ミニ国キット
奇妙な世界へ……………
俺は田口英幸。友人から勧められた物に驚いている趣味なき男だ。
俺には吉富真夫という友人であり同僚である男がいる。
吉富は俺とは反対に多趣味であり、ペットや栽培、ゴルフに読書など、退屈な生き方をしていた俺にとって、吉富は俺の人生のスパイスでもあった。
そんなある日、その吉富から電話があった。
「どうした?吉富、急に電話なんか掛けてきて?」
「ヒデ、実はな新しい趣味が出来たんだ!だから家まで来てくれ!」
吉富はそれだけ言うと、すぐに電話を切った。
「何だったんだ?」
俺は取り敢えず、アイツの家に行くことにした。
吉富の住む高層マンションに着き、俺はアイツの住む部屋のインターホンを押すと、すぐにドアが開いた。
「よく来た!いきなりでなんだが、取り敢えずリビングまで来てくれ」
「お、おう…」
俺は言われるがままに、リビングに入ると、そこには、大きめのサイズの虫かごがあった。
「なんだよ…なんか珍しい虫でも飼ったのか?」
「虫も何も、俺は新しいキットを買ったんだよ」
「新しいキット?」
俺は虫かごの中をよく見てみると、俺は目を疑った。
「何だよ…これ?」
虫かごの中には、ミニチュアサイズのビルや家、車に、アリくらいのサイズの『人』がいた。
「吉富…これって……」
「あぁ、『ミニ国キット』だ」
「ミニ国キット?」
「あぁ。話は変わるが、世界で一番小さい国は何だ?」
「バチカン市国だろ?」
「あぁ、それよりも小さ〜い、国を作る事が出来るんだよ」
「へぇ」
「あぁ、この国の中には警察署や病院が全部詰め込まれているんだ」
「スゲェな…にしても、どうやって人間が?」
「それはな、キットを買ったときに、ミニ人間が既に……ざっと5000人ほど付属されているんだ。彼らは2日で10000にも増える」
「2日で2倍ねぇ…」
「後、このミニ国キットには、現代版や、近代版、古代版等、色んな種類が出されているんだ」
「凄いな…俺も買ってみるか?」
「うぅむ……これに入っている人間は命もある。ぞんざいに扱うなよ」
「………ペットとか飼ったことないから、俺は遠慮しとくよ」
「そうか……欲しくなったら俺に電話してくれ業者に言っておくからな」
「じゃあな」
俺はマンションを出ると、身震いをした。
(最近の娯楽は…あんな不気味なものもあるんだな…)
そんなことを思いながら、俺はマンションをあとにした。
それから数日後、会社から声を掛けられた。声を掛けたのは課長だった。
「課長、どうしました?」
「最近、吉富くん来てないよね」
「確かに…」
ここ数日、吉富は会社に来ていなかったのだ。
「彼は会社内では結構優秀な方だ。そしたら、会社に支障がでる。少し電話を掛けてみるよ」
課長は吉富に電話を掛けた。
しかし、電話から吉富の声がかかる聞こえる事は無かった。
「どうしたんですかね…吉富の奴」
「ううむ…あいつの家に行くしかないか」
その夜、俺と課長は吉富の家に行くことにした。
部屋の前に着き、俺はインターホンを押した。しかし、ただただ音が鳴るだけで、アイツは来なかった。
「お〜い、吉富!どうした?」
課長がドアノブに手をかけると、ガチャリと扉が開いた。
「鍵が開いてある…」
「警戒心の無い奴だ…お〜い、入るぞ」
俺達がリビングに入ると、俺達は目を疑った。
「こ、これは…」
そこには、恐らくミニ国キットが入っているであろう虫かごを凝視している、ほぼ皮と骨だけの吉富がいた。
「キヒヒヒ…やれ、やれ、やれ、やっちまぇ………」
「お、おい、吉富!どうした!?」
俺は吉富を揺さぶると、急に後ろを向いた。
「ナンダッ!?」
「ヒッ!?」
俺は驚き、課長に関しては、腰を抜かしていた。
「……………何だ…課長とヒデじゃないか…」
「なんだよ…お前どうしちまったんだよ!」
「実はな…俺がミリオタという事もヒデは知ってるだろう」
「そうだが…」
「ミリサイズのマシンガンを与えたら、コイツ等、戦争を始めたんだよ」
「だから…さっきやっちまえって…」
「クヒヒヒ…でも…その戦争のお陰で、今じゃ残り人数1000まで少なくなってしまってねぇ……」
「それがどうした…」
「5000人分のミニ人間は1万もするんだよ……そして、その人間の素は何だと思う?」
「さぁ…」
「血だよ!一滴分の血が必要なんだ。こないだ、2日で10000まで増えたって言っただろう。それは、彼らが生殖したのもあるが、俺の血をミニ人間の型に入れたんだよ」
「だから…こんな見た目に…」
「あぁ、でもこのままじゃ俺は死んでしまう……だから…君たちの血をくれよ…!」
その途端、吉富は立つと注射器を持ち、俺達の方にやってきた。
「来るな…来るなぁ!」
「や、やめろぉぉぉぉ!」
その時、吉富は急に倒れた。
「どうしたんだ?」
「と、取り敢えず救急車を!」
そして、吉富は病院に運ばれたが、失血死で亡くなった。
「吉富氏は、自分の娯楽のために自分の血を抜き続け、それを楽しんでいたんでしょう」
「そうですか……」
「あと、そのミニ国キットなる物を制作した会社は今現在倒産していて、どうやら吉富氏は、その廃棄されたものを何かのルートで貰い、型や注射器も貰ったのでしょう」
「わかりました……では…」
俺達は暗い気持ちで病院をあとにした。
俺は吉富からミニ国キットを譲り受けた。何故なら、遺書にそんな事を書いていたからだ。
(残ったのは灰と化した国、注射器、そして、約一億人分のミニ人間の型。俺がやることはただ一つ)
俺は痛みを堪えながら、自分の腕に注射器を刺した。
そう、今からこの『国』のアダムとイヴを作らなければならないのだから。
読んでいただきありがとうございました……………




