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裏ルートの攻略後、悪役聖女は絶望したようです。  作者: 濃姫
第五章 新たな生
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専属の侍女

  …そう言えばあの龍の卵はどうなったんだろう?


 おじさんにジェスチャーで伝えてみるとすぐに察してくれたのか枕の隣を指差した。

 そこには先日おじさんからプレゼントされた正真正銘()()()が無防備にも置いてあった。


 というかちょっと綺麗になってない? 

 前見た時は確かにくすんだ灰色みたいな色をしてたのに、今は少し輝きを取り戻していると言うか…。

 実際に持ってみるとその違いが明らかで何なら大きさも変わってる気がする。


 おじさんに卵を見せて???と訳を聞くとなんとこの卵本当に生き返ったらしい。

 生き返った(?)と言うよりは一時的な仮死状態からの孵化できる段階になったって感じだけどどうやら触っただけでも私の神力と魔力を吸収してしまったようだ。


 それで気に入ってしまったのか倒れても私の傍から離れず吸収し続けたらしい。途中おじさんが引き離そうとしたらしいけど卵のくせに意志が固すぎて絶対に離れなかったんだとか。


 おじさんから伝わる並々ならぬ卵への苛立ちが分かる分ちょっと笑ってしまう。

 だってあのクールで無愛想だったおじさんがこんな小さな卵と格闘してるだなんて想像しただけでもおかしいんだもん。


 でも私にこれといった大きな被害はないしむしろ量が膨大過ぎて吸収するスピードの方が負けたんだそう。 流石謎のチート設定。


 オルカ達とずっと一緒にいたせいか感覚バグるけど私って結構強かったんだよね。

 攻撃魔法とか神術を教えられなかっただけに治癒と支援に関してだけはたぶん誰よりも極めてると思う。詠唱とかなしで展開できるしその代償もないしね。


 普通に考えれば羨望されるような才能なんだろうけど、なんでかな〜…。

 自分より上の存在を見過ぎて変に自信を無くしていると言うか謙遜していると言うか。まぁ自分で言っちゃうのもなんだけど。


 それでとりあえず龍の卵を私が引き続き育てることに決めた。一定間隔で神力と魔力を送らなきゃいけないから結構力の操作技術が鍛え上げれるんだよね。


 前に試しで一気に莫大な神力と魔力の合成を送ってみたら卵なのに上に飛び跳ねてそのまま三日ぐらい元気なかったから流石私も反省した。


 おじさんから竜の卵は孵化する前に神力を送れば神竜に、魔力を送れば魔竜になるって言っていた。

 竜の卵を人間の手で育て上げること自体伝説上のことなのに、それが二つの力を併せ持つ得意体質の持ち主である確率なんて天文学的な確率だろう。


 そんな中で産まれるであろうこの愛しい竜に思いを馳せながら、今日もベッドに丸まって大事に卵を抱えては眠りにつく。


 伝記を見る限り神竜と魔竜でだいぶ見た目が変わるからサラブレッドで産まれる姿が楽しみだ。

 確か、この卵は孵化できなくて親竜に捨てられたんだよね。そういう意味ではある意味似たもの同士なのかもしれない。


 ねぇ、私もね、捨てられたんだよ。幼い頃の記憶は曖昧であまり前世の自我がなかったからぼんやりとしか思い出せないけど、吹雪が荒れ降る中孤児院の前で捨てられた記憶がある。


 まだ赤ん坊で、泣くことしかできなかったけど。私もやっぱりその人のことを家族だと思ってたのかな…?


 大体さ、異世界転生して孤児でひもじい思いを送って大人になったり本物の出自が明かされて一気にお金持ちになるなんて現実じゃあり得ないよ。


 庶子は一生庶子のまま、私生児として生涯を終えるし例え実子であっても孤児院なんかに送らずせいぜい分家で育てさせる程度じゃない。


 孤児院に来る子どもなんて皆水商売の子か戦争孤児ぐらいだし、ましてや温かい家族なんてない。支給される食事の量は決まってるから皆敵ぐらいの感覚で今日を乗り越えるために生きてる。


 あ、でもヒロインは孤児院にいたんだっけ。う〜ん、あれはまぁ主人公だしな〜…。

 やっぱりこの世に絶対なんてないらしい。見事に人生大逆転した人が身近にいたし、彼女を導いたのは紛れもなく私だ。


 あぁあ、こんなことになるなら別に助けなくても良かったや。おじさんの本当の娘なんて邪魔になるだけだし、変に関心を持たれるのも嫌だ。


 【原作】のおじさんとの関係を想像してしまったせいでムスッ…とジェラシーが浮かんだが、それに呼応してブオンッ…と卵を波動を出した。


 なんだか私の代わりに怒ってくれているようだ。もう既に共鳴を果たし一体と化してきている成果か、私の心をより色濃く感じ取っている気がする。


 可愛い卵の反応にくすくすっと笑い優しく撫でてあげれば嬉しそうに小さな波動を小刻みに飛ばす。

 こんな健気な姿形にまだ育てて三日も経っていないというのに情が移ったのかほだされてしまったみたいだ。


 きっと、元気で産まれてきてね。そして誰にも負けない力で…、私を守って。私の可愛い小さな味方さん。

 


 








 ######


 おじさんとの忙しなくもゆったりとした引き籠もり生活が続いたある日のこと。それは突然、順調に育っている竜の卵を愛でていたときだった。


 「アルティナ。お前に専属の侍女がいるんだが、紹介してもいいか?」

 

 ソファに座りそつなく仕事をこなしていたおじさんが唐突に手を止め、私を見つめてそう言い放った。

 どういった意図があるのか、少なくとも私を害するような意図じゃないことは分かっていてもおじさん以外を私のテリトリーに入れたくないと言うのが紛れもない本心だ。


 でも折角おじさんが紹介してくれる人だし…、毎回おじさんに部屋を出てご飯を持ってきてもらうのも申し訳ない。


 うぅ゛ー〜…、多少嫌でも我慢するしかないのかなぁ。卵を手に握りしめてじっ…とおじさんを見ると本当に私の意志次第っぽいし。


 無理だと思ったら言えばいっか。散々悩んだ挙げ句首を縦に振った私におじさんは少し喜んだ顔をして扉に向かって「入ってきていいぞ」と言った。


 するとすぐにキィ…と扉が開き、綺麗な顔の形をした女性が入ってきた。


 「帝国の太陽といと尊き御方にご挨拶申し上げます。ご紹介にお預かりいたしました、ユディット・アーナバルトにございます」

 

 扉から少し歩いたところで深々と頭を下げる彼女に、今のところ敵意が感じられない。…けど、やっぱりおじさん以外の人間はまだ難しいみたいだ。


 知らず知らずの内に手が震えている自分がいる。どうしよ、久々におじさん以外の人間に会ったせいか感情の高ぶりに神力がコントロールできなくなってる。


 幸い手に握っていた卵が暴れだしそうになった神力を吸収してくれたけど、そのせいで大きな負担を強いてしまった。これは明日ご機嫌取り確定かな…。


 まぁ何はともあれ一時的に高ぶった感情は収まったし、この際気の済むまで彼女を観察してみよう。


 髪は淡い桃色の編み込みまとめ髪。前髪はキッチリと長さが揃い分けられて実に綺麗だ。お辞儀をしているからかよく見える髪色と同じ睫毛がふさふさとして触れたら気持ちよさそう。 


 って、だめだめ! 私が確認したいのはそんなことじゃないでしょ⁉


 気を取り直してもう一度見てみるけど、やっぱり女性として理想的な容姿にしか目がいかなかった。


 あれ? 私って本当は変態だったっけ?と思ってしまうほどの阿呆振りに我ながら呆れるしかないや。とほほ…。


 設定的にぐだぐだですがアルティナは神力と魔力を併せ持つ特異体質の持ち主です。大陸を探しても滅多に存在せずせいぜい2、3人程の確率なので希少ですね。


 因みに竜の卵はこの時点で完全にアルティナを親と認識にしています。孵化するために必要な力を一番最初に注ぎ込んだ相手を親とするのでいっぱい力を注ぎ込んでくれるアルティナにもうメロメロですね。

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