第8章、魔法研究会の調査①
今日は「魔女の敵」はお休みです。
研究室の設備が整い、ようやく調査団体としての活動がスタートすることとなった。
シェラトリスは、研究室の入口に張り付けたネームプレートを見る。そこには、〈白歴史研究会〉と書いてある。申請当初は〈白ノ魔女研究会〉という名前を付けていたのだが、それではハーシュに注目した研究会だと思われてしまうということで、活動開始直前になって変更することとなった。ハーシュを連想させる名は不吉だとみなされ批判を受けるだろうから避けた方が良い…という顧問からのアドバイスからだ。そのため、重要な〈白〉という単語を残し、〈歴史〉という当たり障りのない言葉を用いた。
さて、その顧問とは誰か。
「“入らないのか、クロノタトン。”」
シェラトリスは声の聞こえた方へと振り返る。
「―――ごきげんよう、ルヴァン先生。」
そう、彼がこの研究会の顧問である。シェラトリスがお願いするよりも前に、自ら名乗り出てくれたため、あっさり顧問に決まった。
まぁ、ルヴァンは適任だと言えるだろう。シェラトリスたちと縁深い人物であるのだから。何より、歴史の教師である。これほどうって付けの人物はいない。
「―――全員そろっていますね。」
研究室の中心、会議室に呼び集めたメンバーの顔を見回してシェラトリスが話し出す。
「いよいよ今日から〈白歴史研究会〉が始動します。まずは、顧問となっていただきました、ルヴァン先生から。」
挨拶を振ると、ルヴァンは軽く頷いて立ち上がった。
「“歴史担当教員のルヴァン・イヴァンシェだ。この度、この研究会の顧問となった。私の持てる知識の全てを生かせたらと願う。よろしく頼む。”」
よろしくお願いします、と皆それぞれが口にする中、機嫌が悪そうな者が一人。フィルはむすっとした顔でそっぽを向き、ルヴァンを見ようともしない。シェラトリスは冷や汗をかきながら、フィルに視線を集めまいとすかさず自己紹介に移る。
「部長は私、シェラトリス・クロノタトンです。まとめ役は不慣れですので、どうぞ皆さま、温かい目で見ていただけたらと思います。」
ルヴァンの時とは打って変わって、笑顔で盛大な拍手を送るフィル。
(全く…こちらの気も知らないで…。)
しかし、フィルのシェラトリス贔屓は今に始まったことではない。王族にさえ主との対応の差を隠さないフィルのフォローには慣れている。
「補佐はクレイ・クロノタトンです。」
「クレイです。編入したばかりの身ですので、ご迷惑をお掛けすることもあると思いますが、何卒よろしくお願いいたします。」
クレーメンスは編入扱いでシェラトリスたちと同じ学年、さらには同じクラスになった。
“不思議な髪色”のおかげで、この学園で知らない者はいない有名人となった。
「では…皆さまからも一言ずつお願いします。」
そして、アスカルト、フィル、エルルフ、レイベルの順に無事に挨拶が終わった…と言いたいところだが、フィルは名前しか語らなかったため、シェラトリスがまたもやフォローするハメになった。
そんなこともありつつ、一応メンバーの確認は終わった。
続けて、シェラトリスはある人物の話題を振る。
「実は、メロディ・アンドロ様が、部員という形ではありませんが、我々に協力してくださることとなりました。」
ぺこぺことお辞儀をするメロディ。
「あまり参加できないかもしれませんが…ワタシにできる精一杯を努めたいと思っております…。皆さまよろしくお願いいたします…。」
「いえいえ、協力してくださりとても嬉しいですよ。」
クレーメンスが歓迎の意を示すと、メロディは嬉しそうに顔を綻ばせた。
「メンバーは以上ですね。これからよろしくお願いします。」
簡単に自己紹介を締めくくると、シェラトリスはクレーメンスに目配せをした。合図を受けたクレーメンスは、紙の束を配っていく。




