兄貴の描いた絵
奇妙な世界へ……………
俺は倉持憲人。奇妙な兄貴を持つ中学二年生だ。
うちの兄貴の名は雅司。高校三年生の男。実は、兄貴は高校でいじめられていた。
いつも帰ってくる兄貴の姿はボロボロ。内出血する肌、汚れている衣服、無くなっている教科書。いつも心配している父さんと母さんだったが、兄貴は『大丈夫、少しヤンキーと喧嘩しただけだから』とだけ言っていた。
しかし、唯一俺にだけ、その見た目の理由を教えてくれた。
どうやら、クラス全員でいじめをしてきて、そのいじめの主犯格は、まさかの政財界の大物を父に持つ男だ。更には教師も見放すもんだから呆れて物が言えなかった。
兄貴は泣いていた。何故なら、『親に迷惑を掛けられないから言えない…』と言っていたのだから。
そんなある日の事、兄貴は帰ってきた。その時、兄貴は俺にだけ小声でこう言った。
「皆を見返すような絵を描く」
それだけ言って、部屋に入った。夕飯を食べずに。
その日から、兄貴は部屋から出ることはなかった。部屋をノックしてもなんにも言わず、両親に言われても兄貴は部屋から出てこなかった。
ドアは内側から鍵がかかっていて、開けることが出来ない。どうすることも出来なかった。無論、両親も困った。
俺は、兄貴に何があったのか知りたかった。
それから数年後、俺も中学を卒業し、高校を卒業した後、大学一年生になっていた。兄貴の年齢はもう23くらいだらう。
そんなある日の事、朝食を摂っていると、兄貴の部屋からドアを開ける音がした。そして、兄貴はリビングに来た。
「皆!絵が出来たよ!」
兄貴の顔はもう、ソレを決めてるような顔になっていて、体はガリガリ、髪はボサボサで長くなっていた。兄貴の手には一枚の絵を持っていた。その絵には、暗い色が多く、そこに薄く、『魔佐』と『死』と書かれていた。
そして、両親は喜びの声をあげるのではなく怒りの声をあげた。
「雅司!何だこの絵は!?数年間無駄にして、こんなちっぽけな絵を描いたのか!?それを渡せ!」
兄貴が父さんに絵を渡すと、その絵を父さんは破った。
「……………」
「父さんの紹介で、会社を紹介するから、スーツやらなんやらを準備しなさい」
そこまで言うと、父さんは黙々と食事をした。
「…………………………」
兄貴は残念そうに部屋に戻った。
ある日の事、兄貴宛に手紙がきた。
「兄ちゃん、手紙!」
「……………」
兄貴は父さんに厳しく言われた後、部屋に引き籠っている。
「じゃあ、読むね」
「……………」
「七月三日、市ノ瀬町 居酒屋はるさわにて、同窓会を実施します」
「………!?」
「どうしたの?」
「ありがとう」
兄貴はそれだけ言うと、そのまま黙った。
その時、母さんの悲鳴が響いた。
「キャーーーー!」
「どうしたの母さん!?」
俺は悲鳴の元に向かうと、そこには意識が無く倒れていた父さんがいた。
「父さん!」
「きゅ、急に倒れて…」
「母さん、救急車!」
「わっ、わかった!」
母さんに救急車を呼ばせ、俺は人工呼吸をした。
「生きててくれよ…父さん!」
そして、父さんは救急搬送されたが、命に別状はなかった。どうやら、貧血を起こしたんだとか。
それから、一家に不幸が起こった。
母さんが火傷したり、皿が割れたり、提出するはずのノートが失くなったり、小さな不幸から大きな不幸が降り注いだ。
そして、きたる七月三日、兄貴は、髪を切り、短髪になっていた。
「じゃあ、行って来るよ」
そして、兄貴は家を出た。
俺は一つだけ不可解に思った。
(何故、母さんと父さんと俺にだけ不幸が起こって、兄貴だけ不幸がおこらなかったんだろうか?)
俺は兄貴の部屋に入ることにした。
そして、俺は目を疑った。
そこには、大量の絵が飾られていたのだ。
その絵を見た瞬間、俺は意識を失った。
俺は倉持雅司。俺を虐めてきた奴らに復讐する鬼だ。
俺は高校に入り、虐められていた。理由は『ウザかったから』と言われた。納得が行かなかった。
そして、ある日、俺は黒魔術なる本を見つけた。そして、その中に呪いの絵を描く方法なる物があった。絵を描くために、その日から俺は家に引き籠もった。憲人に『皆を見返すような絵を描く』とだけ言って。
何枚も絵を描き、その中の一枚を家族に見せた。一応、練習台にするためだ。しかし、父さんは怒った。
それからまた、俺に機会が訪れた。それは同窓会だ。
そして、同窓会の日。髪を切り、例の絵を持っていき、同窓会の場所へと向かった。
そこに着き、扉を開けると、そこには憎き奴らが待っていた。
すると、主犯格の男、足立啓悟が来た。
「おっ!アホが一名いらっしゃいました〜」
どうやら、あの性格は大人になっても変わらないようだ。まぁ、そのお陰で絵も出しやすい。
そして、俺は足立に絵を見せた。すると、足立は皆を呼び、笑いあった。
「オイオイ!何だよこのダサい絵!?キモッ!破いてやるよ!」
そして、足立はビリビリに破った。
それからして、俺はそこを出た。
帰る途中、銃を持った男がはるさわ方面に行ってた気がするが、そんなのどうでもいい。
家に帰ると、家には誰もいなかった。
それを気にすることはなく、俺はリビングのテレビを付けた。すると、ニュース速報が流れてきた。
「そっ、速報です!市ノ瀬町の居酒屋はるさわにて、銃撃事件が発生しました!中にいるのは、犯人の男のみであり、中にいた人は全員惨殺されました!」
俺の口には笑みがあった。
読んでいただきありがとうございました……………




