第6章、用意されたアドリブ②
今回、「魔女の敵」はお休みです。
来週・再来週は「古の魔法書と白ノ魔女」も「魔女の敵」もお休みです。そのため、次の更新は1月1日です。
メリークリスマス(ハッピーホリデー)。そして、よいお年をお迎えください。
レイジオンがシルバーベルズ城へ引っ越す日。
シェラトリスらは、朝早くから王宮へ来ていた。
「ごきげんよう、スティルグ様。」
ナルフェーリヤが声を掛けた相手は、柔らかな表情で挨拶を返した。
「ごきげんよう、クロノタトン様。」
シェラトリスは、母が話す人物を失礼にならない程度に観察する。
(少し若そうなお父様ね。)
それに黒い髪がよく似ている。スティルグ伯爵の隣に立つレイベルの姿を見て、シェラトリスはそう思った。
軽い会話を終え、双方は子供の紹介を始めた。
「こちらが長男のレイベルです。」
「お初にお目にかかります、クロノタトン侯爵夫人。レイベルと申します。」
「初めまして。クロノタトン侯爵の妻、ナルフェーリヤです。こちらは娘のシェラトリス。」
「スティルグ伯爵様は初めてお目にかかります。シェラトリスです。」
「レイベルから聞いております。〈古書持ち〉だとか。どうかレイベルをよろしくお願いします。」
温かな笑顔に、シェラトリスも笑みを返した。
「レイベル様とはすでに何度かお話させて頂いているのですが、〈古書持ち〉同士、長くお付き合いさせて頂ければと思っております。」
「ありがとうございます。そうして頂けると嬉しいです。」
レイベルはそう言って微笑んだ。父親に似た表情ではあるが、目の奥がどこか冷えているように見えた。
しかしそれも僅かな時間で、ナルフェーリヤが次を話し始める時には、すでに表情は切り替わっていた。
「実は今日、初めてご紹介するのですが。」
そう言ってナルフェーリヤはクレーメンスをスティルグ親子の前に出した。
今までずっと黙っていたクレーメンスは、マントのフードを剥いだ。
「皆様はじめまして―――。」
二人の他、周りにいた者たちは皆、目を奪われる。
「―――クレイ・クロノタトンと申します。」
露わになった顔は、クレーメンスのものではない。魔法で、そばかすの付いた地味な顔として認識されるようになっている。
それにも関わらずクレーメンスが注目されているのは、その髪色にあった。
「あなたは……どちら様、なのですか。」
スティルグ伯爵に尋ねられたクレイ―――“金色の髪”の少年はにっこり笑って言った。
「―――クロノタトンの魔女、ですよ。」
そんなはずはない、と誰かが言葉を零した。それもそうだ。魔女は白か黒、もしくはそれに準ずる灰色など、無彩色の髪色しか持たない。
無彩色以外の色の髪は、〈番人〉にしかない。図書館の番人をしているソフィニアが緑色の髪をしているように。宮殿図書館の番人をしているアーリンが銀色の髪をしているように。
彼女らは魔女ではない。それは一般に知られている事実だ。しかし、その存在については数多くの謎を持っている。なぜなら、王家が彼女らについての詳細な情報を秘匿し、彼女らを保護しているからだ。
いや、“保護”というより“管理”という言葉の方が当てはまるかもしれない。なぜなら、王家は〈番人〉に重要な仕事を与えているらしく、王家が采配した任以外、〈番人〉はどんな仕事でもしてはいけないからだ。王家から命を受けた特殊な仕事のために彼女らは〈番人〉と呼ばれ、王家以外であれば何者であろうとも指図を受けない。そして、貴族と同等の権威を持ちながら、貴族とも独立している立場にいるため、貴族は〈番人〉に手出しができない。これまで〈番人〉の秘密を暴こうとした貴族はもちろんいたが、未だかつてそれに成功した者はいない。
このような状況ゆえに、王家以外は〈番人〉がどういった存在か分からないため、番人の任に就いていない“魔女外”も〈番人〉と便宜上呼んでいる。
それゆえ、なぜ〈番人〉であるはずのクレイがクロノタトン侯爵家にいるのかと皆は驚いているのだ。
〈番人〉は通常、城や国家の施設に配置される。一貴族に付くなど、未だかつてない。
一体どのような事情があるのか。クロノタトン侯爵家とスティルグ伯爵家の会話に混ざっていない者たちは、聞き耳を立てた。
「最近、我が家に“正式に”養子入りした子なのです。」
ナルフェーリヤがふふふと楽しそうに笑いながら告げた。
「お、王家の方々は…その…、この方のことを、ご存じで…?」
言葉に気を付けながらスティルグ伯爵は尋ねた。
ナルフェーリヤは表情も態度も崩さず答える。
「ええ、もちろん。養子を迎えるためには王家への申請を通さねばなりませんから。」
「そう、ですね…。」
「今まで我が家に長期滞在することも多かったので我が子同然ではあったのですが、この度めでたくクロノタトンに迎え入れることができましたの。クレイのことも、どうかよろしくお願いしますわね。」
「! はい。」
スティルグ伯爵は表情を引き締め返事をした。
「どうぞよろしくお願いしますね、クレイ様。」
「ええ、こちらこそ。」
握手を交わす二人。それを見てから、ナルフェーリヤは「さて」と話を変えた。
「私たちは騎士団の方々と警護の最終確認をしてきますから、あなたたちはレイジオン殿下にご挨拶を。」
「はい。」
未だ多くの視線を集めながら、シェラトリスたちは場所を移した。
話がこんがらがってないか心配ですね・・・。読みやすいか、話がややこしいか、自分では分からないもので・・・。大まかな流れは決めてあるのですが、割と行き当たりばったりで書いているせいで、自分で何を書いたか忘れそうになります。
〈追記 2022/12/20〉
閲覧者数がのべ2000人を超えました。ありがとうございます。




