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古の魔法書と白ノ魔女  作者: 紀ノ貴 ユウア
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第14章、二つの噂と虐め➀

 最近、15:00までに仕上げるのが難しいので、今後は〈日曜日の午後〉というかなり大雑把に投稿時間を変更したいと思います。申し訳ございません。

 シェラトリスは驚き、目を見開いた。

クロノタトン(わたしたち)だけでなく…ルヴァン先生まで…? …なぜ?」


 クロノタトンに関する悪い(うわさ)を流されるのは、以前からあった。大罪人・ハーシュを原因とする風評被害は多く、…まあ、ここまで攻撃性が強いのは初めてだが、〈白ノ魔女〉はいつだって風当りが強い。ゆえに、自分たちが悪く言われることには慣れている。だが、貴族の家門(かもん)を持たない(いち)教師(きょうし)が、なにゆえ悪い(うわさ)を流されるというのだろうか。


「…それは…。」

 言いにくいことがあるのだろう。ルチルは目を(そむ)けた。が、(けわ)しい顔でシェラトリスを見つめた。

「…少し長くなる話だ。部屋に入れてくれるかい? 私たちの部屋に来るのでもいい。」

「いえ、お二人が(かま)わないのであれば、私の部屋にしましょう。」

 シェラトリスは三人を部屋に入れた。

 学園と自宅を(つな)ぐ〈扉〉を設置するために通るだけの部屋のためそれほど広くはないが、上流貴族らしく、人が数人入って談笑するだけの十分なスペースと設備は整えられてある。


「…最初は、クロノタトン家に関する根も葉もない(うわさ)だけだった。――クロノタトンは、実は悪の元締(もとじ)めだとか、裏で王族を操っているとか、最近の悪い出来事…学園襲撃事件などは全てあの家が(くわだ)てたものだとか。とにかく、君の家を諸悪の原因に見立てて、()さ晴らししようとか、そういった思惑(おもわく)で最低な作り話が流されていたんだ。本来なら、そんなテキトーな噂話(うわさばなし)なんてすぐに終わる、そうだろう? …でも……。」

 そこでルチルは(まゆ)を寄せた。レノが代わりに口を開く。

「…あの学園襲撃事件の際、あんたとアスカルト王子が気安い雰囲気(ふんいき)で言葉を()わしている様子や、あんたの家に逃げ込むアスカルト王子の姿を目撃したという、やけに詳細で信憑性(しんぴょうせい)の高い話が付け加えられていた。それと、あんたの家の騎士がいち早く学園に来て襲撃者を相手したらしいが、そのことも悪く言い広められる原因になったようだ。」

「そんな…。」


 緊急事態ゆえ、なりふり(かま)ってられず、命を守ることだけを意識した言動を取った。しかし、もっと気を配っていれば良かったのかもしれないと、シェラトリスは後悔する。


 シェラトリスがショックで固まっているのを見て、レノは言葉をかける。

「落ち込まないでくれ。…その様子だと、多少は現実に沿()うところがあったようだが、すでに起こっていることに落ち込んでいても仕方(しかた)がない。それより今は、ただの事実を悪い妄想(もうそう)とこじつけて言い広めている(やつ)がいることに警戒(けいかい)するんだ。」

(…! そうね。)

 レノの言葉に、シェラトリスははっとして意識を切り替えた。自分の行動に反省するのも大切だが、そんなことよりも今は、身の回りの危機に目を向けなければならない。襲撃者といい、(うわさ)を広めた者といい、その(うわさ)を信じている者といい、シェラトリスらの周りには悪意や害意を持った者ばかりだ。このシェラトリスの〈扉〉の部屋にめ寄る者もいたと聞くし、いつ危害を加えられてもおかしくない状況だろう。


 ルチルがまた口を開いた。

「混乱の中でたまたま君たちの言動を目撃した者か、それとも最初から監視していた者か…。もしかすると、襲撃してきた過激派の黒至上主義勢力の仲間(スパイ)がまだいるのかもしれない…。ともかく、この(うわさ)には奇妙な点が多いんだ。」

「この(ぶん)だと、ルヴァン先生の(うわさ)も、何かしらの実際にあった出来事を多少 (ふく)んで悪く作ったんだろうな。」

 レノの言葉に、ルチルが(うなず)く。

「ルヴァン先生の(うわさ)とは…一体どのようなものなんですか?」

 エルルフが口を(はさ)んだ。

 ルチルがまたもやしかめっつらになる。

「他国のスパイだとか、この国を支配しようと玉座を狙っているとか、一部の貴族家や研究者と手を組んで違法に(とみ)(たくわ)えているとか、クロノタトンの悪の手先だとか、思いつく限りの大小様々な(うわさ)だよ、馬鹿馬鹿(ばかばか)しい。」

「特に、クロノタトン家と手を組んで悪いことを(たくら)んでいるという話が強いな。あんたの研究会の顧問(こもん)になったのも、親しいがゆえのことだと見られているらしい。」

 それを聞いたシェラトリスとエルルフも不機嫌(ふきげん)な表情になる。

「何てことでしょう…ルヴァン先生ほど公平な教師で、国に()くしていらっしゃる研究者はいないでしょうに!」

「ちょっと僕たちと関わりがあるだけで、先生まで悪く言われてしまうなんて! そんなひどい(うわさ)を流した(やつ)はとんだ悪人ですね!(うわさ)を話している(やつ)らだって最ッ低な(おろ)か者です!」

 そこに、ずっと黙って話を聞いていたチーナとヴァイルが口を開いた。

「二人ともルヴァンのこと気にしてくれるなんて(うれ)しいわ。でも、安心して。ルヴァンはこんな(うわさ)、きっと笑って流してしまうから。」

「そうそう。皆 気にしない、気にしない。…それにしても、面白い(うわさ)だなー。皆、ルヴァンのことなーんにも知らない。んふふふっ。」

 ルヴァンの元獣魔だというのに、意外とチーナとヴァイルは冷静だった。それどころか、ケラケラと笑っている。

「皆、(うわさ)を気にするなら、その本質に注目しなきゃ。シェラトリス様やルヴァンのどういうところを見て、犯人はどうしてそんな(うわさ)を作ったのか、ね。悪意しかない(うわさ)だから、まあボクたちの敵だろうけど、どういう目的があってその(うわさ)を今 流したのか、とかもね。」

「そうよ!こんなにこじつけがましい妄想話なのに、ちょっと現実が含まれて作られているんだもん、アタシたちのことを監視している(やつ)らがいるんだよ、もっと気を付けないと!」

「まあ、一般(ただ)の学園関係者が、悪意に満ちた、現実を面白おかしく脚色(きゃくしょく)した、(タチ)の悪い冗談として作り話を流したっていうだけという可能性も残っているけど。」

 ルチルが(ひたい)青筋(あおすじ)を浮かべて笑みを浮かべる。


 もちろん、もう誰も、(うわさ)を流したのがただの愉快犯(ゆかいはん)だとは思っていない。これは確実に、ルヴァンもろともクロノタトン家を(おとしい)れようという陰謀(いんぼう)だと考えている。


「繰り返しになるが、十分に警戒して過ごしてほしい。」

 ルチルとレノの真剣かつ心配の表情を見てシェラトリスは、二人は自分たちの味方であると安心感を抱いた。

「「はい。」」

 シェラトリスとエルルフは真剣な顔で返事をした。

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