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蔵品怪談奇談  作者: 蔵品大樹
普通のお話
37/43

全て、なおします

奇妙な世界へ……………

 俺は古野修平。とてつもない店を見つけてしまったサラリーマンだ。

 それを見つけたのは、先程の事だった。

 会社の帰りに、恥ずかしいことだが、何もない所で転んでしまい、メガネを割ってしまったのだ。

 一応、伊達メガネだったので視力には支障が無かったのだが、気に入っていたので、とても悲しかった。

 割れたメガネを持って顔を上げると、見たことがない店が建っていた。

 (こんな店あったっけ?)

 確かにこの前からここらへんの建物の工事をしていたのを聞いていたが、こんな建物が出来ていたとは。

 看板を見てみると、『なおし屋』と書かれていた。そしたら、その店隣りにあった立て看板には、『全て、なおします』と書かれていた。

 (なんで『直す』じゃないんだ?)

 そんな事を思いつつ、俺はその店に入った。

 店の中にはただ一人、エプロンを掛けた男の店員がいた。

 「いらっしゃいませ。なおし屋へようこそ」

 「あの……この店はどんなことを?」

 「え?看板に書かれていたでしょう。全て、なおします、と。そのままです」

 「では………この伊達メガネも?」

 俺は店員に先程割れたメガネを見せた。すると、店員はそれを受け取ると、笑顔で答えた。

 「えぇ。直せます」

 店員はメガネを持ったまま、奥の部屋に入った。

 そして、一分経ち、店員が戻ってきた。

 「これでどうでしょう?」

 メガネは割れる前に戻っていたかのように、直っていた。

 「うぉぉ…凄い」

 俺は思わずバックから財布を出そうとすると、店員が止めた。

 「いえ、お代は結構です」

 「えっ…いいんですか?」

 「はい。私はお客様の喜ぶ姿を見たくてこの仕事をしています。なので、お代は結構なのです」

 そう語る店員は、何か思い出したかのように、胸元の名札を強調した。

 「申し遅れました。店長の小森直彰と申します。これからも、なおし屋をよろしくお願いします」

 俺はそれだけ言われると、店を出た。

 (良い店だったなぁ…)

 俺はこの店を使おうと思った。

 それからは、色んな壊れたものをこの店に持っていき、直してもらった。

 スマホにコップ、ハンガー等をこの店に無料で直してもらった。

 そんなある日、俺は友人である田宮から金魚を預かるになった。

 その友人は、少しばかり旅行に行くため、信頼出来る俺に預けたいのだとか。

 そんなことから、三日間、金魚のパイシースを預かることにした。

 しかし、二日目、悲劇が起こる。

 パイシースに餌を上げようと金魚鉢に向かった。

 なんと、パイシースが浮かんでいた。

 (オイオイオイオイ…死んでるじゃないか!どうしよう……どうしよう……)

 そう考えていると、頭の中になおし屋が浮かんだ。

 (ダメ元で………行ってみるか?)

 俺は一か八か、死んだパイシースをなおし屋に持っていった。

 「お願いします!」

 小森は笑顔で金魚鉢を貰うと、快く答えた。

 「えぇ。良いですよ」

 そして、それを持って、奥の部屋に入った。

 一分後、そこには、生きているパイシースが入った金魚鉢を持った小森が出てきた。

 「治しましたよ」

 「えぇっ?」

 そう。この店は、『直す』だけではなく、『治す』事も出来るのだ。しかも死から生に治せるのだ。

 「あ、ありがとうございます!」

 「いえいえ、それほどでも」

 次の日、旅行から帰ってきた田宮にパイシースを返した。

 すると、そのお礼かと言わんばかりに、とある女性を紹介してくれたのだ。田宮曰く、学生時代の友達で、キャリアウーマンだけど婚活をしているのだとか。

 それから数日後、俺はその女性と会った。

 「どうも、田宮の友人の古野修平と申します」

 「あぁ、田宮くんから?どうも、村瀬紗絵と言います」

 村瀬さんは田宮にまつわる過去の話をしてくれた。そして、恋仲が深まり、連絡先を交換した。

 そして、初のデート日を決め、俺はそのデートに何を着ていくかを決めていた。

 とりあえず服装は白のパーカーとチノパンを着ていくことにしたが、腕時計も付けたほうが良いと思い、俺は重要な物を入れてある棚を漁っていた。

 すると、ベルト部分がちょっと錆びている、金色の腕時計を見つけた。

 (そういえばこれって………)

 俺はこの腕時計についてとあることを思い出した。

 二年前、父が亡くなった。末期がんだった。そして、自分の形見として、金色の腕時計を俺に渡したのだ。

 その腕時計は、海外で買ったもので、全財産の4割をそれに全て使ってしまうほど高かったのだ。

 しかし、その腕時計はかつての光を失い、茶色の錆が出ていた。

 俺はそれをなおし屋に持っていった。

 「すいません。この腕時計を元の状態に直してほしいのですが………」

 小森は腕時計を受け取り、奥の部屋に入った。

 そして、戻ってきたのは小森と安っぽい腕時計だった。

 「えっ……これがあの金色の時計………?」

 「はい。どうやら時計部分はそのままに、ベルトの部分を変えて、高そうに偽装した………そんなところでしょうか」

 そう。父さんはぼったくられたのだ。

 「………直していただき、ありがとうございます」

 俺はかつて金色の腕時計を持って、そこを後にした。




 デートの日は、仕方なくあの腕時計を持っていったが、村瀬さんには何も言われず、デートを終えられた。

 そして、何ヶ月か経ち、俺は村瀬さん、いや、紗絵に告白し、OKを貰った。

 最終的には結婚をして、俺は幸せな生活を送る……………筈だった。

 紗絵はヒステリックな性格だった。俺と付き合っている時はそれを隠していたが、結婚するとなると、その性格を顕著に表してきた。

 最初は離婚しようと思ったが、せっかく結婚出来たんだ。初恋を残念な結果で終えたくない。

 しかし、我慢も、限界を迎えた。

 それは、紗絵が俺がデートで使っていた腕時計を見つけ、こういった。

 「あなた、こんな安っぽい腕時計使ってるの?ダサ〜イ」

 その瞬間、俺はいつの間にか血の付いたトンカチを持っていて、紗絵の死体の前に立っていた。

 そして、俺は目の前が真っ白になった。

 人を殺した。その現実が受け入れられなかった。

 俺は紗絵の死体を持ち、誰にも見られないように、なおし屋に持っていった。

 「すいません。無理なお願いかもしれませんが…コイツを治してください…」

 小森は少しばかり黙ると、笑顔で答えた。

 「わかりました。では、治しましょう」

 小森は紗絵を持つと、奥の部屋に入った。

 そして一分後、そこには元気な紗絵がいた。

 「紗絵………」

 「ついでですが、彼女さんの性格も直しておきました」

 俺はその言葉だけを聞くと、紗絵と共にそこを出た。

 「すまないな、紗絵」

 「………」

 なんとか俺の殺人は無かった事になったものの、紗絵の口数は少なくなっていった。

 「紗絵、今度の土曜、旅行に行かないか?」

 「………」

 何も言わなくなった紗絵に俺は心配した。確かにヒステリックが無くなったのはいいものの、こう何も言わないと怖くなる。

 とはいえ、紗絵は俺の妻なんだ。気にすることは無い。




 それから数日後、会社の帰りだった。唐突に腹に痛みが走った。

 「へ…?」

 どうやら、腹を刺されたらしい。刺したであろう不審者は去っていった。

 (まずい……このままじゃ死ぬぞ…救急車か?いや、入院費やらなんやらで金がかかる)

 そう。無料で直してもらえるなおし屋を使っていたことで、俺はケチな性格になっていたのだ。

 目の前がクラクラする。周りを見渡したとき、奇跡的にとある店を見つけた。それは、なおし屋だった。

 どうやら、九死に一生を得たようだ。俺は今すぐ中に入り、叫んだ。

 「俺を…俺を直してくれぇ!」

 すると、小森が笑顔で近づいた。

 「わかりました。では、行きましょうか」

 俺は奥の部屋に運ばれた。

 その部屋は暗く、ただ一つの光が射していた。その光の射す場所は、小難しそうな機械だった。

 「なんだ…コレ?」

 その時、俺の命の灯は消えていった。




 小森はその機械と同接しているベットに屍を乗せていた。

 「これでよし」

 そして、小森があるボタンを押すと、屍は消え、ベットの横に元気そうな古野が立っていた。そして、無言でそこを去った。

 「さて……これであの人も良いのかな?」

 小森は誰かに話すように、独り言を言った。

 「この機械、リターンマシーンは、壊れた物や死んだ生物を元に戻す能力を持っている。まぁ、時には元の状態が、残酷な結果を生み出したり、人は無口になる。まぁ、元に戻せというのは客の要望だ。どうなっても俺の知ったこっちゃない。まぁ、本来は死んだ彼女を生き返させるための機械だが、出来たあとには彼女はこれが復元出来ないほどの状態だった。まぁ、俺はこれからも頑張らせていただきますよ」

 すると、奥からドアの開く音がした。

 「すいませ〜ん!割れたスマホを直してくださ〜い!」

 「は〜い!わかりました!」

 小森は笑顔でそこを後にした。

読んでいただきありがとうございました………………

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