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長風呂しちゃって、少しのぼせ気味でぼんやりしてたけど、
俺、確かにお風呂場でジュリヲさんに会ったよな……
フロントの側にある休憩場で、じっくり考えてみる。
可能性①:不法侵入系不審者。
このお宿のセキュリティはかなりのモノだけど、
ジュリヲさんが凄腕『転送』使いなら、おそらく侵入は可能。
宿帳とかに記録を残されたくないとか、
宿の人に顔を覚えられたくないとかの、
宿泊せずにお風呂のみが目当ての不法侵入だったのかも。
だってこの宿の温泉、本当に最高ですし。
可能性②:スピリチュアル系不審者。
幽霊とか、生き霊とか、そっち系の可能性。
ここの温泉にどうしても未練があったとか、
俺に未練があったとか……
……怖っ。
でもまあ、一緒にお風呂した間柄ですし、
確実に実体だったのは、お風呂での裸の付き合いで確認済み。
身体の洗いっことかしちゃったし。
もちろん、初対面であることも間違いない……
あれ?
ジュリヲさんのお顔、どうしても思い出せない……
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部屋に戻って、みんなに相談。
誰も心当たりは無いそうです。
「顔とか、体格とか、全然思い出せない?」
本当に思い出せないのです。
モルガナさんのそのローブに匹敵するレベルの『隠蔽』能力持ちだったのかも。
「まあ、一番無防備な入浴中に手出ししてこなかったのだから、今は敵ではない、と思う」
……顔とかは全く思い出せないけど、
話してる時の感じでは、決して悪い人ではなかったな、と。
「世の中には、全く悪意を見せずに笑いながら非道を為す真の悪党もおります」
「どんな時でも、どんな相手でも、油断禁物ですよ」
ツェリアさんのおっしゃる通りです。
でも、お風呂くらいはのんびりさせてほしいのです。
「遠慮しないで、みんなと一緒にお風呂すれば良いのに」
「私が来る前は、ずっとそうしてたんだよね」
でも、それをやっちゃうとモルガナさんだけ……
「私は元々、お風呂しないで『洗浄』魔法ばかりだから」
「それに、入浴くらいで気にしすぎ」
「別に、お風呂場で変なことしてるわけでもない……」
……おっと
「……してたんだ」
「なんか、ごめん」
いえいえ、お気になさらず。
えーと、とりあえずこの件は保留ってことで。
何か用があるなら、また向こうからアプローチしてくるでしょうし。
女性陣も気を付けてくださいね、お風呂以外でも。
『これじゃ落ち着いてお風呂でお昼寝も出来ないよ』
寝ちゃアカンって……




