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裏ルートの攻略後、悪役聖女は絶望したようです。  作者: 濃姫
第三章 思惑(しわく)は交わる
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閑話 門番だった男

・ 【門番(モブ)視点】です。

 違法カジノの門番。それは男にとって一種の誇りでもあった。


 スラム街で強奪を繰り返し生きてきたゴミのような人生で、ようやく救われた職。給料はさながら、力が立つという象徴でもあったため商売女にもよく声をかけられる。自分の人生の最高潮がここだとさえ思っていた。


 そう、()()()までは…。


 突然わき起こった火は瞬く間に会場を包み、騒ぎの間に金目のモノをくすねようとしたその時後ろから鈍器のようなもので強烈に殴打され意識を失った。


 目が覚めた時には既に手足を縛られ、口には口枷くちかせが付けられていた。地下であることは察しがついたが、異様なのは周囲の厳重な警備だった。


 数人が交代で俺が逃げられないよう一時ひとときも目を離さず、胃に穴が開きそうなほど監視された。


 一体どういうことなのか、困惑が頭をめていたとき、誰かがこの地下までりる足音とともに今まで俺を監視していた連中が一斉にこうべれる。


 一瞬にして分かった。その足音の主こそ俺を此処にさらった親玉だと。生憎あいにく職業柄憎まれることも多ければプライベートでも刃傷沙汰にんじょうざたが耐えなかったからか動機どうきや誰が犯人なのかはまだ検討がつかない。


 じっとそいつが姿を現すのを待つ。しかし現れたのは、予想とはまるで異なるガキだった。


 何の冗談かと思ったが、他の奴らの反応を見る限り主であることに変わりはないのだろう。いや、正確には主のガキか。


 ガキは俺の口枷を解くように命令し、口枷がなくなったことでようやくよだれを流す必要がなくなった俺はこのガキをまだまだ甘ったれたガキだと確信づいた。


 本来相手の自由を少しでも奪う口枷を外す命令を簡単に出し、親の力で何でも出来てきたせいで本物の暴力というものを知らない乳臭ちちくさい頭の悪いガキ。


 「おいガキ、殺されたくねぇうちに今すぐこれを外せ。お前もぶん殴られたくねぇだろ」


 こいつは簡単だ。ガキなら少し脅せば言う通りになる、そんな考えでドスの効いた声を聞かせた。大体これで大半のガキは怯え泣く。


 このガキは一体どんな風に腰を抜かすのか、心の内でそう嘲笑っていると返ってきたのは一切の躊躇ちゅうちょのない顔面への足蹴あしげりだった。


 「ゴヘッぇ゛ッ…ツ゛!?‼!」と潰れたアヒルのような声で吹っ飛んだが、その威力いりょくは決して子どものものではない。大人でもここまでの力は出せない。


 今の足蹴りで歯が何本か抜け、口から血がダクダクと流れる。意識が混濁こんだくする中、髪をぐしゃりと鷲掴わしづかみにされ更に何発かモロに入れられる。


 そんなことをされたものだから当然顔はパンパンにれ上がり、歯は数えるほどしか残っておらず、視力も片方は確実に喪失そうしつしていた。


 何故自分はこんな化け物相手に脅せるなどと馬鹿げたことを思ってしまったのだろうか。今では後悔先に立たずだが、ひたすらに殴り続けられる限りそう思わずにはいられない。


 しかしその殴られ続ける事自体まだ易しい方だったと知るには、あまりに受け入れがたい現実で俺の頭は許容しきれなかった。


 化け物はある程度殴打や蹴りに満足すると、次はおもむろに部下にトンカチを持ってこさせた。嫌な予感が俺の脳に伝わる前に、どちゅ…っ、と『何か』が潰れる音とともににぶい痛みが脳を焼き尽くした。


 「イぎゃっ゛ァあ嗚呼゛ァァア゛⁉!?‼!」

 「五月蝿うるせぇなぁ…」


 喉がかすれる程出した絶叫も一蹴いっしゅうされ、さらにもう一本の指が潰される。


 「いgyぁぁぁsぁx『ドチュ…ッ』」

 「gyァァあっっ嗚呼『どちゅ…ッ』」

 「あgyぁ゛、ァギャギャギャギャgy」

 

 最終的に全ての指を潰されるまでその地獄を続き、喉も潰れ痛みで脳がイカれてしまった。


 叫んでいるのかわらっているのか分からない音を出し、それが気に触ったのかみぞおちに破裂しそうな程の蹴りを入れられ盛大に吐いてしまった。


 「おぉ゛ぇえぇぇ゛ッツ゛、ゥ゙ぉぇあっっぇえぇ゛、『ゴッ…』ごえッ⁉!!?」


 自分が吐き散らかした汚物に頭を抑えられ、異臭にさらに吐き気をもよおす。その後はもう想像すらしたくない地獄の連続だった。


 両腕両足を魔法で切断され、切断面を火であぶられ中途半端な止血をされた内蔵をえぐり出され、まだ繋がったままのはらわたを食べさせられる。


 全て食べきれなかったからとあご素手すでで外され、あらわになった口から虫を大量に詰め込まれ、死なないギリギリで全ての生き地獄を味あわされたのだ。


 最期はまともな精神状態を失った俺の腹に虫を入れ内側から食べられる感触と音が失神死まで持っていった。これならば単純に焼死しょうしした方がまだマシだったと、人間としての形を保って死にたかったと思う。


 ダルマの状態で、顎をなくし、汚物にまみれ、はらわたが飛び出だまま死ぬとは、想像もしていなかったのだから…。


 こうして小悪党こあくとうだった男は運の悪さが募り、最も目をつけられてはいけない人間、いや、吸血鬼の目に止まりこの世から去った。


 なお一連の始終しじゅうを見ていた手下からの圧倒的恐怖と絶対的忠誠が跳ね上がったことは言うまでもないだろう…。


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