§1.5. エピローグ
「おっはよー、りっちゃん!」
教室で座っていると、華が後ろからのしかかるようにハグしてくる。
「おはよう、華」
「いいんちょもおはよう! ――って何してるの?」
「おはようございます、華さん。これはハンドマッサージ」
そう、志穂はさっきから私の手を取ってムニムニとマッサージしている。
呪いを祓った後、華はすぐに回復した。事情を話した志穂の謝罪を、華は何でもないように受け入れた。
「えー、いいな、私もやりたい」
やりたい? やってほしいじゃなくて?
華は私のもう片方の手をとると、志穂の真似をしてムニムニとマッサージし始める。華の力は弱く、少しくすぐったい。
右手を華がムニムニとマッサージして、左手を志穂がムニムニとマッサージしている。ムニムニとムニムニで、ムニムニムニムニ……
華はいつもどおりばっちりメイクが決まっている。その後詳しいことは聞いてないけど、自分の中で折り合いをつけたらしい。
志穂は前より雰囲気が柔らかくなった。そしてボディタッチが少し増えた、気がする。私が惚れる日はまだ遠いと思うけど、志穂もなにかが吹っ切れた感じがする。
そう――この世には不思議なことがたくさんある。それは例えば、あんな事があった後でも、私達は前よりも仲良く出来ているということだ。