召喚記録の原本・コピーの全てが、何らかの干渉によって情報を操作されていたようなのです」


 原本って、エルサニア王城内で厳重に管理されているような重要情報ですよね。


 つまり、良からぬことを企んで、データを書き換えた何者かが王城内に……



「いいえ、エルサニアの内部監査でも、巡回司法省の詳細調査でも、不心得者は見つかりませんでした」

「それらの調査で判明したのは、過去にエルサニア軍に在籍していた勇者候補の中に、その手の情報操作に長けた者が居たということ」

「原本情報が歪められている現状では、その者の情報を得る手段は当時接触したことのある教官や同僚たちの記憶のみ」

「それによると該当者は、戦争終結後にエルサニアを脱走して、それ以降の足取りも全く不明」


 つまりは、勇者くずれの怪しい腕利き召喚者が野放し……



「……実は今回のシジマさんの件は、巡回司法省が以前から追い続けていた、ある組織が関与している可能性が非常に高いのです」



 何だか大ごとになってきましたよ……



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