会員制レストラン
奇妙な世界へ………
俺は千田順次。会員制レストランに入ろうとしているサラリーマンだ。
事の発端は、とある日の夜だった。部長の関内知宏に呼ばれたのだ。
「部長、仕事後に何の用ですか?」
「あぁ、最近、お前がよく頑張っているからな、少しご褒美をやろうかなって思ってよ」
「はぁ…ご褒美、ですか」
「まぁ、着いてこい、行けばわかる」
関内さんは、タクシーを捕まえると、運転手にこう言った。
「『スペシャリスト・レストラン』の前まで」
「あいよ」
(スペシャリスト・レストラン?)
その名に疑問を覚えながらも、そのままタクシーは走り始めた。
数分後、タクシーが止まり、俺達は降りた。
「部長、ここが…」
「あぁ、会員制レストランのスペシャリスト・レストランだ」
俺はつばを飲んだ。まさか、俺のような平社員が、こんな金持ちしか行けなさそうなレストランに行けるなんて、思いもしなかったからだ。
「にしても、部長、さっき会員制って言ってましたけど、俺は大丈夫なんですか?」
「なあに、紹介ぐらいだったら入ってもいいんだ」
「そ、そうですか…」
そして、俺達はレストランに入った。すると、一人の店員が部長に話しかけた。
「関内さま、会員証はございますでしょうか?」
「あぁ、これだ」
部長は財布から黒いカードを取り出した。そのカードには達筆で、『スペシャリスト・レストラン』と書かれていた。
「わかりました。横の御方は?」
「あぁ、紹介だ」
「わかりました。では、お二人共、どうぞ」
店員が道を開けると、俺達は席に座った。
「あぁ…」
周りを見渡すと、スーツを着た中年の男や、ドレスをきた女性もいた。
「まぁまぁ、そんなそんな緊張すんなって」
「で、ですが…」
「なぁ、実はこの店、アノ有名人も行ってるんだってよ」
「アノ有名人?」
「あぁ、次期総理大臣とも言われている、官房長官の久慈稔もココの行きつけなんだ」
「は、はぁ…」
「まぁ、取り敢えずメニューでも見ようか」
部長に促され、取り敢えずメニュー表を開いた。そこには、『スペシャリストセット』としか、書いていなかった。飲み物の種類も書かれていなかった。
「スペシャリストセット?」
「あぁ、そうだ、この店、メニューが一つしかないんだった」
「そ、そうなんですか…」
そして、部長が店員にスペシャリストセットニ人前を頼んだ。
「にしても、スペシャリストセットだなんて、どんなものなんですか?」
「まぁ、前情報なしで待ってくれれば、よく楽しめるぜ」
「そ、そうですか…」
それから数分後、二つのワイングラスと、なにやら高級そうなワインを持った店員が来た。
「こちら、搾りたてのワイン、『闘牛』です」
店員はグラスにワインを入れた。
「では、お楽しみくださいませ」
それだけ言うと、店員はそこを去った。
「では、君の成長に乾杯」
グラスが、『カンッ』と鳴ると、俺はワインを飲んだ。口当たりはいい、まさに旨いワインだ。
「旨いワインですね」
「あぁ、ここのは搾りたてのワインしか使わないからな」
「へぇ〜」
それまた数分後、最初に前菜が来た。
「こちら、トマトとモッツアレラチーズのカプレーゼです」
テーブルに置かれたのは、くし切りにされたトマトとモッツァレラチーズにオリーブオイルと塩、黒胡椒がかかったものだった。
「これはカプレーゼですか?」
「あぁ、そうだ。食べたことあるのか?」
「はい。親戚にイタリア料理店を経営している人がいまして、そこのカプレーゼを食べたことがあって」
「そうか、でも、ここのはその親戚がやってるものより美味いだろうよ」
そんな事を言われつつ、俺はチーズとトマトを一緒に食べた。
「…………美味い!」
「あぁ、ここのは一級の物しか使わないからな。美味いのも当然だ」
そして、二人でカプレーゼを食べ終わる頃には、すでに主菜もやってきた。
「どうぞ、こちら、ステーキになります」
テーブルに置かれたのはただのステーキだった。
(もしかして、これも一級だったりして…)
俺はそんな淡い期待を寄せながらも、一口、ステーキを頂いた。しかし、今までの料理とは裏腹に、筋っぽく、硬かった。
「な、なんで……こんな不味いんだ」
「ん?どうした?」
俺は腹が立ち、その場を去ろうとした。すると、店員が俺を取り囲んだ。
「な、なんだよ…」
「まだ、お客様は料理を全て食べ終えていませんでしょう」
「そ、それが何だ!?」
「貴方はまだ会員証を持っていないでしょう。もし、ここを抜けたいのならば、会員証を買ってください」
「つ、月どれぐらいだ?」
「月一億でございます」
「い、一億!?お、俺にそんな金は払えねぇ!」
「そうですか…」
すると、急に意識が朦朧とし始めた。
「な、なんだ……急に眠たく…」
そして、俺はその場に倒れた。
次に目を覚ましたのは手術台の上だった。
「な、なんだよ!ここ!」
隣には部長がいた。
「目覚めたかい?千田くん」
「な、なんで、部長が?」
「冥土の土産に教えてやろう。お前は生贄になるんだよ」
「い、生贄!?」
「実はね、社長は悪魔信仰者でね。悪魔に差し出す為の生贄が必要なんだ。だから、君は今から内臓を抜き取られた血肉と化すんだよ。そのために、今回、あの例のレストランに呼んだんだ。最後の晩餐として旨いワインやカプレーゼを食べてもらったよ」
「ひっ…」
「あぁ、大丈夫だ。内臓はそれを欲している者の為に渡してあげるからねぇ」
「………」
「あぁ、そうだ!あのレストランのオーナーさん、実は社長と知り合いでねぇ、わざわざ紹介してくれたんだよ!ありがたく思ってくれ」
そして、部長はその場を去り、メスを持った男達が現れた。
「い、嫌だ!嫌だ!ママー!ママー!」
そして、そのまま麻酔を入れられた。
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