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アリス学園は大騒ぎ?!

ハロウィンイベント(プレゼント・続編)

作者: 水崎雪奈

 今日はハロウィンの一週間前。アリス学園では毎年この時期に学園祭が開かれるため、クラスでは出し物やお菓子関連の話が飛び交っている。それは、私のクラスでも何も変わらないわけで…。


「――リリアさんは何がやりたい?」


 声をかけられ、机に突っ伏していた顔を上げる。目の前にいたのは私のクラスのクラス長。そういえば、今は出し物関連の話し合いだったっけ。

 黒板に書いてある出し物をチラッと見て、適当に答えようとしたら――。


「テストが優先だからってなんでも良いんじゃない?ね、リリア」


 あれ、朱梨(あかり)じゃん。もしかして、隣のクラスの話し合いもう終わったのかな?

 っと、紹介を忘れてたね。私の名前は佐藤(さとう)リリア。知ってる人は知ってるかな。これでもハーフではない。当て字出来ないからって理由でカタカナなだけ。んで、さらっと酷いことを言ってきたのは、寮でルームメイトの宮原(みやはら)朱梨。小学生のころからずっと仲はいい。


「それは流石に酷いでしょ。後、先生がいないからって話し合いの時に他クラスに顔を出すな」

「えへへ。クラスの人から許可貰ったから」

「あのねぇ…」


 この学年の問題児と言われる朱梨。先生に嫌われているけど、性格や人とのかかわり方は優しいからか、学年の人気者なんだよね。だから、普通に頼み事も聞いてくれるんだけど…。


「まぁ、いいや。えっと、確か何がやりたいかっていう話でしたよね。…私はお化け屋敷に一票で」

「分かった。ありがとう。うん、これで出し物決まったかな」

「あ、最後の一人だったんだ」


 これが良いって意見を出していって、その中で投票して多数決を取る。これで良いのかって決め方な気はするけど。で、皆が投票しきったと。何になったんだろ。


「へぇ、このクラスはゴーストカフェなんだね。これは当日が楽しみだなぁ」

「じゃあ、これから制限とか色々と考えないと」


 カフェメニューとか内装については明日の放課後考えることになったので、皆で片づけて寮に戻る準備をする。…と言うか。


「あ。朱梨、荷物持ってきたの?」


 ふと気になって、朱梨にそう聞く。鞄、私の目には見えないんだけど。

 先生も来そうだし、鞄があれば言い訳になりそうな気がする…。けどまぁ、いつもの事か。


「あ、持ってくる。…もしかしてこのまま下校?」

「そうだね。朱梨、今日は食材買い出しに行きたいんだけど一緒に商店街まで行く?」

「行く行く。…あ、やばい。寮で待ってて」


 廊下を歩く足音を聞いて、朱梨はそう言い残して急いで出ていく。あ、廊下走ると先生に…。


「廊下は走らないように。気を付けてくださいね」


 そうなるよねー。捕まらなければいいけど…。ルームメイトだって事がバレれば連帯責任になることがある。と言うか、大体そうなるもんなんだけど。

 朱梨に言われたように寮に戻って待つことにするか。


「…あ、帰る?」

「はい。巻き込まれたくないので」

「それじゃあ、この紙持っていって。明日集めるから」


 教室を出ようとしたタイミングで、机で作業を続けていたクラス長に声をかけられた。

 渡された紙には、カフェの仕事の割り振りに関する内容が書かれている。皆も貰って行ってるね。…あれ、これって手書き?クラス30人ぐらいいるんだけど。


「それじゃあこれで」

「うん。また明日ね」


 みんなと挨拶をしつつ、廊下に出る。…隣のクラスから声が聞こえてきますねぇ…。

 あ、そうだ。学園は小学校・中学校・高校と校舎が別れてて、1階は職員室とか食堂しかない。それで4階建てだったりする。私は高1だから2階。階段下らないといけないの面倒くさいんだよなぁ。


ー1時間後ー

 勉強していた手を止めて机に置いてる時計に目を移す。…あれからしばらく集中してたんだな。


「――そう言えば、朱梨は?」

 

 そろそろ帰ってきてもよさそうだけど、まだ帰ってきてはいないらしい。反省文でも書いてるのか…。

 んー、一緒に買い物に行きたかったけど17時近くなっちゃったし、一人で買い物行くことにしようかな。遅い朱梨が悪いんだもんね。


「えっと、連絡しておいて。鍵は朱梨も持ってるから鍵かけていっていいね。あ、在庫確認しておこ」


 朱梨にメールを送って、立ち上がる。そのままキッチンに置いてある冷蔵庫を開いて中を確認する。うーん、在庫切れの食べ物は無いか。夕飯どうしようかな。

 でも、飲み物とかお菓子も減ってきてるし。せっかくだから安くなってるものがあれば買ってくる形にするのは…。ありだな。何かしら安くなってるといいけど。


「それじゃあ、行ってきますか」


 靴を履いて寒くなってきた外に出る。夕飯、カレーにしようかな。メニュー考えるのも面倒くさいし、この前使ったルーもある。うん、そうしよう。早く帰ってこないといけないな。


ー商店街ー

 特に目的もなくふらふらしていたら、とある貼り紙が目に入る。


{ハロウィンイベント開催中

 一番最初に謎を解いた人には特別なプレゼントを用意してます}


 どうやら、この商店街にあるほかの貼り紙に書いてるヒントを集めて、合言葉を作ると何か良いことがあるらしい。…んー、安くなるとかならやる気が起きるけど…。


「今はとりあえず、食材の買い出しが先決かな」


 朱梨が知ればきっとやりたがるだろうし。さて、カレーに入れる野菜と肉系。うん、それぐらいかな。テスト前はテストに集中したいし、文化祭もある。減ってきてた食材は全部買わないといけない。

 安くなるのは水曜日と土曜日。今日は水曜日だから、丁度買い物したかったんだけど…。朱梨がいないしなぁ…。


「あれ、リリアちゃんじゃない?久しぶりねぇ」

「お久しぶりです」


 しばらくここに来てなかったとはいえ、そんなに会ってない人いないと思ったんだけど。

 

「もしかして、買い物の途中?もしよければ、私のところの野菜見るかい?」

「…おばさんのところ、再開したんですか?!丁度野菜探していたところだったので凄い嬉しいです」

「あらまぁ。それじゃあ、ついておいで」


 出会ったのは、去年のクリスマスの時にお世話になった八百屋さんのおばさん。あれ、そう言えばしばらく見なかったかも。この前八百屋さん行こうとしたときに、休業の張り紙もあったし。


「そう言えば、商店街でハロウィンイベントやってるんですね」


 八百屋さんの前にも貼ってあった紙を見て、私はそう聞く。

 ここに書いてある文字と最初に見た2文字は、ト。もうちょと情報は欲しいけど…。安くなるならやらない手はない。


「そうだね。リリアちゃんも挑戦してるのかい?何か所かは謎解きになってたりするって話だけど」

「私は挑戦してないですけど、解いたら何があるのかは気になりますね」

「そうかい。ちなみに言っておくけど、お金関連ではないらしいよ。あれはクリスマスの時だけだってさ」


 …心の声読まれたって感じがする。

 学校の関係上、バイトが出来ないから自分でご飯作る際には親からお金を貰わなきゃいけない。それに毎月の上限が決まってるから、やりくりするのも大変なんだよね。だからこそ、安い日だけを狙って買い物してるわけだけど。

 ここの商店街の人はアリス学園の事知ってるもんね。


「――別にそこは気にしてません」

「で、何が欲しい?」


 スルーですか。まぁ、気にしないけど。

 んー、今日は普通のカレーだし。それに合うものと言えば…。


「えっと、それじゃあ。人参とじゃがいも。後は玉ねぎと…。あ、トマトも下さい」 


 ほかにも何かつけたいところだけど。サラダがあってもねぇ…。

 言った食材を袋に詰めてもらって、お金を払う。


「野菜のラインナップ的にカレーかな?じゃあ、これをおすそ分けしてあげよう」

「これって、しょうが。ですか?」


 八百屋さんのおばさんに渡されたのは、小さく切り分けられたしょうが。寒くなると、よく見かけるものだけど…。


「辛いもの苦手でもしょうが食べれるなら、カレーに入れて食べな。きっとおいしくなるよ」

「…ありがとうございます」

「ほれ、ササっとカレー作りに行きな。朱梨ちゃんが待ってるんじゃないか?」


 おばさんはそう言って、笑って私の背中をたたく。料理するようになってから、商店街の人との交流も増えて、私にとっては嬉しい変化だろう。それに、こうやって気にかけてくれる人もいるしね。

 さて、それじゃあ。寮に戻りますか。


「ですね。それでは」

「また来なよー」


 おばさんと別れて、商店街を足早に通り過ぎていく。しばらく必要なものは無いし、うん。これだけで充分だね。土曜日には朱梨と買い物に来ても良いかも?今日は時間無くてほかに必要なもの買えなかったし。それにハロウィンイベントも楽しそうだったしね。


ー帰宅後ー

「…ただいまー。あれ、いいにおいがするー」


 カレーを作っていたら、疲れ切った声が玄関から聞こえてきた。凄く時間かかったのかな。

 私は間に合ったことに安心したから、しょうがを使ったカレーの味の調節をのんびりしてる。んー、しょうがの味って意外とあうのに驚いてる。いや、メニュー検索して作ってるだけだけど…。


「お帰り、朱梨。今日の夕飯はカレーだよ」

「やったー!って、あれ。しょうがが出てる。これ、何に使うの?」


 ふらっとキッチンに入ってきた朱梨が、まな板の上に乗せたままのしょうがを見てそう聞いてくる。


「カレーに隠し味として入れてもおいしいらしいよ」

「え…。カレーに?」

「うん。あれ、朱梨ってしょうが嫌いだったっけ」


 手ごたえの無い反応が気になって、私は朱梨にそう言う。好き嫌いは最初の時に一通り聞いたから、大丈夫だと思ったんだけど。

 ちょっときょとんとした後、朱梨は首を横に振った。


「ううん。そういう訳じゃないんだけど。珍しいよね、しょうが使うなんて」

「あぁ…そう言う事ね。いやぁ、八百屋さんのおばさんから貰っちゃって。カレーにも合うからよければって。実際おいしいんだよ、これが」


 朱梨にそう言われて、私は確かにそうだよなぁ…と思う。…あ、そうだ。


「そう言えば、商店街でハロウィンイベントをやってるらしいんだよね。謎解きがメインで、解くと何か貰えるらしいんだけど…」


 私はそういうのにあんまり興味は無いんだけど、朱梨ってイベント系大好きだし。ハロウィンは来週の土曜日。まだ時間はあるし、出来るんじゃないかな。


「へぇ。そんなのやってるんだ。ちなみに、もうクリアしてる人っているの?」

「どうなんだろう。企画考えた人に聞いてみればわかるとは思うけど、張り紙のところにはクリアしてる人の事は書いてなかったかな」


 キラキラした目でこっちを見てくる朱梨に、私はそう言う。やっぱり興味持ったね。

 ハロウィンのイベントで報酬がお金関連じゃないとなれば、お菓子とかくれるのかな。報酬には興味が湧くんだけど、自分がやるというのは面倒くさいし。


「ふぅん。じゃあ、今週の休みに行こうかな。リリアもね」

「…え?ちょ、ちょっと」

「早く夕飯にしよー。私お腹空いちゃった」


 いや、ちょっと待て。今の意味ってどういう…。

 そう言おうと思ったけど、テンション高くなってる朱梨にそんなこと聞けるわけがない。


「はぁ…。仕方ないな。朱梨、お皿にご飯よそって持ってきてくれる?多分炊けてると思うから」

 

 味の調整が終わり、私は朱梨にそう伝える。今の時間は…19時手前ってところかな。


「はーい。あ、リリアの分も持って行こうか?」

「うん。ありがと、朱梨」

「いえいえー」


 ご飯を盛ったお皿を二つ持ってきた朱梨から、片方受け取ってカレーをかける。…あ、カツがあってもよかったかな。今更だけど。


「それじゃあ、食べよっか。もう待ちきれないっぽいし」

「いいにおいするんだもん。…じゃあ、いただきます!」

「いただきます」


 机を囲んで、手を合わせて食前の挨拶をする。


「ん、おいしい」

「うんうん。流石、リリア」

「レシピ見ながらやっただけなんだけどね」


 おいしいって言いながら食べる朱梨を見ながら、私もカレーを食べる。二人前の少量しか作らなかったけど、これなら作り置きしても食べてくれるかな。いつものカレーより食いつきが良い気がするし。

 今度、考えておこ。


ー土曜日ー

 ピピピピ。ピピピピ。ピ…。カチッ。


「――ん、朝か」


 小さい音量で鳴る目覚ましを止めて、体を起こす。今の時刻は朝の9時。今日は眠かったから遅めにしたんだっけ。…朱梨はまだ起きてないね。

 朝ごはんを早めに用意しておいたり、寒くなってくるこの季節は部屋を暖めながら朱梨が起きるのを待つ。


「…朝ごはん…の前にカフェオレ淹れよ…。流石に寒い」


 机の近くにあるストーブを点けて、キッチンに行く。まだそこまで寒くはないけど、パジャマ変えた方が良いな。朝がつらいし。


「何食べよう」


 カフェオレを飲みつつ、冷蔵庫を物色。んー、これといって食べたいものはないな。

 卵もそろそろ無くなるし…。あ、でも残ってるのか。じゃあ…目玉焼きでも作っておこうかな。そろそろ朱梨も起きるでしょうし。

 カフェオレの入ったマグカップを一回机に置いてきて、料理を開始する。ベーコンかハムもあると余計においしくなるんだけど…あ、あったあった。


「朝だから、ハム一枚。これを焼きつつ、卵は半熟かな」


 フライパンを温めてそこに卵を割って入れる。お、綺麗にいった。良いねー。

 ハムもその横に置いて、一緒に焼く。半熟にするには弱火で2分がおすすめって書いてあるのをこの前見たから挑戦しよう。


「タイマーってあったっけ…。んー、スマホ使うか」


 今日買い物行くときにお金に余裕があれば、タイマー買うのもあり。というか、毎回スマホで時間測るの面倒くさいんだけど…。

 スマホの時間を見つつ、ちょっと様子を見る。もうそろそろ1分切るし、お皿取ってくるか。


「あれ、朱梨起きた?」

「うん…。おはよ、リリア。朝ごはん何?いいにおいする…」

「おはよ、今日は目玉焼きだよ。トッピングはハム」


 ベッドに腰かけて眠そうな顔をする朱梨とそう話して、キッチンに戻って目玉焼きをお皿に移す。

 そのまま、もう一個焼いて机に持っていく。…あ、カフェオレ冷めかけてる。飲んじゃお。


「…もぐもぐ」

「どう?っていうか、食べ始めるの早くない?」


 先に食べ始めていた朱梨を見て、私は呆れた表情でそう聞く。朱梨はしっかりと飲み込んでから口を開いた。


「だって…お腹空いて目が覚めたもん。あ、すごくおいしいよ」

「おいしいなら良かった。そう言えば、今日の予定は商店街へ行くことだけだったっけ」


 食べながら、朱梨に確認を取る。朱梨は口をもぐもぐさせながら、首を縦に振った。

 謎解きとかって本当に興味ないんだけど、テストは来月だし。朱梨からずっとお願いって言われてるしなぁ…。付き合うって言った私も私だけど。


「うん。付き合ってね、リリア。あ、ごちそうさまでした」

「ごちそうさまでした。あ、朱梨。今日の食器洗い頼んでもいい?」

「良いよー」

 

 食器を渡して、自分の学習机の上を整理する。うわぁ…思った以上にごちゃごちゃになっちゃってる。

 明日の勉強をするスペースを空けようと思ったんだけど…。まぁ、軽く片付けて行く準備するか。


「楽しみだなぁ。何が貰えるんだろ。お菓子の詰め合わせとかだと嬉しいよね。ね、リリア」

「確かに。最近、お菓子の消費増えてきてるしね。テストも近いから甘いものとかでも良いかも」


 わくわくして弾んだ声で話しかけてくる朱梨に、私もちょっとテンション高めに返す。今日は髪の毛整えて、服はこのままでもいいかな。上に羽織るのは薄めのジャンバー。お、いい感じ。

 後は、朱梨の準備を待つだけ。


「あ、もう準備終わったのー?」

「そりゃあ、もちろん。お買い物袋も持ったから、帰りは買い物して帰ろうかなって」

「そう言えば、今日も安いんだっけ。なら、丁度いいかもね」


 バタバタとする朱梨を見ながら、忘れ物が無いか確認をしておこう。お財布と袋。それからスマホ。

 バッグは小さめのものにしたけど、袋はもう一個予備でもってあるから大丈夫かな。


「よし。それじゃあ、レッツゴー!」


ー商店街にてー

「あ、あったあった。これが謎解きの紙?」 

「ちょ、ちょっと待って…。足早過ぎでしょ…」


 入り口からお店の横にある柱を重点的に探す。朱梨の方が足早いし視力も良いから、見つけるの早いなぁ…。私が遅いだけってのもあるけど。

 そういえば、休みなのに人少ない気がする。宣伝してないのかな?結構面白いイベントだと思うけど。


「謎解きって言うか…」

「あぁ…これって、このイラストの中にある文字を探せ的な奴か」


 りんご、りす、不思議の国のアリス…。子供が解くような問題だからか、難易度は結構簡単。って思ったけど、一問目だから?何問まであるの…。


「これは簡単。り、だね」

「うん。普通に単語書いてるのもいくつかあったから――」


 メモにり、とー2、小さいッ。それに伸ばし棒“ー”。まだまだ始めたばかり。まぁ…大体想像通りだなって言うのは分かったけど…。

 そのまま、他の謎解きも解いていく。あ、単語のやつも…orって書いてあるね。


「謎解きは三問だけっぽいね」

「だね。3分の2って書いてある」


 二問目は、部屋の○○○○。その頭文字が使われると。これって、単語を集めてとある言葉を作るタイプだね。集めて並べ替えて…。スタンプラリーと似た感じがするかな。

 で、最後の問題は。書いてあるのはトマトの絵。そして、それを三分割して一個手に取ってる…。これって問題なの?


「謎解きって言っても結構簡単だったね。これも分かったよ、と。でしょ?」

「これで集まりきったかな。ここ出口だし。…今年から始まったイベントらしいし、これから難易度上げていく可能性もあるね」

「謎解きって考えるの大変だよね。来年は協力したいかも」


 メモ帳に記入された文字を並べなおす。これは…。


「“トリック・オア・トリート”!…で合ってる?」


 読み上げたのに、不安そうな顔で朱梨が私に確認してきた。合ってるよ、ちゃんと。


「それじゃあ、えっと…。どこに行けばいいのかな?」

「うーん…。多分本部で良いと思うけど…。あれかな、商店街の職員室的な場所」

「あー!じゃあ、行ってみましょ」


 商店街にある事務室。って確か商店街の出口からすぐなはず。ここは出口だから…。

 道に出て左右を確認していたら、入り口にあったポスターと同じ看板を見つける。


「あそこか。誰もいなくない?」


 朱梨も気付いて、二人で向かう。でも、確かに朱梨の言うように人の気配はない。


「こんにちはー」

「あら、リリアちゃんたちじゃないの。どうしたの?」


 開いてるドアから声をかけてみたら、精肉店の看板娘である優花(ゆうか)さんに出会う。

 あれ、もしかして優花さんが主催者?いや…。朱梨と似たタイプの人だったから、やったとしても何一つ違和感はないんだけど。


「優花さんだ!」

「えっと、ハロウィンイベントの謎解き終えたので、来てみたんですけど…」


 テンションの上がった朱梨を抑えて、優花さんに事情を説明する。優花さんは、うんうんと頷いた後、すっごいいい笑みを浮かべてこっちを見てきた。


「おお!やってくれたんだ?お父さんー!私の言ったとおりだったよー」

「え、あの。…え?」


 興奮冷めやらぬ状態で奥に走っていく優花さんを見て少し戸惑いを覚える。嬉しいのは分かるけど、事情説明してくれないかな…。


「――すまないな。後、落ち着け。優花」

「はーい。でも、やってくれる人いるんだよ?やって正解だったじゃん」

「それはそうかもしれないが…」


 優花さんをなだめつつ、奥から出てきたのは優花さんのお父さん。…まぁ、こうなる人をもう一人知ってる身としては、心中察します。って感じ。

 さて、本題に入ってほしい所。と言うか、そのためにある場所じゃないの…?


「あの…」

「優花。報酬を持ってきてくれるか?」

「うん。ちょっと待っててね」


 聞こうとしたら、優花さんのお父さん…。えっと、名前は魁人(かいと)さんだから、魁人おじさんってことにしよう。魁人おじさんは、優花さんにそう言って優花さんが取りにまた奥に行く。

 ずっとそわそわしてる朱梨を一旦落ち着かせて、戻ってくるのを待ちますか。ちょっと聞きたいこともあるし。


「…あの、ちょっと気になることがあるんですけど、聞いてもいいですか?」

「ん?俺と優花の答えられることならいいが」

「それじゃあ…。どうして、このイベントを開催しようと思ったんですか?」


 私は魁人おじさんにそう聞く。おじさんがこういうのに興味を持つことって無いと思うし、商店街ではお店ごとに何かやることはあっても全体的に何かやることは今まで無かった。

 去年のクリスマスは町内会の人達が考えてやったらしいけど、ハロウィンイベントはどうやら話の流れ的に優花さんが先頭を切ったっぽい感じがするんだよね。


「そうだな。最初は、優花が季節のイベントに合わせて何かやりたいってところから始まる。だが、具体的な案とかがあってもこの街には子供が少ないし、ハロウィンはアリス学園でも公開する学園祭があるだろ?だから、商店街でやっても意味は無いと反対したんだが…」


 魁人おじさんはそこで区切って、箱を抱えてきた優花さんが続きを話してくれた。


「私が押し切ったの。で、土日に盛り上げようって話になって今日から頑張って宣伝してるんだけど…」

「閑散としてますけど」

「そう。上手く行かないのよねー。新しいイベントなんて特に…」


 優花さんはそう言ってしょんぼりとする。んー、何かお手伝いしたいところだけど…。いい案無いかな…。


「――あ、じゃあ!アリス学園と合同にするのは?」

「今からじゃ今年の学園祭には流石に…。ん?あ、そうか。宣伝大使になればいいのか」

「そうそう。学園祭は一般公開がお昼過ぎの2時まで。だから、その後に商店街でもイベントやってますって宣伝するの。どうかな?」


 朱梨の案に私も便乗して、二人に提案してみる。自分で言うのもなんだけど、私は成績優秀で先生からの信頼が厚い。朱梨は前に説明したように、学年の人気者。先生からの評価は低いけど…。

 お互いをカバーし合えば、それぐらいなんのその!って感じだしね。良いなら、月曜日に先生とかに話をしてみよう。


「…確かにそれなら現実的だな。アリス学園は生徒たちの考えを重視しているし、何でもやってみろっていう方針だったよな。それなら良いんじゃないか?なぁ、優花」

「う、うん。願ってもない話だけど…。良いのかな。こんな事頼んでも」


 …確か優花さんもアリス学園に在籍してるはずなのに、すごい不安そうじゃん…。でも、まずは。


「話すところから始めればいいんです。企画の説明とどうしてやりたいのか。ここが明確なら行けるはずです」

「そうだね。じゃあ、その作戦会議の前に。…集めて出来た言葉を教えてくれるかな?」

 

 私は優花さんの言葉に朱梨と顔を見合わせて、声をそろえて言った。


「「トリック・オア・トリート!」」


ー学園祭当日ー

 あれから、4人で作戦を練り。先生にも話が通じて、終わる少し前の放送で伝えてくれることになった。やってみる価値は本当にあったと思う。

 ちなみに報酬はそれぞれのお店からおすすめの商品どれか一つだった。最初の解答者にお菓子の詰め合わせだったかな。朱梨がその詰め合わせを貰って、私は本屋さんからのおすすめであるハロウィンメニューのレシピ本を貰ったの。それにした理由はね――。


「リリアさんのおかげで豪華なメニューになりましたね。…数量限定でお昼が勝負だと思ったんですが」

「まだ学園祭始まってから、2時間ぐらいかな。これは予想以上。と言うか、なんで私がウエイトレスさんなんですか?クラス長」


 実は全然メニューが決まって無くて、困ってたクラスのために貰ったんだ。まぁ…成功してほしいし、出来ることと言えばこれぐらいしかなかったからね…。

 でも、猫耳の猫又衣装にエプロンって言う話は聞いてないかな。裏方が良かったんだけど。


「似合いますよ。後、皆からのお願いもあったんです。売り子の方がもっと良いかも…?」

「あ、何でもないです。接客頑張ります」


 でも、この学園祭が終わった後は――。


「クラスにいても辛いとかって事は無くなるんだろうな…。あ、いらっしゃいませー」


 ちょっと、楽しみかも。

何とかハロウィン当日に書き終えれて一安心しました。

あらすじに書いた通り、楽しんでいただけてら嬉しい限りです。

拙い文と、結構一個の話が短くなってて申し訳ないです…。

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