毒と無敵
奇妙な世界へ……………
俺は渡英介。毒使いの殺し屋さ。
俺は裏社会で『毒使いの渡』と呼ばれている。それはなぜか、名前の通り、毒を使うからさ。俺は殺しのためにはどんな毒をも使う。
蜘蛛の毒やサソリの毒。蛇の毒や人工の毒、自然の毒等で、俺は殺しをしている。
俺に逆らった奴は全員毒死したさ。なんせ、俺様は最強の毒使いだからなぁ。
さて、俺には依頼が来る。
今回訪れたのはある一人の科学者だった。おそらくこの科学者は別の科学者を殺してほしいに違いない。そう考えた。しかし、この科学者は意外なことを言ったのだ。
「私を毒殺できるか試してほしい」
俺は驚愕したよ。自分を毒殺してほしいなんて余程のアホじゃない限りそういない。そして、科学者の稲本は続けた。
「私はどんな毒物にも耐えられる薬を開発した。それがどれぐらい試せるか手伝ってほしい」
聞けば聞くほど意味が分からなかった。毒物に耐えられる薬なんてあるはずが無い。まさか、毒に勝る、所謂無敵薬を作ってしまったのか?コイツは。
稲本は前金2000万を渡した。もし毒で死んだら保険金を俺に渡すらしい。
「よし、分かった。じゃあ、手伝ってやるよ。お前のその実験に」
俺がそう言うと稲本はとてつもなく喜んだ。
そして、俺は稲本の研究所まで行った。俺の持つ全ての毒を持って。
「じゃあ、軽いものからよろしく」
そう言って稲本は薬を飲んだ。
俺は早速、ベニテングタケの炒め物を稲本に提供した。
そして、稲本はがっつく様に全て食べた。
しかし、稲本はなんの症状も出なかった。
(ほう……本当に無敵だな)
俺は次に1.5g超えのビタミンDを飲ませた。
しかし、これを飲ませても症状が表れず、死ななかった。
(吐きもしないなんて、文字通り無敵だな)
次に、10gの塩化カリウムを飲ませた。
またしても死なず、俺はイライラしてきた。
(ったく…俺の本来の仕事は毒を使って殺すことなんだよ…早くくたばれよ…)
次に、ムカデを腕に噛ませた。
しかし、噛まれた所から血が出ても、笑顔で『大丈夫です!』と言ってのけた。
(何故!?)
ムカデと来たらヘビだ。今度はマムシを舌に噛ませた。
しかし、奴は余裕そうに『平気平気』と言った。
ヘビの次はハチ、ハチの次はスズメバチ、それより次は北米で生息するトガリネズミ、さらにそれより次はフグの内臓、またまた次はクロゴケグモ…………といった毒を次々に試していった。
しかし、ことごとく毒は稲本に敗れていった。俺の怒りは頂点に達した。
(仕方ない………最終兵器だ……)
俺はとある注射器を稲本の前に持っていった。
「渡さん?これは?」
「これはボツリヌストキシン。これを含む成分がこの注射器に入ってるわぁ……」
「ほう。じゃあ…刺してください」
俺は稲本に刺そうとしたその瞬間、研究室のドアが開けられた。
「渡ィ!お前を毒物及び劇物取締法違反で逮捕だ!」
「そ、そんな、何故!?」
「クククッ…」
「!?」
俺は稲本が笑っている事に気づいた。
「稲本…まさか…!?」
「そうさ。警察を呼んだのは私さ。よくも、私の友人をやってくれたねぇ……」
「貴様ァ…」
「あと数秒で効果が切れるからヒヤヒヤしたよ」
「あと数秒?」
「あぁ、この無敵薬はだいたい一時間半くらいしか効果が続かないんだ。本当に助かったよ。さぁ、これは私が預り……」
稲本のその判断が自身を狂わせた。
稲本の手のひらに注射器の針が刺さったのだ。
「あっ……」
「えっ?」
「やべっ…」
この瞬間、稲本の顔から血の気が引いた。
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