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古の魔法書と白ノ魔女  作者: 紀ノ貴 ユウア
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第14章、二つの噂と虐め③

 先週は投稿できなかったので、二話、同時投稿します。

 まず一つ。

 リリシィが魔法で生成した巨大な炎をシェラトリスらに向かって放つ。


「ええええ?!!!」「はああああああ?!!!」

 シェラトリスとエルルフが驚きつつ、各々、〈書〉を出現させ、防御魔法を強固にする。


(何を考えているの?!この(かた)は?!)

「何をするの?!」

 シェラトリスがそう(たず)ねれば、リリシィは(にら)みを強めた。

「だまらっしゃい、この極悪一族が!!」

「―――! (うわさ)のことでしたら、事実無根(むこん)ですわ! 誓って、我が一族は悪事になど手を染めておりません!!」

(うそ)なんて、(わたくし)たちには通じませんわ!悪あがきなんてやめることね!」

「私たちは(うそ)なんて吐いてませんわ!そんなにお疑いになるなら、調査でもなされてはいかが?!それか、王家に審査を進言なさるといいでしょう! ただの(うわさ)でこんなことをなさるようでは、あなた(がた)に罰が下ってもおかしくありませんよ!!」

「いいから、いい加減に大人しく捕まりなさい!!!」

 リリシィが言葉を発する(たび)に、エルルフが苛立(いらだ)ちを強め、とうとう(さけ)んだ。

「だ・か・らっ!! (うわさ)(うそ)なんですってば!! 何をそんなに信じてるんです?!」

 シェラトリスも顔をしかめる。

(まさか、ただの(うわさ)をここまで信じる者がいるとは…!)


「なーに、あいつ?敵?」

 チーナがいつでも攻撃できるよう(つえ)を向けながら、そう聞いた。

「敵、みたいなものかしら…。」「敵ですよ!あんなの!」

 ため息交じりに冗談を口にしたシェラトリスと、(なか)ば本気の思いを口にしたエルルフ。

「まあまあ、落ち着いて。一応、フィルとかルヴァンたちに報告したから。」

 ヴァイルがなだめるように言った。この場で唯一、いつもののんびりとした調子を崩さない稀有(けう)な存在だ。そのマイペースぶりは、(うらや)ましいような(うらや)ましくないような。

「ルヴァン先生と表立って関わらないように言われていたのに…。」

 シェラトリスが一人と二匹にのみ聞こえる声量で話す。

「それに、先輩方(せんぱいがた)に気を付けるよう言われた矢先にこうなるとはね…。」

「仕方ないよ、シェラトリス様…。それに、シェラトリス様があんなの相手にする必要はないから!アタシたちに任せて!」

 チーナが頼もしく告げた。


 そんなことを話している中、リリシィだけでなく、その取り巻きまで攻撃を始めてきた。

「しぶといですわね!!」

 我らこそ正義と信じきった目でシェラトリスらを攻撃し続けるリリシィと、どこか忌々(いまいま)し気に、汚らわしいものを見るような目でシェラトリスらを攻撃したり、遠くから様子を(うかが)ったりしている取り巻き。


 ヴァイルは、その一派の中の(かす)かな違いに違和感を覚えた。

(―――なんだろう…?)


 しかし、その違和感について熟考(じゅっこう)する間もなく、状況は変わっていく。


「―――ねぇ。」


 明るいようで冷たい声がその場に突如(とつじょ) (ひび)いた。

 シェラトリスの前にある人物が(おど)り出た。


「シェラトリスに、何をしてるの。」

 口角を不自然に()り上げたフィルが姿を現した。目をこれでもかと見開き、その視線は、シェラトリスを攻撃する犯人へと向けられている。

 メラメラと燃え盛る炎を彷彿(ほうふつ)とさせる雰囲気(ふんいき)だが、(まと)う空気はぞっとするほど冷たい。


((まずいまずいまずい!!))

 シェラトリスとエルルフは(あせ)り始める。

 誰がとはあえて言わないが、このままでは危険だ。


「フィル、フィル?! 相手を傷付けちゃだめよ、分かってるわよね?!」

 フィルはシェラトリスに向かってにっこりと笑った。

「なぜ?」

「なぜって、そんなの―――」

 シェラトリスが言い終わる前に、フィルは魔法を放った。

 それは氷魔法だった。フィルは一瞬で、リリシィを始めとする何人もの生徒を(こお)らせてしまった。


 しん…とその場の空気が静まる。

 先ほどまであれほど攻撃魔法や人の声やらでうるさかった廊下が、驚くほど静まり返っている。


((あああああああ…!!やっちゃった…!!!))

 シェラトリスとエルルフは心の中で崩れ落ちた。いや、現実でも崩れ落ちた。


 フィルは一人、冷め冷めとした目で(たたず)んでいた。

 シェラトリスとエルルフを除いて、他の生徒は、恐れおののくような目でフィルやリリシィを凝視(ぎょうし)していた。


 フィルは随分(ずいぶん)と強引な方法で黙らせたが、リリシィらに大きな被害をもたらすようなことはしていない。むしろ、シェラトリスらの安全の確保と、リリシィらの攻撃の強制停止を、両者に危険が及ばないよう安全に配慮(はいりょ)した上で、それらをいっぺんにやってのけた。

 何もこれほど強引な方法を取らなくても…と思う者もいたかもしれないが、リリシィらに触発された後続者が現れぬよう、リリシィらを見せしめにする意味でも、この方法が一番効率が良かったのだ。


「―――何か、馬鹿げた話も出回っているみたい。」

 ぽつりとフィルが語り出す。

 周囲はきょとんとしながらもフィルに注目する。

「ねぇ…アナタたちは知ってる? 奇妙な(ものがたり)を誰が流したか…、誰がそれを信じているか。」

 ねっとりとした声を発しながら、フィルは一歩一歩近付き、分厚(ぶあつ)い氷に(おお)われたリリシィの肩に手を置く。

 その気迫(きはく)から野次馬たちはじりじりと下がり、フィルから距離を取ろうとする。

「ボクたち、そいつらを探しているんだよねぇ。そいつらが、学園襲撃事件の犯人と(つな)がっている可能性が高いから。」

 ニコッと笑うフィル。しかし、次の瞬間、ぞっとするほどの怒気が噴出(ふんしゅつ)する。


「吐け、―――我があるじに危害を()そうとする者の名を…!!!」

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