表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
古の魔法書と白ノ魔女  作者: 紀ノ貴 ユウア
81/83

第14章、二つの噂と虐め②

「そろそろ教室に向かった方がいい。」

 レノの言葉に、四人と二匹は部屋を出る。


 〈扉の館〉を出る直前に、シェラトリスは気付いた。

「…うっかりしていました。お二人も、私たちと表立って関わっては、ご迷惑がかかるのでは…?」

 シェラトリスの心配の声に、ルチルは微笑(ほほえ)み、レノは首を横に振った。

「私たちの心配はしなくていい。私たちは、大切な仲間のために動いているだけだからね。」

「…俺たちは、あんたを…、あんたたちを、守るために(そば)にいたいだけだ。」

 シェラトリスは、レノの言い(かた)に引っ掛かった。

「? フィルのご友人と(うかが)いましたが…、フィルだけでなく、私たちまで守ろうとしてくださるなんて…。本当にありがとうございます。ですが、どうかご自身の身を一番にお考えくださいね。」

 申し訳なさそうに告げるシェラトリスの言葉に、今度はルチルとレノがきょとんとして、それからチーナやヴァイルと顔を見合わせた。それから、ルチルは苦笑し、レノは依然(いぜん)としてきょとんとした顔、チーナとヴァイルはやれやれといった様子を見せた。

「いや、俺たちは―――んぐっ?」

馬鹿(ばか)! お前、何を言う気だ。」

 レノが何か言いかけたが、そこをルチルが(さまた)げた。

「ど、どうなさいました…??」

 困惑するシェラトリスに対し、ルチルは安心させるように取り(つくろ)った笑みを浮かべる。

「いや、気にしないでくれ。こいつは、少々…、いや、だいぶ、素直なもので…。相手に伝わる言葉で伝えるのが下手なんだ。そのせいで、相手を困らせるのが得意でね…。」

「……ふまない(:すまない)。」

 少々 不服(ふふく)そうながらも、反省する点があったのか、レノはすぐに謝罪の言葉を口にした。

 そして、口を(ふさ)ぐ手を払って、レノは真剣な目でシェラトリスに告げる。

「…俺たちの家は、白黒どちらの主義にも関係ない中立の家だが、王家への忠誠が強い。そして、同じく王家に忠誠を強く誓う精神が強い家は、仲間だと考えている。――オルヴェーヌ家は、クロノタトン家の味方だ。」

「っ、クロノタトンを信じてくれるのですか。〈白ノ魔女〉一族で、こんなに悪い(うわさ)の絶えない家だというのに。」

 二人は力強く(うなず)く。

「もちろんだ。」「もちろんさ」

「クロノタトン家は、悪い家じゃない。むしろ、影で王家に尽くし、表でも国に尽くし、弱き者を守る、善き家だろう。」

「それだけじゃない。家なんて関係なく、私たちは、何があっても君たちを助けたいと思う気持ちがあるんだ。」


(ああ…!なんて、なんて優しい人たちなんでしょう…っ!)


 クロノタトンに味方するメリットはない。それどころか、デメリットしかないだろう。それなのに、無条件で味方をするというその言葉をかけてくれる、その真摯(しんし)な優しさが、シェラトリスの心を温めた。


「言ったはずだ、必ず助けになると。」

迷惑(めいわく)がかかる、なんて気にしなくていい。私たちは、他者からの目なんて気にしないのだから。」

 力強い言葉に、シェラトリスは泣きそうな目をしながら感謝の言葉を伝える。

「ありがとうございます…!」


 そして、それぞれの校舎が近付いたところで、先輩の二人は別れて行った。

「…オルヴェーヌ家ほどの方々(かたがた)が、堂々と味方になると言って下さるなんて、心強いですね、シェラトリス様!」

 エルルフが感動した様子でそう語り出した。シェラトリスは「ええ」と(うなず)く。

「それにしても…、シェラトリス様は、本当にすごい方々(かたがた)をお引き寄せしますね。」

 エルルフは不思議そうに首を(かし)げる。

「最近 会う方々(かたがた)みーんなが、シェラトリス様に優しいじゃないですか。性別も種族も関係なく、初対面であの入れ込みよう…はっきり言って、異常です! …あ、最近と言わず、昔からフィルがそうですけど。フィルも…、普段はあんな突拍子(とっぴょうし)もなくて、おかしなことばかりする困った(やつ)ですが…それでもやっぱり、王立研究院に所属するくらい賢くてすごい(やつ)ですし。」

 その言い(かた)から、エルルフがフィルを普段は“すごい(やつ)”ではなく“困った(やつ)”と認識していることが分かり、シェラトリスはこっそり苦笑した。

(いつもご苦労様…エルルフ。)

 フィルによって厄介(やっかい)ごとに巻き込まれがちなエルルフを、シェラトリスは心の中で労った。


 思えば、最初はシェラトリスの前ではガチガチに固まっていたエルルフも、今ではすっかり打ち解けたようで、変な緊張もしなくなり、リラックスした雰囲気(ふんいき)を出すようになった。それでも使用人()がりの感覚は残っているようで、へりくだった態度は(くず)さない。だが、いい加減(かげん)に、下位の家柄の者がいても自分が一番下というような立ち回りの仕方はやめた(ほう)がいい。

 シェラトリスは、襲撃事件の際のエルルフの立ち回りを思い出して、それを指摘しようかと思ったが、率先(そっせん)して動けるというのは、エルルフの美点でもあると考え直し、それを口にしなかった。きっとエルルフも自覚しており、自分の立ち位置を模索中(もさくちゅう)なのだ。


「私が引き寄せているのかしら? …いいえ、きっと偶々(たまたま)よ。本当に…人に(めぐ)まれているわ。」

「いえいえ、何を(おっしゃ)るんですか。会う方々(かたがた)ほぼ全員が、初対面なのに、シェラトリス様に会えて涙するほど喜んだり、(そば)にいたいと言っていたり…。こんなこと、普通じゃあり得ませんよ!絶対に、シェラトリス様には、他者を()きつける力があるんですよ!」

 エルルフがキラキラとした目でシェラトリスを見る。すごいすごいと()められ、シェラトリスは少し(ほほ)を染めて肩をすくめる。

「恥ずかしいわ、エルルフ。本当に、私の力じゃないと思うの…。」

 シェラトリスがそう言った直後、ずっと周囲を警戒していたヴァイルとチーナが大声で(さけ)んだ。


「「危ない!!!!」」


 咄嗟(とっさ)に自分の周りに防御魔法を展開したシェラトリスとエルルフだったが、その必要はなかった。一番外側に張られていた、チーナの強力な防御魔法によって守られたからだ。


「獣魔が二匹…。本当に、ルヴァン先生と懇意(こんい)ですのね。」


 二人と二匹は、警戒心を一層強め、攻撃してきた相手を見つめた。

 そして、シェラトリスはその者の名を(つぶや)いた。


「―――リリシィ・ラトクルフ様。」


 数名の取り巻きを引き連れ、その令嬢(れいじょう)忌々(いまいま)()に告げた。

「あなた方はこの学園に、この国に、相応(ふさわ)しくありませんわ!!」

 そして、堂々と宣戦布告をする。


「―――消えてくださいまし!!!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ