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蔵品怪談奇談  作者: 蔵品大樹
普通のお話
29/43

治験

奇妙な世界へ………………

 俺は室戸知彦。金が無いことを困っているフリーターだ。

 俺は元々大企業の社長の息子として生まれた。

 金持ちの息子、それは所謂ボンボンであり、俺は金を使い皆を屈服させていた。

 しかし、それに怒ったパパが、大学生の俺を勘当した。冬の事だった。

 それから俺は親に頼らずに、一人暮らしをすることを余儀なくされた。

 その時俺は、心から親を恨んだ。家から追い出され、一人で生きていかなければいけないのだ。

 そのため、俺はまだフリーターであるものの、親に対する憎悪だけが溜まっていた。

 そんなある日のこと。俺に電話が掛かってきた。相手は不明だった。

 「はい。室戸ですが…」

 「どうも、私、シバカワ薬品のCEOの三原修哉と申します」

 「あのう、ご要件は?」

 「はい。実は、我社の方で、治験の募集をしておりまして…」

 「治験ですか…」

 治験と聞くと、何か怖いイメージがある。薬の副作用で死んでしまったケースもあるため、最初は断ろうとした。

 「いや…俺はいいです…」

 「そうですか……勿体ない」

 「な、何が、勿体ないのです?」

 「実は、今回の治験の報酬、ここだけの話、100、いや、500なんですよ」

 「ご、500!?」

 その途端、俺はこの治験に参加しようと決意した。

 「それでもやらないと言いますと…」

 「いやいや、やりますやります!どんなものでもやってくださいよ」

 「さっ、さっきと違いますね。わかりました。では、7月29日に、職員の者が送迎をさせていただきますので。では」

 電話が切れ、俺は狂乱した。

 そして、きたる7月29日。家の前に出ると、そこには黒服の男と、リムジンがあった。

 「(オイオイ、治験でこんなクルマ使うか?)おはようございます…」

 「どうも、シバカワ薬品の者です。では、行きましょうか」

 俺はリムジンに乗せられると、もう一人中年の男がいた。

 「どうも、兄ちゃん」

 「ど、どうも」

 「名前は?」

 「む、室戸知彦です…」

 「俺は池端貴成。金が無い、馬鹿者さ。アンタも金を得るために治験かい?」

 「は、はい…」

 「俺はこの間、リストラされて、妻と離婚。今では妻と息子に生活費を送る日々さ。だから、俺の生活費はカツカツさ」

 「そうですか……まぁ、俺のほうが酷いですよ。元々大企業の息子、所謂ボンボンに生まれて、金を湯水の如く使い続けた結果、金が無いフリーターですよ」

 「そうか……」

 無言の空気が続くと、急にリムジンが止まった。

 「着きましたよ」

 社員の無機質な声がリムジンにこだました。

 リムジンから出ると、そこには電話の男、三原修哉が出迎えてくれた。

 「やぁやぁ、お二人共、待っていましたよ。では、治験室に行きましょう」

 そして、俺達は広い部屋に着いた。ただ単にパイプ椅子と長いテーブルしかなかった。

 「では、そこの椅子に座って待っててください」

 そして、また二人にされた。

 「………正直、リスクとか考えてます?」

 ここに着いた途端、急に怖くなってきたのだ。金を得れる代わりに死が待っているんじゃないのか。俺は体を小刻みに震わせることしか出来なかった。

 「いや、俺は別にそういうのは考えてません」

 「そうですか」

 「俺はリストラされ離婚された身。失うものなんて、何もないんですよ。死んでも、妻は悲しまないでしょうね」

 彼からは、何か悲哀を感じられた。

 それからまた数分後、三原が何かを持って、戻ってきた。

 「まず最初に、この薬を飲んでもらいます」

 「これは?」

 「これは酒の酔い醒ましの薬。飲んだ途端、スッキリしますよ」

 そして、薬の隣にビールを置いた。

 「池端さん。酒の方は?」

 「結構弱いね。というより、一口飲んだだけで酔っちまう」

 「室戸さんは?」

 「結構強い方だぜ。ビール一杯だけじゃ、酔わないな」

 「じゃあ、室戸さんは後にして、池端さん。先にやっといてください」

 「はい」

 池端がビールを一口飲むと、顔が赤くなり始め、頭を抑え始めた。

 「ぐっ…頭痛が…」

 「だ、大丈夫か?」

 「く…」

 そして、薬を飲むと、池端の顔は元に戻り、手を頭から放した。

 「本当だ。スッキリする」

 「す、凄い!」

 それと同時に、何かがテーブルに置かれた。

 「三原さん。これは?」

 「これは、96%のアルコールです」

 「96……96!?」

 俺は度数の数字に驚いた。

 「では、効果をお見せください」

 「は、はい」

 俺はそれが入ったコップを持ち上げ、飲んだ。その途端、口の中でアルコールが蒸発し、喉が痛くなった。

 「ぐっ……」

 俺はすかさず、薬を飲んだ。すると、喉の痛みが無くなった。

 「す、凄い!一級の酔い醒ましだ!」

 「そうでしょう。そうでしょう。では、ここまでが茶番です。次からが本題です。そのための薬を持ってきます」

 そして、三原は部屋を出た。

 「いや〜これなら次の薬もイケる気がするなぁ」

 「あのさ……俺、嫌な気がするんだよ」

 「嫌な気?」

 「あぁ、もしかして、次の薬は、強烈な物ではないかと」

 その時、三原が帰ってきた。

 「お待たせしました」

 そして、テーブルに二粒の薬を置いた。

 「では、この薬を飲んでみて下さい」

 そして、薬を飲んだ。

 しかし、数分経っても、効果は表れなかった。すると、池端が三原に質問した。

 「あのぅ…これはどんな薬ですか?」

 「これは…劇薬です」

 「劇薬!?」

 その途端。急に死にたくないという、意思表示か、暴れだした。

 「嫌だ!嫌だ!死にたくない!」

 「…………元気に暮らしてくれよ………」

 そして、俺達は意識を失った。




 三原が部屋を出ると、そこには室戸知彦の父、吾郎がやって来た。

 「吾郎さん。終わりましたよ」

 「三原。お疲れ様」

 「にしても、急になんで実の息子と元社員の人間を消したいと」

 「ククク、知彦は、邪魔だった」

 「邪魔?」

 「あぁ、アイツが居ることにより、私はイライラしていた。そのため、アイツが消えることによって、ストレスは解消さ」

 「元社員の池端の方は?」

 「三原よ、君もご存知の通り、私は金を横領した。その事をたまたま池端が知っていたというわけだ。念の為に、会社を辞めさせてから出ないと、私の地位が崩れる可能性があるからな」

 「にしても、アイツ等はアホだ」

 「君からアホという言葉が出るなんて、珍しいな」

 「えぇ、毒入りの酔い醒ましの薬をなんの疑いも無く飲むなんてな」

 「そうだな。ハッハッハ」

 「劇薬と言った薬はただのラムネ菓子だ!ハッハッハ!」

 二人は笑いながら雑談を続けた。

読んでいただきありがとうございました…………

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