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蔵品怪談奇談  作者: 蔵品大樹
普通のお話
34/43

恨み日記 前編

今回の話は前後編に別れています。お先にこちらをお読みください。



奇妙な世界へ……………

 俺は加納昌則。息子の遺品を片付けている男だ。

 俺には、芳宏という息子がいた。

 芳宏は、目に入れても痛くないくらい可愛く、大人になっても親に親孝行をしてくれる、良い息子だった。

 凶報が訪れたのは春の終わり頃だった。

 俺の元に電話が掛かってきた。

 「はい、加納ですが」

 「えぇと、芳宏さんのお父様でしょうか」

 「はい。そうですけど」

 「警察の者ですが…実を言いますと、芳宏さんは…お亡くなりになられました……」

 「へ……」

 その瞬間、頭の中と視界が真っ白になった。

 その後、警察署に向かい、慰安室に入ると、そこには芳宏と思われる死体が横たわっていた。

 「どうやら、暴行を受けていたようで、家でお亡くなりになられていました」

 「そうですか……」

 俺は、何も感じさえいなかった。

 それから数週間後、親族のみで葬式を行った。

 「兄貴……」

 「あぁ、アイツが亡くなってから数ヶ月経つというのに、神様は俺のことを見放したのか……」

 そう、数ヶ月前に妻の理紗子は癌で亡くなっているのだ。

 「あぁ、俺はこれからどう暮せばいいんだろうか」

 数日後、俺は芳宏の遺品整理を行っていた。

 すると、白いノートを見つけた。そこには、明朝体で、『恨み日記』と書かれていた。

 「何だこれは?」

 俺はノートを開けると、そこに『九条敬輔』と書かれていた。

 九条敬輔という名は、見覚えがあった。芳宏の高校の時のクラスメートで、『有限会社クジョウ』の取締役でもある男だ。何故芳宏はこの男の名を書いたのだろうか。

 そして、ページを開けると、そこには唾棄すべき内容が書かれていた。

 『また九条にやられた。いつも怪我が目立たないようなところにやってくるので、本当に苦しい』

 『九条にやられるたびに、俺の傷は増えていく。まるでタトゥーみたいだ。ハハハ…笑えないが』

 『あんな男はいつも死んでしまえと思ってしまう。だが、アイツが死んで俺が何か得れるだろうか』

 『いったい、学校に言ったほうがいいのか。父に言ったほうがいいのか。しかし、家族に迷惑を掛けたくない。とはいえ、教員に言っても無駄だ。アイツの親父、金が力だし』

 など、胸糞悪い内容が書かれていた。

 そして、最後の方のページに行くと、こう書かれていた。

 『今日は芝実高校の同窓会だった。憎きアイツに会うと、奴は謝らなかった。というより、笑って自分の武勇伝にしていた。取締役にもなっていて、何故神様は天罰を悪い人間に与えないのだろうか』

 『夜、後ろから九条に会った。そしたら、ぶん殴られた。理由はうざいからと言っていた。そして、馬乗りされて、何発も何発も何発も何発も。もう苦しい。あぁ、神様、憎き男、九条敬輔に天罰を』

 そして、文の最後には、血が付いていた。

 「まさか……あの男が……」

 俺はすぐに警察署に行き、この事を伝えた。しかし警察は、『そんな事あるわけ無い』と言った。

 その帰りの事だった。

 「くっ………なんで……なんで…俺は息子のいじめに気付いてやれなかったんだろうか。俺は父親失格だ」

 そう絶望していると、男と肩がぶつかった。

 「すいません……」

 「いや、良いのですよ。そして、息子さんの恨みは、すぐに晴らされます」

 それだけ言うと、男はそこを去った。

 「何だったんだ…今の?」




 それから数日後、昼休みに部下が話しかけてきた。

 「部長、部長!」

 「どうした?」

 「ライバル企業の有限会社クジョウが潰れました」

 「何?それは本当か?」

 「はい。どうやら、取締役の九条敬輔が、顔がわからない程暴行を受けて、その後亡くなったそうです。そして、次期社長が決まらずに、そのまま…」

 「そうか……」

 俺は頭の中で、この間聞いた言葉を思い出した。

 『息子さんの恨みは、すぐに晴らされます』

 もしかして、あの恨み日記とやらは、人の恨みを晴らすものだろうか。

後編に続く。

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