第9章、それぞれの調査①
久しぶりに書くので、これまで書いた話を全部読み返しました。ミスや矛盾点、読みにくさを突きつけられることとなり、HPが削れました…。
「何と言うか…ええと…特殊な方ですね…?」
レイベルが言葉を選んでそう話し出した。
嵐のようにフィルが去ってすぐのことである。
「ごめんなさい…フィルは変わっていて、よく他人を振り回すのだけど、本当は繊細で優しいの。どうか大目に見てほしいわ…。」
シェラトリスがそう言うと、エルルフは何とも言えない顔をした。
(繊細…優しい……うん、確かに、シェラトリス様の前ではそんな一面が見えなくもないけど…。)
遠い目をしているエルルフを無言で皆が注目し、それに気付いたシェラトリスは、慌てて付け足す。
「えっと…フィルに何か困ることをされたら、遠慮なく私に言ってね?」
「「「分かりました。」」」「分かった。」
ルヴァンを除く全員が即答した。
「……。」
シェラトリスは苦笑するように少しぎこちない微笑みを浮かべた。
(私の言葉は説得力がないわよね…。)
シェラトリス自身、自分と自分以外へのフィルの態度が大きく異なることは理解している。
なぜ自分だけに心を開いてくれているのか、シェラトリスには皆目見当がついていない。きっと他の誰にも分からないだろう。
王家に保護されたばかりの頃は、誰の手にも負えなかったと聞くし、クロノタトンに初めて来た時も、誰の言葉も聞こうとしなかった。そう、ただ一人、シェラトリスを除いて。
フィルは、シェラトリスと顔を合わせた瞬間から、シェラトリスにのみ懐く様子を見せた。まるで子犬のように無邪気かつ従順にシェラトリスにまとわり付くフィルの姿に、周囲はもちろん、シェラトリスも当初は戸惑った。信奉しているかのように盲目的に自分だけに付き従うフィルに、薄ら恐怖を感じた時期もあった。しかし、慣れていくうちに、言葉を交わすうちに、フィルが心に傷を負っていることを理解し、シェラトリスはフィルを受け入れ、次第に、真っ直ぐ自分を信頼してくれるフィルのことを大切にしたいと考えるようになった。今では、フィルの絶妙な喜怒哀楽を大方読めるようになっている。
ゆえに、シェラトリスは、周囲にフィルのことを誤解してほしくない気持ちが強くある。フィルは、その傍若無人とも言える突拍子もない言動から、“狂人”と言われ、ぞんざいな扱いを受けることも多い。無視をされたり、悪口を目の前で言われたり、イタズラやイジメをされたり…。フィルのあの振る舞いでは、避けられるのは仕方ない…とも思われるが、さすがにあからさまに避けられては、フィルがかわいそうだ。フィルだって道理ぐらいは弁えている。他人に危害を加える意図はない。しかし、エルルフのように、フィルが他人を面倒事に巻き込むことがあるのは否定できない。ならばと、シェラトリスは、フィルの本質を窺い知ることのできる自分がその性格を語ることで、フィルをぞんざいに扱わせないようにしている。だが、そんなシェラトリスの言葉は、フィルに対する“甘やかし”や“身内贔屓”と捉えられていることが多く、それもまたシェラトリスの悩みの種である。
「で、では、そろそろ調査に入りましょうか。」
クレーメンスが声を上げ、空気を変えた。
続けて、アスカルトが言葉を発する。
「まずは手分けして資料を読もう。」
それに対してルヴァンが頷く。
「“そうだな。重要な箇所は書き留めておいて、後で皆で情報共有した方が早い。私はここにある以外の資料に関連情報が載っていないか調べているから、私を呼びたい時はこれを使いなさい。”」
そう言ってルヴァンがテーブルに置いたのは、一般的に流通している通信装置だった。
「“皆使ったことがあるだろう。”」
全員が頷き、ルヴァンは話を進める。
「“それと、メルーンも置いていく。資料の内容が難しかった場合に聞くといい。”」
ルヴァンがそれまで黙ってルヴァンの肩に乗っていた梟を突いた。ルヴァンが使役している獣魔である。
(〈居眠り梟〉だ。)
(寝ていてあのバランス力は本当にすごいな…。)
以前、シェラトリスから教えてもらった呼び名を心の中で思い出すクレーメンス。
梟のバランス力に感心するエルルフ。
その他の皆には、割とよく知られている姿である。
「ふぁっ?!」
「“起きろ、メルーン。”」
「失礼しました…ええと、ワタクシに何か御用でしょうか?」
「“今から私はここを離れるから、お前が代わりに生徒を見ていなさい。”」
梟のメルーンはルヴァンの肩から椅子の背もたれへと飛び移った。
「かしこまりました。みなさま、ワタクシに聞きたいことがあったら遠慮なく言ってくださいな。」
人当たりの良さそうな雰囲気の梟である。
「…ぐぅ…。」
すぐ寝てしまうのが難点だが。
「“もう少ししたらルースリーフも戻ってくるだろう。”」




