表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
古の魔法書と白ノ魔女  作者: 紀ノ貴 ユウア
61/76

第10章、危険な秘密④

 結構長くなりました。

「ここが魔女(まじょ)魔力(まりょく)研究を行っている研究室だよ。」

 フィルが説明(せつめい)し、その間、レイラが自分の首に下げていたネームプレートをドアに当てた。

 カシャン…と小気味好(こぎみよ)い音が(ひび)き、その動作(どうさ)開錠(かいじょう)したことが分かった。

「さぁ、入って!」

 ローズマリンとヴィゼが先に入り、(みな)に向かってそう言った。

「…。」「失礼するよ。」

 一番ドアに近かったルヴァンとアスカルトが中に入り、フィルとシェラトリスがその後に続く。そして、クレーメンスとレイベル、エルルフが入り、最後にレイラが中に入り、ドアを()めた。


 中は、いかにも研究室という感じの設備(せつび)(ととの)えられていた。学園にある〈白歴史研究会〉の研究室よりも、広く立派(りっぱ)であるのはもちろん、クロノタトン家にある専属(せんぞく)研究団の研究室やフィルの自室(じしつ)のように、部屋(へや)()()くすほどほど物の数は多いが、ここはかなり整頓(せいとん)されている。研究に関係のないインテリアは一切なく、秩序(ちつじょ)(かん)じられる配置(はいち)だ。


 圧倒(あっとう)される機器(きき)(かず)、見たことのない物体(ぶったい)装置(そうち)、それらが(そう)じて(かも)し出す威厳(いげん)に、フィル以外の研究会のメンバーはそわそわしだす。不躾(ぶしつけ)にならない程度(ていど)に、あちこちへ視線(しせん)を動かす。

 そんな中、こほんとルヴァンが咳払(せきばら)いし、きょろきょろと(せわ)しなく目を動かしていた者たちは、はっとして気を引き()め、ルヴァンに注目する。

「“これから話すことは、(おおやけ)には知らされていないことや、極秘事項(ごくひじこう)とされる非常(ひじょう)重要(じゅうよう)なことだ。〈白歴史研究会〉と王立研究院、双方(そうほう)の研究のため、今後の国のために明かすが、決して外部にもらしてはいけない。”」

 (みな)は、真剣(しんけん)表情(ひょうじょう)(うなず)いた。

「“では話そう…。まずは、これを見なさい。”」

 ルヴァンがレイラのほうへ向いた。それを合図(あいず)に、レイラが通信装置(つうしんそうち)のような手のひらサイズの箱型(はこがた)装置(そうち)を取り出し、それを起動(きどう)した。よく見ると、それは映像記録媒体(えいぞうきろくばいたい)だと分かった。

「こちらです。」

 そう言って、その装置(そうち)(かべ)に向けた。

 (うつ)し出された映像(えいぞう)は、実験室(じっけんしつ)のような場所で、様々(さまざま)魔法(まほう)生物がカプセルの中に()()められている様子(ようす)(とら)えたものだった。

「さっき、黒ノ魔女(まじょ)と白ノ魔女(まじょ)それぞれの魔力(まりょく)魔法(まほう)生物におよぼす影響(えいきょう)について、結論(けつろん)をだしていましたよね?」

 ローズマリンが指示棒(しじぼう)を持ってきて、映像(えいぞう)の中の魔法(まほう)生物を指し(しめ)した。

「これが、黒ノ魔女(まじょ)魔力(まりょく)をあたえ、せわした植物型・動物型それぞれの魔法(まほう)生物です。これが、白ノ魔女(まじょ)魔力(まりょく)をあたえ、せわした植物型・動物型です。なお、あたえた魔力量(まりょくりょう)、せわをした人数はすべて同じです。」

 両者(りょうしゃ)には、(あき)らかな(ちが)いがあった。黒ノ魔女(まじょ)関与(かんよ)した(ほう)が、植物型・動物型共にかなり凶暴化(きょうぼうか)しており、逆に、白ノ魔女(まじょ)関与(かんよ)した(ほう)が、奇妙(きみょう)なほどおとなしくなっている。

(私たちの推測(すいそく)は正しかったんだわ。)

 シェラトリスが考えたことは、他のメンバーも同じだったようだ。ローズマリンが(みんな)反応(はんのう)を見て、話を続ける。

「つづいて…。」

 映像(えいぞう)が切り()わる。

「こちらが、黒ノ魔女(まじょ)魔力(まりょく)をあたえ、それいがいのせわを白ノ魔女(まじょ)がおこなった植物型・動物型です。こちらは、そのぎゃくで、白ノ魔女(まじょ)魔力(まりょく)をあたえ、そのほかのせわを黒ノ魔女(まじょ)がおこないました。」

 こちらは、顕著(けんちょ)(ちが)いはなかった。

「見ためではわかりにくいが、黒ノ魔女(まじょ)魔力(まりょく)をあたえたほうが、よりたかい変異魔力(へんいまりょく)――つまりは瘴気(しょうき)をもっていたぞ。」

 いつの間にか指示棒(しじぼう)を手にしていたヴィゼが、解説(かいせつ)(くわ)わった。

「もっとも重要(じゅうよう)発見(はっけん)は、この次です。」

 映像(えいぞう)が終わり、別なものが(うつ)し出される。今度(こんど)画像(がぞう)のようだ。いくつかのグラフや表が(なら)び、それに細かく文字・数字が書き()まれている。

「これは、詳細(しょうさい)比較(ひかく)研究のまとめです。」

「黒から白まで、髪色(かみいろ)()さを段階的(だんかいてき)にわけて、先ほどみせた映像(えいぞう)実験(じっけん)と同じ実験(じっけん)をしたぞ。」

(!!)

 髪色(かみいろ)()さまで考えが(およ)んでいなかったシェラトリスらは、(おどろ)く。

結果(けっか)一般的(いっぱんてき)黒髪(くろかみ)とよばれる()さのものたちがかかわった魔法(まほう)生物は、瘴気(しょうき)保有量(ほゆうりょう)がふえ、白髪(はくはつ)とよばれる()さのものたちがかかわった魔法(まほう)生物は、瘴気量(しょうきりょう)がへりました。」

(!!)

「では…。」

 クレーメンスが思わず声を発すると、ローズマリンが続きの言葉を(さっ)し、(うなず)く。

「ひとまず、こちらをみてください。」

 別の画像(がぞう)に切り()わる。

「これは、同じ髪色(かみいろ)()さの黒ノ魔女(まじょ)をいくつかのグループにわけて、それぞれあたえる魔力量(まりょくりょう)をかえるという実験(じっけん)をおこなった結果(けっか)だ。」

「ごらんのとおり、あたえた魔力量(まりょくりょう)が多ければ多いほど、瘴気量(しょうきりょう)はふえました。」

「まだあるぞ。」

 別の画像(がぞう)に切り()わる。

「こんどは、魔力(まりょく)をあたえず、せわだけをして、そのせわをする人数をかえるという実験(じっけん)だ。」

(!! そこまで実験(じっけん)したのね…。)

 シェラトリスらはかなりの衝撃(しょうげき)()けた。

結果(けっか)、人数がふえればふえるほど、とても小さな差ではありますが、瘴気量(しょうきりょう)がふえました。」

「…おそらく、魔女(まじょ)はそこにいるだけで魔力(まりょく)放出(ほうしゅつ)していることが関係(かんけい)しているんでしょう。」

 レイラがそう補足説明(ほそくせつめい)した。

「白ノ魔女(まじょ)でも、これらと同じ実験(じっけん)をしたぞ。結果(けっか)はもう予想(よそう)がついているだろうが、瘴気量(しょうきりょう)がへる、という点いがいでは同じ傾向(けいこう)がみられたぞ。」

 そこで、画像(がぞう)()された。ヴィゼが指示棒(しじぼう)(たた)みながら口を開く。

「つまり、シェラトリスたち〈白歴史研究会〉と王立研究院の仮説(かせつ)は正しかったのだ。」

 ローズマリンも指示棒(しじぼう)(たた)みながら口を(ひら)く。


魔法災害(まほうさいがい)原因(げんいん)――魔法(まほう)生物の狂暴化(きょうぼうか)原因(げんいん)は、黒ノ魔女(まじょ)魔力(まりょく)にあると、かくじつにいえます。」


 やはり、という空気が流れる。

否定(ひてい)余地(よち)がありませんね。」

 レイベルの言葉に、レイラが(うなず)く。

(おどろ)くべきことに、この事実(じじつ)はおよそ800年前――ハーシュが生きていた時代には、すでに発覚(はっかく)しています。我々(われわれ)は、よりたしかな事実(じじつ)として(しめ)すため…、つまり、実証(じっしょう)のための実験(じっけん)(おこな)ったに()ぎません。」


 ―――沈黙(ちんもく)


(何ですって…?)

「ハーシュの時代にはそれがすでに実証(じっしょう)されていた…?」

 アスカルトが驚愕(きょうがく)した様子(ようす)でレイラの言葉を()り返した。

「まさか…。そんな…。」

「800年…。それほど長い時間、なぜ、どうして、秘匿(ひとく)されたんでしょう?黒至上主義者(くろしじょうしゅぎしゃ)妨害(ぼうがい)してくるからと言っても、この事実(じじつ)さえ公表(こうひょう)されれば、白ノ魔女(わたしたち)に対する偏見(へんけん)差別(さべつ)は広まらなかったのではないですか?」

 シェラトリスはやや感情的(かんじょうてき)になって言った。



 “黒髪(くろかみ)こそ、(もっと)(すぐ)れる魔女(まじょ)(あかし)”―――。それが、黒至上主義者(くろしじょうしゅぎしゃ)たちの長きにわたって(とな)えられてきた主張(しゅちょう)だ。

 しかし、その黒ノ魔女(まじょ)こそ、全ての魔女(まじょ)(おびや)かす魔法災害(まほうさいがい)原因(げんいん)だった。

 しかも、黒至上主義者(くろしじょうしゅぎしゃ)たちが見下(みくだ)してきた白ノ魔女(まじょ)こそ、世界を(すく)(かぎ)だったのだ。

 こんな皮肉(ひにく)があるだろうか?


 黒至上主義者(くろしじょうしゅぎしゃ)のせいで、白ノ魔女(まじょ)はいつの時代も肩身(かたみ)(せま)い思いをしてきた。そして、それはハーシュのせいで加速(かそく)したと言えるだろう。

 もし、ハーシュが罪を(おか)す前に、白ノ魔女(まじょ)に対するネガティブイメージを払拭(ふっしょく)できていたら?ハーシュと(ほか)白髪(はくはつ)魔女(まじょ)が結び付けられて迫害(はくがい)(うけ)けることもなかったかもしれない。



 シェラトリスをはじめとする、その場にいた白ノ魔女(まじょ)全員が(いきどお)りを見せる。


「―――…できなかったんだよ。」


 言葉を発したのはフィルだった。苛立(いらだ)っているような苦悶(くもん)表情(ひょうじょう)で、(ひく)(うな)るように言葉を(しぼ)り出す。

「できなかったんだよ。……当時の、事実を知る(みんな)が。」

 そして、ゆっくりと、ギラギラとした目をルヴァンに向ける。

「…ほら、早く言いなよ。」

「……。」

 ルヴァンは、ゆったりとした動作(どうさ)で自らの〈古書〉を出現(しゅつげん)させると、それが(みんな)に見えるように持ち上げた。


「“以前(いぜん)、話したことを(おぼ)えている者もいるだろうが…、私の〈古書〉は、ハーシュの時代に生きた王族のものだ。”」

 シェラトリスとレイベルが(うなず)く。

 ルヴァンは、慎重(しんちょう)に言葉を(つむ)ぐ。


「“…厳密(げんみつ)に言えば、当時の王子であり、ハーシュの混乱(こんらん)(しず)め、後に〈賢者(けんじゃ)〉と()ばれる王となった男の〈書〉だ。”」


(!!!)


「“そして…この〈書〉には、ハーシュの混乱(こんらん)真実(しんじつ)(しる)してある。”」


(ハーシュの……真実?)

 シェラトリスは両手を(にぎ)りしめた。


「“大罪人ハーシュと()ばれる魔女(まじょ)の、本当の名は……‘シュア・キュロンターン’。”」


 ルヴァンが顔を上げた。相変(あいか)わらず深いフードで顔を見ることはできないが、シェラトリスに視線(しせん)が向けられていることを一同(いちどう)(さっ)した。


「“ヴァリオ・クルシェン・アーチェスト王子の婚約者(こんやくしゃ)であり―――”」


 そこで言葉が区切られた。が、すぐさま言葉が続く。


「“シェラトリス・クロノタトン、……君の、祖先(そせん)にあたる。”」



 仲間(なかま)の息を()む声。

 シェラトリスは、ふと意識(いしき)を失った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ