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蔵品怪談奇談  作者: 蔵品大樹
普通のお話
13/43

伝説の謝罪会見

奇妙な世界へ……………

 俺は春日優次。謝罪会見中に困惑してしまった男だ。

 俺の仕事はマネージャー。担当は、郷田陽太。今ウハウハの芸能人だ。

 郷田は幼い頃から子役として働いていて、『神童』として呼ばれていた。

 そして、今では流行りの俳優として働いている。俺はその幼い頃からのマネージャーだ。

 マネージャーの仕事はいつも大変だ。マネジメントは勿論、次の仕事の準備や指示、運転等の仕事があるものでもう体はクタクタだ。

 芸能界というものを見たいが為にマネージャーという仕事を選んだものの、今じゃ後悔している。なんなら、辞めたいと思った事も多々あった。しかし、郷田のサポートをするため、辞めるにも辞められない。あぁ、俺の人生、いったいどうなることやら……………



 そんなある日の事、俺に電話があった。掛けてきた相手はどうやらコンビニのようだ。

 「はい、春日ですが…」

 「あぁ、貴方が郷田さんのマネージャーさん?」

 「はい、そうですが…」

 「実はね、郷田さんね、万引きしたみたいなのよ」

 「えっ!?」

 まさに頭を殴られたような衝撃が走った。

 「そ、それは…じょ、冗談じゃ…」

 「いやいや、冗談じゃないですよ」

 「……………」

 「取り敢えず、来てください。場所は要島町のトレラックです」

 「わかりました…」

 俺は郷田が万引きをした場所まで向かい、そこの店長と郷田がいる部屋に入った。

 そこに入ると、もう二人はいた。

 郷田は自分がやった事を後悔しているのか、うつむいていた。

 「誠に申し訳ございません!」

 「はぁ…謝っても、何もこっちにメリットなんて無いんだ。謝らないでくれますか」

 「で、では、慰謝料ならいくらでも払います!それでどうか…」

 「はあ…わかりました…じゃあ、今回はこれで手打ちにしましょう」

 「あ、ありがとうございま」

 「その代わり、謝罪会見を開いてもらう。それで、私の心も晴れる」

 「わかりました…」

 俺と郷田がコンビニを出ると、俺は郷田に叱った。

 「全く!マネージャーの気も知らないで、何をしてるんだ!このバカモノ!」

 「すいません…」

 「にしても、何で万引きなんか…」

 「ムシャクシャしてしまって……………」

 「ムシャクシャだとぉ……はぁ…」

 俺は頭を抱えた。




 それから数日後、郷田と俺は謝罪会見を開いた。

 「えぇ…では…謝罪会見を始めたいと思います……………」

 この謝罪会見を見ている者はマスコミの奴らばっかりだ。

 「では、今回の件について、まず、郷田の方から話せてもらいます」

 俺は郷田に目配せすると、郷田は話し始めた。

 「では、今回の件については、私が有名コンビニチェーン、トレラック要島店で、万引きを犯してしまいました」

 「えぇ、その際、我々からは既に店側の方に慰謝料を払っております………」

 すると、記者の一人が野次を飛ばした。

 「あのぉ、別に店側に慰謝料を払っただけじゃ、誠意を見せたわけじゃないですよね?何なら、この際、謝ってみせてください」

 「(ぐうぅ、なんて奴だ)まぁ、既に我々はもう店側に謝っております…」

 「わかりました。ですが、郷田さんに、今ここで謝ってもらうことは可能でしょうか?」

 「……………わかりました」

 俺はまた郷田に目配せをし、郷田は、席を立つと、床に正座をして、土下座をした。

 「この度は!誠に申し訳ございませんでした!」

 まさに誠意という言葉が似合うポーズだ。

 「ははぁ、わかりました。では、盗んだ物を言ってくださいよ」

 「はい…」

 いやいや、別に答えなくて良いだろうと思いつつ、郷田は質問に答えた。

 「えっと。ツナマヨおにぎりと水です…」

 「はい。わかりました」

 記者のそっけない態度に俺は怒りそうになったが、別の記者が郷田に質問をする。

 「じゃあ、なぜ、万引きをしたんですか?それを教えて下さい…」

 「それは、郷田本人がムシャクシャして…」

 すると、郷田が泣きながら答えた。

 「それは……いつもお世話になっている人にあげようと思ったからです……………」

 「はぁ?」

 驚愕した。オイオイ、俺にはムシャクシャしてやったとしか言ってなかったじゃないか。話が違う。

 「ぐう……本当に…すいません……………ウワァァァァァァァァァァ!」

 すると、郷田は机に突っ伏して、泣き始めた。

 無論、俺は困惑した。何故なら、大の大人がこんな真剣な場で泣き始めるからだ。

 「すいません、今回は郷田が落ち着かないようで、また後日開かせていただきます」

 俺は郷田を抱えて、そこを去った。記者は『待て!』や『ちょっと待って下さい!』と言った気がするが、俺達はそのまま車に乗った。

 車の中、俺は郷田に問い詰めた。

 「オイ!なんで、俺にはムシャクシャしたって言ったのに、何で謝罪会見では別の理由になるんだ!」

 すると、郷田は急に落ち着き、冷静に言った。

 「だって、謝罪会見で優しいキャラを付けれれば良いかなぁと思ってしまって……………」

 「くぅ………」

 俺は歯を食いしばった。



 それからというもの、郷田は少しの謹慎期間の後、芸能界に返り咲いた。そして、あの記者会見はネットで、『伝説の謝罪会見』として、有名になった。無論、テレビでは郷田が泣いている所のみを抜粋して報道されたため、郷田はしばらくネット民にいじられた。

 その後、俺はマネージャーの仕事を辞めた。今ではコメンテーターとして名を馳せている。

 本当に悪人というものは怖い。何故なら、悪人というものは、簡単に自分を善人に出来るのだから。

読んでいただきありがとうございました……………

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