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蔵品怪談奇談  作者: 蔵品大樹
普通のお話
36/43

価値

奇妙な世界へ……………

 俺は城秀仁。とてつもないことに驚いている素人の画家だ。

 俺の夢は、幼い頃から、画家だった。

 絵を描くのが好きで、今まで何千枚ほどの絵を描いてきた。

 そして、一年前、美術を専門とする大学を卒業し、今では、『画家の城』として、活躍する……………はずだった。

 俺は絵の才能が微塵もなく、大学を卒業できたのも、まさに奇跡としか言いようがなかった。

 だがしかし、俺は諦めない。たとえ、俺の持つ筆が折れようとしても、俺は描き続けるのだから。




 そんなある日の事、俺はいつものように公園で風景画を書いていた。

 絵を描く俺に子供が近づいてくるが、そんなのお構いなし。アツアツのカップルが物珍しそうに写真を取りSNSに上げようが、そんなのお構いなし。

 俺はなんにも気にせず、絵を描き続けた。

 そして、午後2時になる頃に、朝から描いていた風景画は完成した。

 すると、隣に一人の老人が近寄ってきた。

 「兄ちゃんの絵、もの凄く美しいのぉ」

 「いやいや、それ程でも」

 すると、老人が奇妙なことを言い出した。

 「そうだ、この絵を譲ってもらえないか?」

 「えっ?別に良いですけど」

 「フフフ。ありがとうな………アンタの目、画家の魂がこもっている。絵を何枚かくれないか?」

 「えっ?いいんですか?」

 「勿論、タダでとは言わんよ。取り敢えず………これを」

 老人は、ワニ皮の財布を取り出すと、5枚の一万円札を取り出した。

 「!?」

 「いやいや、これだけとは言わん。後日、アンタの家に金を送らせてもらうよ」

 「あ、ありがとうございます!なんと言えばいいか……」

 「そうだ、名前を聞いていなかったな」

 「えっと、城秀仁と申します」

 「私は日下部光吾郎(くさかべみつごろう)。では、この絵を貰っていくとしよう」

 そして、日下部は、俺の絵を持ってその場を去った。

 (日下部光吾郎……なんかどっかで見たことあるんだよなぁ)

 そんなモヤモヤを持ちつつ、俺は家に帰った。

 その後、日下部の執事と名乗る男が家にやってきて、約50枚ものの絵を持っていった。

 「日下部さん。物好きな人なんだな」




 それから数日後、また公園で絵を描いていると、サイン用色紙を持った男がこちらにやってきた。

 「あ、あの………」

 「な、なんですか?」

 「あ、あ、あ、貴方、城秀仁さんですか?」

 「そうですけど」

 「で!でしたら!サインを!」

 そう言って、男を色紙を差し出した。

 「オイオイ、俺と同姓同名の奴と間違えているんじゃないか?」

 「いえ、あなたが、あの有名画家、日下部光吾郎の持っている、『風景』の作者なんだろう」

 「…………あぁ!」

 その瞬間、頭の中である一人の存在を思い出した。

 日下部光吾郎。老人でありながらも現代アーティストで、様々な美しい作品を出してきた。さらに、塾もやっており、そこからは沢山の現代アーティストを輩出してきた。

 そう。日下部は、自分の持っている審美眼で、俺の絵を買い取ったに違いない。

 「あの…サインは?」

 「あぁ、今します」

 俺は男の色紙にサインを書くと、男は嬉しがった。

 「ありがとうございます!このサインは家宝にします!」

 男はそれだけ言うと、そこを去った。

 (にしても………まさかあの日下部が俺の絵を買い取るなんて…夢にも思わなかった…ケケケケッ)

 俺は心の中で狂喜した。

 さらに数日後、ニュースを見ていると、ある絵画のオークションがなされたというニュースが流れた。

 その絵画は、俺の絵だった。

 「はぁ!?」

 俺は驚きすぎて、そんな言葉しか出なかった。

 そして、買い取られた額は、まさかの1000億。どうやら、その1000億は、俺に支払われるのだとか。

 その途端、俺は夢を見ているのかと思っていた。




 それから数日後、通帳に書いてある1000億という数字を見ていると、家のインターホンが鳴り、俺は玄関に向かった。

 そこには、見たことがある顔がいた。

 「よう、秀仁」

 「お前……徹か?」

 そう、この男こそ、俺の友人、岩松徹である。

 「にしてもどうしたんだ?急にウチに来るなんて」

 「話は後だ、取り敢えずお邪魔させてくれ」

 「あ、あぁ」

 岩松は、何か焦っているようだった。

 すると、外から怒号が聞こえた。

 「ゴラァ!あの野郎!どこじゃァ!」

 その怒号は何かを探しているようだった。

 リビングに岩松を通すと、彼は話し始めた。

 「直球に言うけどさ、俺、借金作ったんだよ」

 「借金!?」

 「あぁ。その額なんと一億」

 「一億!?なんでそんな額を」

 「それは…………俺はギャンブルにハマった。ただそれだけのことだ」

 「じゃあ、ギャンブルで借金を」

 「そうだよ。最初はちゃんとした金融機関で借りてたんだけど、最終的に闇金に手を出してしまったんだ。それで、この間、その闇金から『金を返さねぇと、マグロ漁船に送るぞ』と言われて……」

 「それは………お前の自業自得じゃ…」

 「それは分かっている。でも、金だけは返したいんだ!もしマグロ漁船に送られたら、死ぬかもしれない……だから……俺の命の為だ!金をくれぇぇぇ!」

 すると岩松はポケットから小刀を取り出した。

 「お、お前!」

 「俺だってなぁ…こんなことをしたくないんだ!だから、今すぐに金を……」

 すると、インターホンがなった。

 「何だぁ?こんな時に…」

 岩松が玄関に向かうと、俺も気になってそこに向かった。

 そして、岩松が扉を開けると、そこには、サングラスをかけた金髪のスーツを着た男がいた。

 「あ…えっと………」

 「おう…岩松。こんなナイフを持ちやがって。色々と豪勢だなぁ!この野郎!」

 「す、すいません!マグロ漁船だけは!マグロ漁船だけは!」

 「へっ、わかったよこの野郎。じゃあ、タコ部屋送りだよ」

 「え………」

 「じゃあ、行こうか」

 「ちょっ、やめ」

 その男は、岩松を連れて、家を出た。

 「……助かった…」

 そうホッとしていると、急に恐怖感にいざなわれた。

 (もしかして……かつての友人が金のために俺の元を訪れるのか!?)

 そう考え、俺はできる限りの食料、金、通帳、印鑑、スマホを持っていって、家を出た。

 (俺にはできるのは皆が知らない町に行くだけだ。できれば他県に……)

 そう思っていると、後ろから肩を叩かれた。

 「なんですか?」

 そこには、見たくもなかった顔があった。

 「久しぶりだな、城」

 「貴方は…室瀬先輩」

 この男は室瀬貴。俺が通っていた高校の先輩である。

 室瀬は、絵の才能が無かった俺をいびりにいびり、一時期不登校にさせた、思い出したくもない男である。

 「なぁ、助けてくれ。金を恵んでくれ」

 「な、なんで貴方が俺を頼るんですか?」

 「俺さ、いまホームレスなんだよ」

 「な、何故?」

 「俺は大学を卒業したあと、とある大企業に入社した。でも、その会社がすぐに潰れたんだ。だから、その次に色んな中小企業に入り続けた。しかし、どれもこれも俺に合わず全部やめた。そして、今は一文無しさ」

 「そ、それがどうしたんですか」

 「この通り、金を恵んでくれ!」

 すると、室瀬は、土下座をして、俺に頼み込んだ。しかし、この男は自分をいびった男。今更助けてくれなんて虫が良すぎる。

 「だめです」

 「なら………殺してまでもぉぉぉぉぉ!」

 すると、室瀬が俺の首を締めてきた。

 「ぐぅ…」

 「お前の噂は知っている。なんせ、1000億持ってるんだからなぁ!」

 このまま息絶えようとした時、どこからか声がした。

 「何をしているんだ!」

 「くっ…」

 その声を聞いた途端、室瀬は逃げ出した。そして、一人の青年が駆けつけた。

 「大丈夫ですか?」

 「す、すいません。助けてもらって」

 すると、青年は、俺の顔を見ると、ニヤリと笑った。

 「貴方…日下部の持っていた『風景』の作者の城か?」

 「えっと……」

 その瞬間、青年が叫んだ。

 「ここだ!ここに城がいるぞ!」

 青年の叫びで多くの人々が駆けつけた。

 (マジかよ……逃げないと)

 俺はすぐに逃げた。しかし、人々はやってくる。

 「待て!待って!城!」

 「なんで俺は他人からも追われなきゃいけないんだよ〜!」

 俺は曲がり角に入ると、追手を撒いた。

 俺は考えた。何故友人知人他人から追われなくちゃならないのか。そして、一つの真相に辿り着いた。

 それは、売られた絵である『風景』の価値と、俺の価値が同等という事。

 あの日下部が持っていたという価値が『風景』に付けられた事により、実質、作者である俺に1000億の価値が付いたのだ。

 そして、俺を捕まえれば、1000億という莫大な金を得られるということになる。

 俺はすぐに逃げ出そうとした。しかし、それはある一つの車に止められた。そして、その車から一人の紳士が現れた。

 「どうも、城さん」

 「貴方は、日下部さん」

 そう、全ての元凶、日下部光吾郎だった。

 「貴方の…貴方のおかげで…俺は何故か追われる身になったんだ!どうしてくれるんだ!」

 「ま、待て!これには理由があるんだ」

 「理由?」

 そう言うと、日下部は語り始めた。

 日下部は、画家でありながら、色んな作品を集める趣味があった。

 しかし、日下部の住む豪邸のキャパシティが耐えきれず、もう絵を飾れなくなったのだ。

 そして、集めた絵を売ろうとして、たまたま選んだのが、俺から貰った絵なのだそうだ。

 「そんな理由が……」

 「あぁ、私には影響力がある。私の一言で、皆はこのことを止めるだろう」

 「わかりました。にしても何故オークションで支払われた金を俺に?」

 「貴方への恩返しだよ」

 「そうでしたか」

 「じゃあ、私は皆を止めるとするよ。では」

 それだけ言うと、日下部は去った。




 それから数日後、金のために俺に来る者はいなくなった。

 なので、安全に家にいられるのだ。

 「全く。1000億の為だけに、人は狂うもんだね」

 頭を掻きながら、SNSを見ていると、一つの呟きに俺は目を丸くした。

 『日下部光吾郎、また城作の絵をオークションで売ったぞ!その額1兆!しかもその金は城に支払われる!』

 その途端、家のドアが叩かれる音がした。

 「城!いるんだろ!城〜!」

 「まずい!」

 そう口にした瞬間、ドアが破られた。そして、俺に1兆円の価値が付いた。

 「や、やめろォ!ウワァァァァァァァァァ!」

 俺は一斉に来た者達に飲み込まれた。

読んでいただきありがとうございました……………

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