表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
古の魔法書と白ノ魔女  作者: 紀ノ貴 ユウア
52/76

第9章、それぞれの調査④

 こっちばかり話が進む。『魔女の敵』の続きも考えてま…すよ。

 一方(いっぽう)部屋(へや)()び出て行ったフィルをルヴァンと共に()いかけたシェラトリスは、どこを歩いているのかも分からず、ただフィルを()いかけていた。


「フィル、どこに行けばいいのか分かっているのよね?」

「…。」

 シェラトリスが話しかけるも、数歩前を早歩きで(すす)むフィルは言葉を返さない。

「もう…。」

「“フィル、そこの(かど)を右だ。”」

「…分かってる。」

 ルヴァンの言葉に、()(はな)すような冷たい声色(こわいろ)でフィルは答えた。いつの間にか、重苦しい雰囲気(ふんいき)(ただよ)っている。

 教師に対するあからさまな反抗的(はんこうてき)態度(たいど)に、シェラトリスはぎょっとする。

「こ、こら、フィル。」

「…。」

 シェラトリスの言葉には、やはり無言(むごん)である。

(どうしたのかしら…。)

 フィルは機嫌(きげん)(わる)そうだ。しかし、それはシェラトリスに対してではない。

 フィルは、ルヴァンに対してのみ、いつも反抗的(はんこうてき)である。なぜかはシェラトリスにも分からない。

(もう)(わけ)ありません、ルヴァン先生。」

 ひとまず、シェラトリスはフィルの態度(たいど)について(あやま)った。しかし、ルヴァンは意外(いがい)にも気に()めていないようだった。

「“君が気にすることではない。…それに、‘(ぼく)’は(かれ)(きら)われても仕方(しかた)のないことをした。”」


(えっ…。)


 シェラトリスはこの時、二つのことに(おどろ)いた。

 まず一つは、ルヴァンがいつもの「私」ではなく「(ぼく)」と自身を(しょう)したからだ。

 そして二つ目は、ルヴァンがフィルに(きら)われることをしたと告白(こくはく)したからだ。

 シェラトリスは、秘密(ひみつ)の多いルヴァンの内面(ないめん)を見たと(かん)じた。


「―――ここだよ。」

 フィルがある部屋(へや)の前で()まり、そのドアをノックした。

「フィル・エモー、只今(ただいま)、シェラトリスとルヴァンを()れてきました。」

「入りなさい。」

「失礼します。」

 フィルがいつになく丁寧(ていねい)口調(くちょう)部屋(へや)の中にいる者と言葉を()わし、部屋(へや)に入った。

「“失礼します。”」

「…失礼します。」

 フィルに(つづ)いてルヴァンが入り、シェラトリスは戸惑(とまど)いながらも部屋(へや)の中に入った。


(あら…?)


 中はさほど広くない、(きゅう)憩室(けいしつ)のような小さく簡素(かんそ)部屋(へや)だった。そして、そこにいたのは、二人の小さな子供と、一人の大人だった。子供の片方と大人は、(かみ)(いろ)からして〈番人〉である。

 全員、フィルと同じ紋章(もんしょう)の付いた白衣(はくい)に身を(つつ)んでいる。


(この(かた)たちは…王立研究院の?)


「こんにちは!」

「こんにちは!」

 二人の子供が屈託(くったく)のない笑顔(えがお)を浮かべて、シェラトリスとルヴァンに向かって挨拶(あいさつ)をする。

「こんにちは。」

「ええ、こんにちは…。」

 状況(じょうきょう)が読めず、シェラトリスはややぎこちなく挨拶(あいさつ)を返した。


「まぁ…本当に…。」

 (だれ)かが(つぶや)く声が聞こえ、シェラトリスが声のする方を見ると、銀髪(ぎんぱつ)、そして、青と(むらさき)のオッドアイを持つ美しい女性がシェラトリスを見つめていた。(ひとみ)がうるうると()れているように見える。

「??」

 シェラトリスと目が合うと、その女性(じょせい)涙目(なみだめ)(いつく)しむように微笑(ほほえ)んだ。

「失礼しました。(わたくし)、王立研究院の番人をしております、レイラでございます。」

 目元を(ぬぐ)い、自己(じこ)紹介(しょうかい)をして優雅(ゆうが)(いち)(れい)した。


綺麗(きれい)(かた)…。)


 レイラの姿(すがた)所作(しょさ)は、同性(どうせい)でも思わず()()れするような美しさを持っている。


「さぁ、貴方(あなた)たちも。」

 レイラに(うなが)され、二人の子供が前に出る。


「ぼくは、レイラと同じく王立研究院の番人、ヴィゼだよ!いご、お見知りおきを、だ!」

 最初に、青い(かみ)と緑色の目をした少年がはきはきと自己(じこ)紹介(しょうかい)をした。


「わたしの名前はローズマリン、です!」

 次に、黒髪(くろかみ)と金色の目の少女が、明るく名乗(なの)った。どこかクレーメンスと()ている顔立ちだ。

一応(いちおう)、王立研究院の所長、です!」


(ええ?!!)


 シェラトリスは(おどろ)いて、思わずその少女を凝視(ぎょうし)した。


(こんなに小さな子が?!)

 ローズマリンは、王立研究院の制服(せいふく)を着ていること以外、どう見ても普通(ふつう)の少女である。

 年齢(ねんれい)は10(さい)にも()たなさそうだ。


「王立研究院は能力(のうりょく)主義(しゅぎ)なんだよ。ローズマリンが研究院で一番頭いいし、成果(せいか)()げているんだよね。」

 フィルがシェラトリスに対し、分かりやすいように説明(せつめい)した。

「フィルだってすごいのに、ちゃんと仕事しないから~。」

「ちがうよ、フィルは正式なしょくいんじゃないからだよ!」

 ローズマリンとヴィゼが、フィルを(かこ)む。

「それ()きにしても、ローズマリンが一番なのは変わらないですぅ~。」

「当たり前ですぅ~。わたしは天才だもん~。」

「何にしても、フィルはもう少し真面目(まじめ)に仕事をするべきだぞ!」

「イヤでーす!」

 随分(ずいぶん)と楽しそうな会話(かいわ)を三人はしていたが、突如(とつじょ)、フィルが口を()じ、背筋(せすじ)()ばした。

「…。」

 レイラが(かた)笑顔(えがお)()かべてフィルを見つめていたからである。

 フィルとレイラの様子(ようす)に気付き、子供二人も(さっ)して(だま)った。


「…シェラトリス様は何も説明(せつめい)されずここに連れて来られたのですよ、可哀(かわい)そうだと思いませんか?フィル。」

「…はい。」

 フィルにしては(めずら)しくしおらしい態度(たいど)だ。基本的(きほんてき)に、シェラトリス以外(いがい)の他人の言葉に耳を()さないのだが。


(良かった。私以外にも心を開いている人がいるのね。)

 シェラトリスはほっとした。


 その時。


「…では、本題(ほんだい)に入りましょう。」

 シェラトリスの後方(こうほう)から、聞き馴染(なじ)みのある声がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ