第7章、仲間を求める②
今回「魔女の敵」の更新はありません。
「ならば…白と黒で、魔法生物に影響を及ぼすような何らかの違いがあるということでしょうか。」
アスカルトは考え込むような仕草で零すように問いを発した。
「現状そう考える他ないわね。」
ナルフェーリヤは困惑した表情を隠さず、しっかりきっぱりとそう告げた。
「今まで、各領によって魔法生物の出没数が異なる理由など誰も知らなかった。」
魔法生物については、大昔から国立研究所で研究され続けているが、未だ解明されていないことの方が多い。
数少ない判明事項は、魔法生物が生まれる原因とは魔女の魔力であることだ。自然界に存在する魔力とは別の、魔法を使うために魔女が放出した魔力。その“変異した魔力”を植物や動物が取り込み、それが大量に蓄積されると、魔法生物となって暴れ出す。そこに植物や動物の意思はなく、ただ魔力の暴走によって魔女を狙うだけ。
「そうね…。白と黒の違いなど大々的に調査されたこともなかったわ。」
「どこかの団体が私的に研究しているかもしれないが…。」
「白と黒に魔力の性質の違いが見られれば…もしかしたら、魔法生物についても新しいことが分かるかも…。」
皆それぞれが口にした言葉に、エングレンは頷く。
「ああ。ゆえに、この度、魔法生物研究室で白と黒のそれぞれの魔女について本格的に研究されることとなった。」
エングレンに視線が集まる。
「我がクロノタトンとノーアは、白の住民の割合が多いという珍しい土地だ。調査対象となるだろう。打診が来る前に協力を申し出て調査団のメンバーになろうと思うのだが、皆はどうかな。」
「もちろん賛成です。」
「クロノタトンとノーアの全面協力があれば、調査も進むでしょう。」
「頑張ってくださいね、私たちも微力ながらお手伝いさせて頂きますから。」
「すまない、ナルフェーリヤ。君にはこれまで以上に負担が掛かるだろう。」
「いえいえ。これは全ての白にとっての希望ですから。」
「希望…?」
シェラトリスは不思議そうに聞き返した。
「ええ。もしこれで白が有益なことが証明されれば、白が迫害されることがなくなるでしょう?」
白ノ魔女が多く住むクロノタトンとノーアの土地では魔法生物が出現しにくい。だとすれば、それは白ノ魔女の魔力は魔法生物を生み出しにくいのだろう。この仮説が立証されれば、白ノ魔女に対する当たりの強さが軽減できるはずだ。
―――これは、ハーシュが作り出した白ノ魔女に対する悪印象が払拭できるチャンスなのだ。
「…!」
ナルフェーリヤの言葉の意味を理解し、シェラトリスは目を輝かせた。
「確かに、希望ですね……!!」
シェラトリスの高揚感を露わにした声音に、周囲の者は調査に対してやる気を高めた。
「アスカルト、クレイ、ちょっといいかしら。」
家族会議が終わり、シェラトリスは二人を呼び止めた。エングレンやナルフェーリヤに続いてぞろぞろと退出していくクロノタトンの騎士や使用人たち。しかし、留まったアスカルトとクレーメンスに付いてアクア隊とククア隊は残った。もちろんシェラトリス付きの騎士も残っている。
「少し考えたのだけど。」
どこか躊躇うように、しかし決意を秘めた瞳で部屋に残った者たちを見つめる。
「私、白ノ魔女について独自に調べようと思うの。」
アスカルトとクレーメンスは、ぱちりと瞬きをして目を丸くした。
「白と黒の“違い”については、国が調べるとお父様が言っていたけど…。私は、“白の歴史”について調べたいと思っているの。」
シェラトリスは素直に自分の考えを述べる。
「ずっと不思議に思っていたの。黒が薄まるにつれて魔力が弱い傾向があるのに、なぜ白は例外なのかって…。もしかしたらそれは、白は突然変異か何かで、黒とは根本的に体質が違うのかもしれないって…。」
シェラトリスは掴んでいた己の髪を払った。長く美しいその髪は、ふわりとなびいた。
「鍵はきっと、白ノ魔女にある。」
シェラトリスは目を閉じた。思い浮かぶのは、あの灰色の古書。
シェラトリスは目を開けた。その瞳に映るのは、信頼する友人たち。
「だから、二人には…皆には…、白ノ魔女について調べる協力をしてほしいの。」
皆は、控えめに決意を示した少女に優しく微笑んだ。
「もちろんだ。」
「もちろんです!」
代表で返事をした二人は、それぞれシェラトリスの手を取った。
「僕らはいつだって君に味方するよ。」
「どんどん頼ってくださいね!」
シェラトリスは喜びを露わに笑顔を浮かべた。




