表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
古の魔法書と白ノ魔女  作者: 紀ノ貴 ユウア
55/76

番外編2、フィルの過去と夢➀

 先週は投稿できず、すみませんでした。

 適当(てきとう)な部屋の中に入り、フィルは(かか)えていたヴィゼを下ろした。

 “あいつ”の姿(すがた)を見て動揺(どうよう)した姿(すがた)をローズマリンとシェラトリスに見せないために、こっそり()れ出していた。


「フィル…あの(かた)…あの(かた)は、あるじさまの…。」

 ヴィゼはぶつぶつと(つぶや)きながら、頭を()さえたり、顔を上げて“あるじさま”のいる方角(ほうがく)を見たり。

「思い出した…そうだ、ぼくは…。…ということは、あの(かた)は…ぼくらの…?」


 こうなることは予感(よかん)していた。なぜなら、フィルもそうだったから。



 初めてシェラトリスと出会った時、色んな感情(かんじょう)(おそ)われて、(なみだ)が出た。

 (ゆめ)の中の人が実在(じつざい)していた。生きていた。それだけで、苦しかった日々も(むく)われる思いがした。

 (ゆめ)の中の人は、オレたちにいつも(やさ)しくて、可愛(かわい)がってくれて、大切にしてくれた。シェラトリスは、容姿(ようし)もさながら、()けてくれる言葉(ことば)(しめ)してくれる態度(たいど)の一つ一つが(ゆめ)の中の人と(かさ)なった。間違(まちが)いなくその人だと思った。


 …でも、(ちが)うかも。

 長く(とも)()ごすうちに、そう考えるようになった。今ではもう、確信(かくしん)に近い。



「フィル、フィルはあの(かた)のことを言っていたのか…?フィルが言っていた、“(ゆめ)の人”は、“あるじさま”のことだったのか…?フィルは、前のきおくをいつから―――。」

「ヴィゼ、(ちが)う。」

 ヴィゼの言葉(ことば)途中(とちゅう)で、フィルは言った。

「フィルの “(ゆめ)の人”は、シェラトリスじゃないかも。なんか…なんか(ちが)う。」



 “(ゆめ)の人”は、とても強い人だった。いつもはっきりとした“自分の考え”を持っていて、一度決めたら絶対(ぜったい)()るがない人だった。決断力(けつだんりょく)(こう)動力(どうりょく)のある、立派(りっぱ)先導者(リーダー)だった。

 でも、シェラトリスは(ちが)う。

 シェラトリスは、自分の考えにいつも不安(ふあん)(かん)じている。だから、周りに(ささ)えられて動いている。そして、それを(かす)かに自覚(じかく)していて、仲間(なかま)存在(そんざい)(たよ)りに行動(こうどう)する。無茶(むちゃ)をすることもあるけど、自分一人で全てを背負(せお)おうとはしない。

 そこが、あの(かた)(ちが)う。






 フィルは、この国で生まれた者ではない。

 ずっと昔、まだ(おさな)かった(ころ)に、保護(ほご)されてこの大陸(たいりく)にやって来た。


 あの(ころ)は、いつも(ゆめ)を見ていた。“(ゆめ)の人”の元で、(しあわ)せに平穏(へいおん)()らす希望(ゆめ)

 あの(ころ)は、よく(ゆめ)を見ていた。知らない世界と、経験(けいけん)したはずのない生活(せいかつ)

 楽しい(しあわ)せな(ゆめ)と、苦しくて悲しい(ゆめ)



 (ゆめ)の中のフィルは、犬だった。(ぎん)(もう)と赤い目を()つ大きな犬の獣魔(じゅうま)だった。(あるじ)は、白髪(はくはつ)紺目(こんめ)の少女。シュアという名の(むすめ)だった。

 フィルは、いつもシュアの(そば)にいた。一緒(いっしょ)屋敷(やしき)(にわ)を走ったり、拙者(せっしゃ)背中(せなか)()せて()りに出たりした。毎日ごはんやおやつの時間を共にしたし、たまに学校に付いて行ったりした。シュアはたくさんの獣魔(じゅうま)がいたから、拙者(せっしゃ)仲間(なかま)とも(あそ)んだりケンカしたり(はたら)いたりして、とても充実(じゅうじつ)していた。

 …それなのに、世の中は真っ暗で、シュアもその婚約者(こんやくしゃ)の王子も、いつも(いのち)危険(きけん)にさらされていた。シュアの()み物に(どく)が入っていることもあったし、王子の側近(そっきん)に成りすました暗殺者(あんさつしゃ)がいたこともあった。フィルたちは、王子の獣魔(じゅうま)たちと協力(きょうりょく)して、いつも二人を守っていた。

 シュアたちは、世の中を変えようと頑張(がんば)っていた。それでも、一向(いっこう)に世界は明るくならなかった。(みんな)がどれだけ頑張(がんば)っても、世界は危険(きけん)(あふ)れていった。王族(おうぞく)貴族(きぞく)の中にいた王位(おうい)簒奪(さんだつ)(たくら)む者のせいで、シュアたちはどんどん()()められた。


 ―――だから、大罪人(たいざいにん)は生まれた。



 フィルは全て知っている。(ゆめ)の中の出来事(できごと)は、いくつか現実(げんじつ)とリンクしている。そして、(ゆめ)歴史(れきし)では大きく(こと)なる(てん)がある。フィルは分かる。(ゆめ)を見て、知ってしまった。“歴史(れきし)”はきっと、作られたものだと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ