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蔵品怪談奇談  作者: 蔵品大樹
普通のお話
30/43

相手目線

奇妙な世界へ……………

 俺は巽慶嗣。いまから判決を言い渡される連続殺人鬼だ。

 俺は2ヶ月前、俺をパワハラしてきた課長を殺害した。

 ソイツを殺した時、俺の中の理性のタガが外れた。

 それからは人を殺すことに興奮を覚え、計20人ものの人数を殺害していった。

 しかし、俺にも年貢の納め時がやってきた。

 ある女性を殺そうとした際、とある目撃者に見られてしまい、そのまま逮捕された。

 さらに殺害した理由が、人を殺すのに興奮を覚えたという自分勝手な理由により、世間では俺のことを『マーダーフール(馬鹿な殺人鬼)』と呼んだ。

 そして、裁判で俺は今まさに判決を言い渡されようとしていた。

 裁判官が俺に言い放つ。

 「被告人に、判決を言い渡す…主文、被告人を…………死刑に処す」

 俺はその途端、膝から崩れ落ちた。

 (俺が……死刑?)

 そして、俺は留置所に行くことになった。首を吊るされる為に。

 収監される部屋に着き、俺は人を殺した事に後悔を覚え、怒りで震えた。

 「クソっ………なんで俺がこんな事に………アイツが…アイツが目撃しなかったら、俺はこんな事になったはずじゃ………」

 すると、留置職員が話しかけてきた。

 「面会だ。お前に会いたいと客人が来ている」

 俺は面会室に向かうと、そこには見たことがある中年の男がそこにいた。

 「やぁ、巽くん」

 「アンタ、確か名は………」

 「あぁ、要連太郎。お前の殺害現場を目撃したしがない男だよ」

 そう。俺が女性を殺そうした際に、この男が見ていたのだ。

 「ケッ、アンタのせいで豚箱送りだよ」

 「まぁ、私のおかげで、お前による連続殺人は抑えられたからな」

 要は笑いながら頭を掻くと、俺は机をバンと叩き、叫んだ。

 「この野郎!俺が死んだら呪ってやる!」

 「フフフ…」

 「何がおかしい?」

 要が怪しげに笑うと、語り始めた。

 「君は、相手目線の事を考えた事があるかい?」

 「相手目線?まぁ、よく親から言われたよ」

 「実は、私は相手目線を見ることができる機械を発明してな、試しにお前さんでやってみようと思うんだ」

 「なんだよ…死刑囚にもそれを拒否する権利ぐらいあるだろうが」

 「まぁ、私は国から認められている。だから、何しても私は罪に問われれない」

 「ちっ…」

 「まぁ、君が実験台第一号なんだ、喜べ」

 「まぁ、いいさ…これで死んだら恨んで出てやる」

 「フフフ、じゃあ、明日の11時、ウチの者がアンタの収監されている部屋に来るからな。あぁ、勿論脱獄しようなんて考えるなよ。迎えに来る者は、ツワモノだからな」

 そう言うと、要は部屋を出た。

 次の日、11時ちょうど、確かに強そうな男が迎えに来た。

 「巽、行くぞ」

 俺は男たちに連れられ、とある研究所に入った。そこには要がお出迎えしていた。

 「よく来た。では、実験室に入ろう」

 そして、着いたのはベットと何か小難しそうな機械があった。

 「これは?」

 「これが私が発明した機械。名前はLOP。Looking at the other partyの略で、直訳すると、相手目線だ」

 「ほう」

 「まず、この機械を被り、寝る。すると、意識が相手になる。それはLOPが被った者の記憶を読み取り、事がそのまま記憶通りに進んで行くのだ」

 「よくわからんが…?」

 「まぁ、簡単に言うと、AがBの金を奪うとする。そのAがこの機械を被るとB目線の事が進むのだ」

 「そうか……」

 その途端、悪寒を感じた。

 「では、始めるぞ」

 そして、俺はLOPを被り、そのまま寝た。




 俺が最初に殺害したのは、課長の荻島近夫だった。俺は奴から日常的にパワハラをされ、精神が参っていた。そして、パワハラをされていく内に、俺の中には憎悪と殺意が溜まっていた。そして、俺は海外から取り寄せた無味無臭の劇薬を荻島にやるお茶の中に入れたのだ。

 俺はその荻島になっていた。

 「課長、お茶です」

 部下にお茶を机に置かれ、俺は疑いもなくお茶を飲んだ。

 「…………ぐっ………」

 その瞬間、体は異変を感じ始めた。気分は悪くなり、頭も痛い。その感覚が自分を襲った。

 「アァァァァァァ……」

 小さな断末魔を上げ、机に突っ伏した。




 次に殺害したのは、俺の住むアパートの隣人、沼尾毅。沼尾は、ミュージシャン志望の大学生で、いつも夜中にギターを鳴らしては近隣住民を困らせていた。無論、その中には俺も含まれていた。

 当時人を一人殺していた俺にとって、沼尾の下手くそなギターは俺の不安を煽り、心に眠っていた『はず』の殺意を込み上げた。

 そして深夜、俺は『注意』をしに、沼尾の部屋のチャイムを鳴らした。

 沼尾になった俺は、ドアを開けた。

 そこには、にこやかな俺、巽慶嗣が立っていた。

 「なんスか?こんな深夜に」

 「いつもいつも…うるさいんだよ」

 「えぇ…別にいいじゃないスか?なんか文句あるんだったら、腹を割って話しましょうよ」

 「あぁ…そうか…」

 そして、巽は部屋に入り、俺のギターを手に取った。

 「な、触んないでくださいよ!それは俺の魂の…」

 巽は、ギターを振り上げ、俺の頭に当てた。

 「ギャァ!」

 その途端、頭に痛みが走り、俺はうずくまった。

 「キキキキ………」

 そうだ…この頃から…巽は…殺害に…快……感…を……




 それから俺は計20人分の苦しみを味わい続けた。

 焼死し、溺死し、車に轢かれ、撲殺され、釘バットで殴られ、改造モデルガンで撃たれ、色んな死に方に遭った。

 そのうち、俺は現実世界で本当に死ぬんじゃないかと思い、最後の殺害の際には、何も感じなくなっていった。




 「はっ!」

 俺はやっと起きた。LOPを急いで取り外し、要に手鏡を要求した。そして、そこには白髪が生え、精神が崩壊した俺がいた。

 「へへへ…へへへへ…へへへへへへ………うへへへへへ…へへ」

 何故だかはわからないが、急に笑いだした。

 「イヒヒヒ…ヒヒヒ…ヒヒヒヒ……要ぇ…殺してくれぇ…」

 「フン。お前のような外道にこれぐらいですむと思うなよ。今度は自我が崩壊した人間にやると、どうなるかなぁ………」

 「あ……相手目線…」

 「まぁ、お前から見たら、地獄だと思うだろうに…でも、お前は相手目線になって、殺しをしたことがあるか?無いだろう。じゃあ、もう一回いってらっしゃ~い」

 俺は要にLOPを被らされた。

 「分かりました………来世…来世から……相手目線で………物事を………見ますぅ………」

 俺は確かに、マーダーフール(馬鹿な殺人鬼)だった。

読んでいただきありがとうございました……………

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