表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
古の魔法書と白ノ魔女  作者: 紀ノ貴 ユウア
66/76

第11章、きなくさい空気③

 今回長くなりました。おそらく次回も長くなるでしょう。

「どうしたの?」

 シェラトリスが緊迫(きんぱく)した様子ようすの三人に声をかけた。

「侵入者です。」

 レイベルが簡潔(かんけつ)に答えた。その言葉にシェラトリスらは一気に警戒心を(いだ)いた。

「どこから?何者?誰狙(だれねら)い?何目的?」

 フィルが矢継(やつ)(ばや)に問う。

侵入(しんにゅう)経路(けいろ)は不明だが、(りょう)と第二校舎にいるらしい。(りょう)(がわ)にいた連中(れんちゅう)だけでも十数名はいそうだ。」

 アスカルトが(するど)い目つきで(りょう)の方向へと顔を向ける。

 第二校舎とは、五年生から八年生までの、シェラトリスらも使っている校舎のことである。

「私たちは、ちょうど殿下(でんか)とこちらへ向かっていたところで(さわ)ぎを聞き…急ぎ、こちらへ避難(ひなん)して参りました。」

 緊張感を持って報告をするエルルフ。

「戦い慣れている連中(れんちゅう)と思われます、身のこなしが武人(ぶじん)のようでした。どのような目的があるのか分かりませんが…。どこかへ向かおうとしているのか、何か・(だれ)かを探しているのか…、そのように見えましたね。」

 そう言ってそっとカーテンをめくって窓の外を確認するレイベル。

 付近に(あや)しい気配はなかったらしく、すぐにカーテンから身を(はな)した。

「これからどうしましょうか。“アスカルト様”(ねら)いの可能性だって十分あり得ますし。」

 クレーメンスが隠しきれない不安を表情と声に乗せて発言した。

「ここで危険が去るのを待つか、〈(とびら)〉を使って学園から離れるか…。」

 どのようにこの危機を乗り越えるか思案(しあん)するシェラトリス。

 その時。


 コンコン、コンコン


 ドアを(たた)く音が聞こえた。

 しかし、随分(ずいぶん)と軽くて小さな音だ。それも、やや下方(かほう)から鳴ったように感じる。

「…(みんな)下がって。」

 フィルが最前へと出て身構(みがま)える。

 その後ろにシェラトリスとエルルフ、レイベルが立ち、アスカルトを(おく)避難(ひなん)させる。その(そば)にはクレーメンスとメロディが付き、万が一に備えた。

 皆が配置に付いたのを確認して、フィルがドアに近寄る。


「どちらさまですかぁ。」

 気の抜けるような声で、フィルはドアの向こうに問いかけた。言葉の印象とは反対に、その顔は真剣で、戦闘(せんとう)態勢(たいせい)(たも)っている。


「コンコン。ボクだよー。ルヴァンの狐、ヴァイルだよー。」

「チーナよ!怖いから早く開けて、フィル!」


 少年のようなやや中性的なのんびりした声と、幼い女の子のような甲高い元気な声が返ってきた。

 フィルは大げさに肩をすくめて、危険がないことを(みな)に示した。

 そして、ほんの少しだけドアを開けた。(わず)かな隙間(すきま)からするりと入ってきたのは、狐とハムスターだった。

「やあやあ、白歴史研究会のみなさん。ルヴァンのお使いで来たよ、はじめまして!」

「ご安心ください、我々はルヴァン・イヴァンシェの使い魔です。」

 皆の前でお座りをした狐と、その狐の頭の上で手を振るハムスター。

「ボクはヴァイル。こっちはチーナ。」

「ルヴァンの言いつけで来ました。皆さんをお守りします。」

 そう言うと、ハムスターのチーナは狐のヴァイルの首に降りて行った。彼の首輪に取り付けられた通信装置に()れ、それに向かって言葉を発する。


「もしもし?こちらチーナ。応答願います。」

[こちら、メルーンです。どうぞ。]

「フィルらと合流しました。どうぞ。」

[了解。…そちらでしばらく待機(たいき)していてください。]

「了解。以上。」


(まあ…。)

 シェラトリスは驚いた。かなり統制された使い魔たちだ。

 驚く面々(めんめん)余所(よそ)に、フィルは慣れた様子(ようす)で話しかける。

「ここで待ってろって?」

「そうみたいだねぇ。ここで守りを固めておけばいいかな。」

「防御魔法を強化しとくか…ん?」


 その時、タンタンと天井が鳴った。何か(やわ)らかいもので(たた)いているような音だ。

「どもども~フィル君。吾輩(わがはい)だ、入れておくれ~。」

 (しぶ)い低い声。飄々(ひょうひょう)とした話し(かた)をした、年配の男性のようだ。

「ええ~…。」

 フィルは少し(いや)そうな顔をして天井に手をかざした。すると、急にぽかりと天井に小さな穴が開き、何かが落ちてきた。

「ひょおおおお~!!!」

 落ちてきた小さな(かたまり)は奇妙な声を発しながらも、華麗(かれい)に着地を決めた。


「お、驚きましたぞ…。フィル君!年寄りをもっと大事に(あつか)ってくれ!」

「じゃあ天井から来ないで。」

転移(てんい)(もん)は、吾輩(わがはい)用に各天井に設けてあるんじゃ。」

「あいつの使い魔はちゃんとドアから来たのに。」

「それはお行儀(ぎょうぎ)が悪くてすまないな。」

「それで?アナタはなぜここに?―――“フルーウさん”。」


 そう、落ちてきた(かたまり)は、〈(とびら)(やかた)〉の居候(いそうろう)(ねこ)―――もとい、フルーウだった。

 フィルとヴァイル、チーナ以外は、初めてその声を聞いた。話せるとは知らなかったため、衝撃(しょうげき)が大きく、(みな)一様(いちよう)にポカンとしている。


「そりゃ、殿下(でんか)御身(おんみ)の安全を確かめるために決まってるじゃないか。」

 そう言ってにんまり笑った顔をアスカルトの(ほう)へ向けるフルーウ。

殿(でん)下方(かがた)、ご無事でしたか。」

「あ、ああ…。」

「それは何より。さあ、帰るべき場所へお帰りなさいませ。道中(どうちゅう)の安全は、このフルーウが確保いたしますから。」

「あ、ああ…。…あ、いや、しかし…。」

 衝撃(しょうげき)が抜けないアスカルトは、了承(りょうしょう)の返事をしたが、すぐに我に返って、躊躇(ためら)う素振りを見せた。

「ここにいた(ほう)が安全ではないですか?」

 クレーメンスが咄嗟(とっさ)にそう質問した。

 フルーウは首を横に振る。

「どうやら(やつ)らの(ねら)いは複数あって、その一つがアスカルト殿下(でんか)に関することである様子(ようす)。敵の人数も多く、ここもいつ襲撃(しゅうげき)されることか分からないですぞ。」

「なるほど…。分かりました。ではここにいる(みんな)で一度 王宮に避難(ひなん)しよう。」

「え、えっと…ワタシたちも、ですか…?」

「ああ。学園から逃げるために、図書館の〈(とびら)〉を使うなら王宮一択(いったく)になるし、〈(とびら)(やかた)〉を使う場合も、それぞれの家の〈(とびら)〉の部屋に行く皆の安全を確保する余裕(よゆう)はないからね。」

「あ、いえ、その…。」

 メロディは口ごもる。

「ワ、ワタシはあまり走れないので…危険が去るまでここにいます。み、(みな)さんはワタシのことは気にせず、どうぞ避難(ひなん)してくださいませ…。」

「そう言えば以前…〈古書の儀式(ぎしき)〉の際、メロディ様の代わりにメアさんとルヴァン先生が取りに行っていましたものね…。(はげ)しい運動はできない、ということですか?」

「そ、そうなんです…。足手まといになってしまいますので…。」

「いくらここの結界が強いとは言っても、限度はあるよ。一人で立て()もっているところに侵入者に襲撃(しゅうげき)されたら突破(とっぱ)されてしまうし。」

「そうですよ。…そうだ、差し(つか)えなければ、私が(かか)えていきますから。」

「そうね、エルルフに頼みましょう。」

「そ、そんな…侯爵家の(かた)にそんなことしてもらうのは…。」

「いえ…魔法の(うで)にはまだ自信がなくて戦力になりませんし、付いていくのが精一杯(せいいっぱい)なので、これくらいはさせてください。」

 苦笑いを浮かべるエルルフ。

 メロディをエルルフが(かか)えていくことがほぼ決まった空気となり、ヴァイルとチーナが通信装置を使って、フルーウと共に〈(とびら)〉を使って避難(ひなん)することを伝える。

 その間に、クレイが質問する。

「図書館と〈(とびら)の館〉、どちらに行きますか?」

「近いのは図書館だけど…侵入者がいるという第二校舎の方向なのよね…。」

「第一校庭を突っ切って〈(とびら)(かん)〉に行きますか?寮側(りょうがわ)にいた侵入者と出くわす危険性がありますが…。」

「…ここはやはり、一番近い図書館に―――」

 そこで、チーナが声を発した。

「待ってください!図書館はだめです!」

 (みんな)がチーナに注目する。


[こちら、図書館のシン!図書館に集まってきている不審者は、第二校舎にいた侵入者のようだ!図書館(こちら)に来るのはやめた方がいい!どうぞ!]

[こちら、メア。(あるじ)らと共に、(りょう)にいる侵入者と応戦中です。――ヴァイル、チーナ、我々が食い止めている間にアスカルト殿(でん)下方(かがた)避難(ひなん)警護(けいご)を頼みます。どうぞ。]

「こちら、チーナ。了解!以上。」


 フィルは(みな)の顔を見回した。

「決まったね?じゃあ、さっさと行くよ。フィルとチーナが先頭、その後ろがシェラトリスとクレイで、その後ろがアスカルト王子とエルルフ&アンドロ、その後ろがスティルグとフルーウとヴァイルね。」

 フィルが提案した陣形(じんけい)に、全員が(うなず)了承(りょうしょう)すると素早く配置(はいち)に付いた。エルルフとメロディ以外の全員が〈書〉を出した。

 エルルフが「どうぞ」と一言告げ、メロディに背を向けてしゃがみ込んだ。「すみません…、お願いします」とメロディがその背に乗る。「しっかり(つか)まっていてくださいね」とエルルフが言ってアスカルトの横に(なら)んだ。

 全員の準備が整ったのを見て、フルーウが声を()る。


()こう!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ