第9章、それぞれの調査②
投稿時間ギリギリまで書いてました。
ルヴァンが去った後、皆それぞれ資料読解の作業に入った。
最初は、各々静かに読み、重要箇所をメモしていたが…。
「こちらの事例、トークルン伯爵領に関する資料を参照、となっています。」
「今、私が読んでいるものね。一緒に確認しましょうか?」
「ぜひお願いします。」
また。
「どなたか、センジェント・バーナン氏の魔力分析に関する研究資料を読んだことがある方はいらっしゃいますか?」
「本を、数冊だけなら。」
「この論文、バーナン氏の研究を参考に書かれているようなのですが、生憎、私は読んだことがなく、理解が及ばず…。」
「ああ、それなら…―――メルーン、起きてください。」
「ふぁい…。」
「センジェント・バーナン氏の魔法生物研究と、それに関する資料について知っていますか?」
「ええ。よく存じ上げておりますよ。」
「ならメルーンに聞いた方が良い。すみませんが、メルーン、頼みます。」
「かしこまりました。さて、何にお困りでしょうか。」
「こちらなんですが―――」
このように、互いに確認し合いながら、時にメルーンを頼り、協力し合って作業するようになった。
そして、調査が順調に進む中、ルースリーフがやって来た。
「長い時間、放置してしまってすまない。何か困りごとはないかな?」
「あ、あれ…?あの…私たちと一緒に来た猫さんは…?」
「ああ、フルーウさんは別のところで用があるらしい。あなた方が帰る頃にはここへ来るから安心していい。」
「すみません、この本、シリーズものらしいのですけど、途中、何冊か抜けていて…。宮殿にないのでしょうか?」
「失礼、確認させてくれ。……ああ、ロックル・コーナンの魔女比較の解説シリーズか。ロックルの分析はとても重要で為になるが、何しろ文章が難解だからな。彼の書をしっかり読み込み、分かりやすく解説した本は貴重で、重宝されている。きっと今現在、他の誰かが読んでいるのだろうな。俺が利用状況を確認して、返却されていたらここに運んで来よう。そうだ、この解説シリーズほど分かりやすくはないが、ロックルの娘たちの共著もある。ロックルの書の補足も書かれているから、何かしらの新しい発見があるかもしれん。それも持ってこよう。」
「お願いします。」
調査開始から2時間半。
「“宮殿図書館の本だ。我々の研究と関連性はあまり高くないが、読んでおいて損はないだろう。”」
「ありがとうございます、ルヴァン先生。…あら?」
ブックカートを引いて、ルヴァンが戻ってきた。その傍らには、小さな影が。
見知った顔の少女は、重厚なファイルを何冊も両手で抱えて運んでいたが、それを片手で軽々(かるがる)と持ち替えた。その愛らしい姿からは想像もつかないほどのパワーである。
「ごきげんよう、シェラトリス様。宮殿図書館の特別司書、ロマですよ。」
ロマは、スカートをつまみ、シェラトリスに向かって優雅に挨拶した。
「ごきげんよう、ロマ様。」
シェラトリスも、ロマにならい、優雅に挨拶を返した。
ロマは、ニコニコと笑顔のまま、ファイルを差し出した。
「魔女研究などの資料をご利用したいと、フィル様から伺いましたので、こちら、追加の資料です。」
シェラトリスが受け取ろうとしたが、アスカルトがさっと横から入り、代わりに受け取った。「うっ」と声を上げていたため、相当な重さだったようだ。ルヴァンが運んできたブックカートの中身をテーブルに広げていたエルルフが、慌てて手助けに入った。
(あの晴れやかな笑顔でこの重さを…。魔法を使っていた?いや、番人特有の能力か?)
何はともあれ、アスカルトは、ロマに感心した。
「これらは普段、宮殿図書館の閉架書庫にあるものですよ。本当は、これらもここへ予め運んでおくはずだったのですが、アーロンが忘れてしまったのです。ごめんなさい。」
呆れたような困ったような顔をして、ロマが謝罪した。
「いえ、お忙しいところをありがとうございます。助かります。」
「いいえ、これも司書のお仕事ですから。」
ロマはニコッと笑った。
(ロマ様の笑顔はいつもステキね。)
愛想のいいロマは、話していてとも心地いい。絶えることのない笑顔も、癒される。
気付けば皆、手を止めてロマの表情を見ていた。
「“皆疲れただろう。一度、休憩しよう。ロマ様も一緒に、お茶の時間はいかがだろうか。”」
ルヴァンがそう提案した。ロマの目が輝く。
「わぁ、ロマもいいのですか?ぜひ!」
その言葉を合図に、皆は広げていた資料を整理しだす。
「あ、そのままでも大丈夫ですよ。」
それに気付いたロマが止める。
「ルースリーフに頼めば―――」
その言葉の途中で、ルースリーフとフィルがやって来た。
「あ、ちょうどいいところに来ましたね、ルースリーフ。」
「おや、俺に何か用かい?ロマ。」
「ええ。今から皆さまとおやつにするんです。なので、お部屋の模様替えをお願いしたいのです。」
「おやつ?ならオレが食堂で頼んで来るぞー!」
ロマの言葉を聞いて、フィルがどこかへ行っってしまった。
「ま、待って、フィル!」「“待て、フィル・エモー。”」
シェラトリスが慌ててフィルの後を追い、ルヴァンも急いで部屋を出て行った。




