プロローグ
初投稿です
目が覚めると、目の前には三人?の男女がいた。
一人は老獪という言葉がよく似合う爺さん。
一人は真紅の瞳を興味津々に光らせるロリ。
一人は陽気な快男児ってナリの男。
正直、こいつらに面識はないし会わなきゃいけない道理も無い。そう思っていると、爺さんが口を開いた。
「突然だが、お前さんは死んでしまった。いやぁ、ワシも悪いとは思うとるんじゃ。しかしのう…ワシらの管理する世界の均衡が危うくての。君にはワシらの使徒として亜人どもを殲滅して欲しいのじゃよ」
「出来るかしら?出来なくてはならないのですけれどね?」
爺さんの言葉に続くようにしてロリが俺に亜人の殲滅とやらを出来るか出来ないか聞いて来る。突然こんな所に連れてこられてそんな事を言われても困る。
「お前、心配そうな面してるな!大丈夫だ、安心しろ!お前にはオレたち三柱がしっかり力を授けてやるからな!そう簡単には死なないぜ!」
「…あの、俺に意思決定権は無いのでしょうか?」
俺が口を開くと、三柱は口を揃えてこう言った。
「「「無い。」」」
「あ、ハイ…そうですか」
どうやら俺はこいつらの言う事に従う運命にあるらしい。しかし…亜人を殲滅と言ったって、問題があるだろう。俺の心とか、手段とか。
「フォッフォッフォ。覚悟は決まったようじゃの!では、お前さんの望む力を与えてやろうでは無いか!」
「力、か。その前に、聞かなければいけない事があるのですが。宜しいでしょうか?」
俺がそう言うと、三柱揃って首を傾げる。息はピッタリのようだ。
「俺が今から行く世界の常識を軽くでいいので教えてほしいのですが。それを聞いてから頂く力を決めたいと思います」
「へぇ?少しは頭が回るみたいね!なら、アタシが教えてあげるわ。アンタが行く世界の名は"リュミエール"。アンタ達現代人風に言うなら、剣と魔法の世界って奴ね。」
「剣と魔法…それで?」
「リュミエールには幾つかの種族がいて、それぞれヒューマン、エルフ、ドワーフ、ビーストマンと呼ばれているわ。ちょっと前まではその均衡が保たれていたのだけれども、最近とある国家…人間だけの国、アルシオン王国が亜人連合軍、ここで言う亜人はエルフとかドワーフ、ビーストマンの事ね。それに滅ぼされちゃったのよ」
「それは大変ですね。どうにかしなくてはいけません」
「そうなの!そもそも、亜人達はアタシ達が創ってない存在。世界樹が勝手に創った種族なの。初めはアタシ達だって人間だけが争いのない世界を創るつもりだったのよ?それが、世界樹の奴が勝手に亜人を創って人間を攻撃し始めたの。ゆるせなくない?」
「あぁ、それは許せないですね。それで亜人を滅ぼすと言うのですか?」
「違うわよ!アタシ達は世界樹に言ったわ。『世界の均衡を保つならば我らは手出しをしない』と!それを破ったのよ!だから滅ぼすってわけ!」
「なるほど?契約不履行の罰という訳か。それにては重くないですか?」
「オイオイ!何言ってんだ?所詮亜人、オレたちが創った訳じゃあるまいし、そもそも人風情がオレたちの決めたルールに逆らおうなんてのがおかしいんだよ」
なるほど…コイツらは根本から人間とは価値観が違うんだな。理解した…が、納得するのには時間がかかりそうだ。まぁどうせ思考は読まれているのだろうし、精神的な反逆をしたところで生産的ではない。
「──────神様、俺が拝領する力。決まりました」
「ふぉっふぉっ、申してみるが良い」
俺が望む力──────それは
「人間限定に効くカリスマ性、超人的な生存能力、そして人を癒す術の才能を下さい。」
「なんと、そんなもので良いのか?神剣ゼウセルカリバーや神槍アマツボルグもあるぞ?」
「そうだぜ!そんな誰も殺せないような能力を選ぶなんて、どうやって亜人を滅ぼす気だ?」
「もう!ちゃんと選びなさいよ!良い?アタシ達から力を得られるのは一度きりなのよ!?慎重に選びなさい!」
三柱が必死に止めようとして来るが、俺にはこれで良い。いや、これが良い。亜人を殲滅すると聞いた時から、ずっと頭の片隅にあった方法。それは──────
差別だ。
本来、人間とは差別して生きる生き物だ。俺たちのような良識ある現代人は差別に反対するが、つい100年ほど前には平然と差別はあったのだ。というか、今でもある。非難の対象ではあるがな。
「──────なるほどのう。やはり人間は面白い事を考えるものじゃ。ワシらから見れば皆同じようなモンじゃが、人間視点だとやはり違って見えるものか。」
「そうみたいね。アースの奴がこれを黙認してるのはちょっと驚きだったわ。」
「まぁ、アイツは放任主義的な所があるからな!つーか、アースはそれを含めて人間を愛してんじゃねえか?」
「なんと!ワシらだって人間の事が大好きじゃぞ?決してアースなんぞには劣ったりせんわい!」
何やら揉めているが、恐らくアースとは俺のいた世界の神様なんだろう。やはり神は実在したな、神は死んだとか言ってた奴は反省しろ。俺の目の前で口論してるのが三柱いるからな。
「…こほん。さて、お前さんを送り出すが…見た目を変えなければならん。だが、案ずるな。ワシらが手がけた天使の肉体を使うと良い。死蔵しておくのも勿体無いしの」
「それじゃ、頑張んなさいよ!あと、寂しくなったら神殿に行く事ね。アタシ達の誰かと繋がるから、いつでもお喋りしていいわよ?」
「頑張れよ人間!いや、そうだな。オレが名前をつけてやる!お前はこれから…《アンヘル》だ!」
「あっズルい!アタシも付けたい!《ユリウス》なんてのはどう?」
「なら、ワシは《ブレスドエル》の名を送ろう」
これは有難いな。何故だか自分の名前だけ思い出せなかった所だ。これからは《アンヘル・ユリウス・ブレスドエル》と名乗る事にしよう。
俺が新たな名前に喜んでいると、俺は光に呑まれる。意識が無くなるその間際、穏やかな笑みで俺を送り出す三柱を見た。これから、頑張らなくてはな。