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蔵品怪談奇談  作者: 蔵品大樹
普通のお話
40/43

ドリーム・ストーリー

奇妙な世界へ……………

 俺は竹岡鉄也。活躍が見込めない漫画家だ。

 俺はもう56といういい歳であるが、今でもマンガが描きたい、貪欲な男なのだ。

 なので、いつでもマンガを描いているものの、編集部からは、恐らくボツと言いたいのか、『貴方はもういい歳なので、ゆっくり休んでくださいよ』と、言われる。

 確かに、若い頃は少年誌でバトルものを掲載していたが、その力をまた活かしたいのだ。

 だが、俺は今、重大なピンチが訪れている。

 それは、スランプだ。

 ネタが思いつかず、それが出来たとしても、編集部からはボツと言われてしまう。

 どうすれば良いのか、俺も良く分からなかった。

 編集部の言うとおり、ゆっくり休んだほうがいいのか?俺はそれを思う毎日が続いている。




 そんなある日、俺は夢を見た。

 それは、クラスでの地位が低い少年が、スーパーヒーローになるという不思議な夢であるのだ。

 起きた瞬間、俺はビビッと来たのだ。この夢を、俺が描けばいいのだ。

 俺は今すぐ、原稿にそれを描くことにした。

 ストーリーはこうだ。

 『鞍居高校一年生の男、倉井英弘は学校での地位が低い陰キャ。気の弱い性格なので、不良にも金をせびられる。そんなある日、彼は謎のコート男からスーパーヒーローの力を手に入れる…』

 という感じで、タイトルは『イン・ザ・ヒーロー』。因みに、タイトルのインは、陰キャの陰とかけていたりする。

 俺はそれを読み切りとして出版社の勝利社に持って行った。

 勝利社は、少年誌の『週刊ゴーズ』を出している。週刊ゴーズは、様々な人気マンガを出してきた少年誌だ。タイトルは敢えて出さないが、俺がかつて掲載していたマンガも、ここに載っていた。

 俺は編集長の田辺さんに例のマンガを見てもらうことにした。最後のページまで読んでもらい、田辺さんは俺に言った。

 「竹岡くん……」

 つばを飲む。

 「これ、良いよ」

 「あ…ありがとうございます!」

 「主人公の…倉井っていう奴、かっこいいね!誰かモデルいるの?」

 「いえ、俺の完全オリジナルです」

 流石に夢で見たものをこのまま描いたとは言わなかった。笑われるのも嫌なので、言わないことにした。

 そしえ、俺のイン・ザ・ヒーローは、読み切りとして週刊ゴーズに掲載された。

 すると、読者からの声は良く、続きをやって欲しいとのこと。

 俺はその言葉に喜び、続きを描くことにした。

 しかし、ネタが思い付かず、一向に続きが出せなかった。

 読み切り掲載から一週間後。俺はまた夢を見た。

 それは、スーパーヒーローとなった少年が、銀行強盗を倒す夢だ。

 俺はそれを原稿に描いた。

 そして、それを田辺さんに見せた。反応は良かった。

 「竹岡くん、これは最高のマンガだ!これからまたよろしく頼むよ!」

 「はい!分かりました!」

 俺は、漫画家になってよかったと今思う。




 それから3年後、俺は田辺さんに呼ばれた。

 「あの、何の用でしょうか?」

 「実は…………イン・ザ・ヒーローを打ち切りにしようと思う」

 「えっ…打ち切り?」

 「あぁ、そのままの意味だ」

 「そ、そんな、何故?」

 「最近、読者からの反響が良くなくてね、これも見てみろ」

 「こ、これは…」

 田辺さんから受け取ったスマホの画面には、俺のマンガを批判する文章で溢れかえていた。

 『最近のイン・ザ・ヒーロー、単調でおもしろなさすぎ。』

 『なんか、これ読むより息してたほうがもっと時間を有意義に使えるわ。』

 『この本の単行本売った金で募金した』

 確かに、こんな手応えはあった。

 何故なら、俺はこの間から夢を見ず、自分が思いついた展開のみを作品に反映させていたからだ。

 そう。前回、週刊ゴーズに掲載されていた俺の作品も、『面白くない』という理由で打ち切りにされたのだ。

 「だから、竹岡くん。次で最終回にしてほしいんだ」

 「エェェェッ!まだ回収されてない伏線もあるし、今の敵だってまだ少しぐらいしか倒せてないし…」

 「それでもね、ウチが決めたことなんだ。分かってくれ」

 「………分かりました。では、心の準備が整ってから描きます」

 俺は、家に帰り、自分を落ち着かさせようと、寝ることにした。




 (……ここは…何処だ?)

 俺はいつの間にか黒にまみれた部屋にいた。勿論、寝ていたはずだ。俺は頬をつねる。

 痛い。

 ここは、一体何処なんだろうか?夢と現実の狭間だろうか?

 すると、目の前から何かが来た。見たことがある。それは、イン•ザ•ヒーローの主人公、倉井英弘だ。

 「やぁ、作者さん」

 「なぁ、アンタ、ココはどこだ?」

 「ココはね、『コマの中』だ」

 「コマの中?」

 「あぁ、僕は所詮、マンガの1キャラクターに過ぎない。そして、貴方も同類だ」

 「な、何を言っているんだ。俺は、現実の人げ…」

 「いや、本当にマンガのキャラクターだ」

 「そ、そんな…俺はマンガのキャラクター…?作品名は?」

 「ドリーム・ストーリー」

 「俺は…マンガのキャラクターだったのか…」

 そうやって打ちひしがれていると、倉井が、話し掛ける。

 「そうさ。ただ、マンガのキャラクターとして、言いたいことがある」

 「?」

 「例え、その作品が読まれても、後世にそれは伝わるのか?読者は伝えるのか?」

 「それは…」

 「それが強烈な作品じゃない限り、後々読者に忘れられ、後世には伝わる事が無い。ましてや、ボツや打ち切りになったものもそうだ」

 「僕たちは、マンガのキャラクターだ。だから、作品内で生きていくことしかできない。でも、頑張って、有名な作品になって、いつか後世に渡っていくんだ。この作品を」

 「倉井…」

 すると、外から何か、声が聞こえた。




 「編集長、今回の作品どうスか?」

 若手の漫画家、森島が編集長に新作のマンガ、『ドリーム・ストーリー』について評価を聞いていた。

 すると、編集長は嫌な顔で言い放った。

 「これは……ボツかな」

 「ぼ…ボツ?」

 「そうだ。なんかこう…過去のボツ作品や打ち切り作品を批判しているかというか…一応、打ち切りでも名を残している作品とあるからねぇ」

 「そ、そんなぁ…」

 「まぁ、でも、改良の余地アリだ」

 「そうですか…」

 森島は、家に帰ると、原稿をバックから取り出した。

 「10件も回って、全部ボツだと?こうなるんだったら、漫画家なんて、辞めてやる!」

 そして、原稿を破り、それをゴミ箱に捨てた。

読んでいただきありがとうございました………………

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